日本料理の包丁技術|薄刃・出刃・柳刃の順に上がる5段と、調理師学校の採点基準

日本料理の包丁技術|薄刃・出刃・柳刃の順に上がる5段と、調理師学校の採点基準

この記事でわかること

日本料理の包丁は何から覚える?
寸法を揃える→薄刃で剥く→出刃でおろす→柳刃を加える
いまの腕前を数字で測りたい
大根のかつらむき。1mmで50cm続けば学校の採点で長さ5点
せん切りの太さの目安は?
せん切り1mm以下・千六本(せんろっぽん)2〜3mm・短冊8mm
プロの物差しはどこにある?
国の技能試験。3本の包丁で3品を標準1時間20分

包丁は使えるのに、上手くなったのかどうかが自分では分からない。せん切りは切れるけれど、次に何を練習すればいいのかも見えない。日本料理の包丁技術には、調理師学校の採点表と国の技能試験という、公開された物差しがあります。

この記事では、切り方の分類のうち「日本料理の包丁技術を、どの順に身につけ、いまどこにいるかをどう測るか」を扱います。せん切りや三枚おろしそのもののやり方は扱いません。

5つの段は、課題と物差しで分かれる

日本料理の包丁技術は、野菜の寸法を揃える、薄刃(うすば)で大根を剥く、出刃(でば)で魚をおろす、の順に上がります。最後に柳刃(やなぎば)を加えた3本を持ち替えて、料理を時間内に仕上げます。

段できるようになること主に使う包丁次の段へ進む目安
1野菜を寸法どおりに切り揃える薄刃大根の3つの切り方の寸法が揃う
2大根を薄く長く剥く薄刃かつらむき厚さ1mmで50cm以上
3魚を三枚におろす出刃あじの中骨に身を残さない
4同じ精度のまま、長く・速くする薄刃長さと速さの3課題が目標に届く
53本を持ち替えて、3品を時間内に仕上げる薄刃・出刃・柳刃国の実技試験の3品を標準1時間20分

出典: 1・4段目は辻調理師専門学校の授業条件(2021年・2022年)、2・3段目は全国調理師養成施設協会の第42回グルメピック採点基準(2026年)、5段目は調理技術技能センターの令和7年度実技試験問題。

2段目の「50cm以上」は、学校の競技会でかつらむきの長さに5点がつく線です。満点には、厚さの均一・切れ目の少なさ・芯と帯の形も要ります。

薄刃・出刃・柳刃の順になる理由

順番は、学校と試験の課題の並びから取っています。学校では薄刃を研ぎ、野菜を切り、それから桂むきへ進みます。学校の競技会と実技検定は、野菜の課題のあとにあじの三枚おろしを置きます。

刺身を造る課題が出てくるのは、競技会の全国大会と国の技能試験です。3本の形の違いは包丁の種類と特徴の比較にあります。

1段目:大根を3つの寸法に切り揃える

調理師学校の入学直後の課題が、大根をこの3つの寸法で「美しく、速く」切ることです。家庭の包丁で切ったものでも、定規に当てれば寸法を確かめられます。

大根の切り方幅・厚さ寸法が揃わないと起きること
せん切り1mm以下細いものから先にしんなりし、食感がばらつく
千六本(せんろっぽん)2〜3mm汁に入れたとき、火の通りがそろわない
短冊切り8mm煮物で、薄いものだけ先に煮崩れる

出典: 寸法は辻調理師専門学校ブログ(2021年8月)。「寸法が揃わないと起きること」の列は、薄いものほど早く火が通り、早くしんなりすることからの推論。

3つとも、最初に大根を同じ厚みの板に薄く切り分ける「へぐ」作業が要になります。へぐ幅は、大根を押さえている指の位置で決まります。

次の段へ進む目安は、3つの寸法が揃うことです。せん切りの寸法を洋・中の細切りと比べるなら、細切り技法の世界比較にあります。

2段目:薄刃に持ち替えて、大根を1mmで剥く

かつらむきは、大根の側面に薄刃を当て、大根を回しながら包丁を小刻みに上下させて、薄い帯を途切れずに剥き出す技です。ここからが調理師学校の基本課題になります。

大根 矢印の向きに回す 薄刃 刃は当てたまま 小刻みに上下 厚さ1mmの帯 1枚続きで下へ出る 大根の丸い切り口の側から見た図
刃は大根の側面から離さず、大根の側を回します。帯は刃と大根のすき間から、1枚続きで出てきます。片刃の刃の向きは、図では省いています。

学校の競技会(地区大会)では、日本料理の野菜の課題がかつらむき・横けん・じゃばらの3つです。魚と卵料理を含めて45分で仕上げます。

けんは刺身に添える細切りで、横けんは繊維に直角に切ったものです。

競技会の採点項目5点がつく状態1点の状態
かつらむきの長さ50cm以上20cm未満
かつらむきの厚さ全体が1mmで均一厚さのむらが多すぎる
かつらむきの形残った芯が正円柱で、帯がまっすぐ芯も帯も大きく歪む
横けんの太さ全体が1mm以内で均一まったく揃っていない
じゃばらの切り込み高さの2/3まで均等な幅幅が不均一で、深すぎるか浅すぎる

出典: 全国調理師養成施設協会「第42回 調理師養成施設調理技術コンクール実施要領」地区大会の採点基準(2026年8月)。高さ10cmの大根ときゅうり1本で採点します。

20cm未満 20〜30cm 30〜40cm 40〜50cm 50cm以上 1点 2点 3点 4点 5点(長さの項目) 200cm以上 — 学校の1年後の目標 棒の長さは剥いた長さに比例(厚さはどれも1mm)
学校の競技会では、50cmで長さの項目に5点がつきます。調理師学校の1年後の目標は、同じ1mmのままその4倍の200cmです。

次の段へ進む目安は、かつらむきが1mmで50cm続くことです。

研いでから剥く

日本料理の実習は、入学初日に薄刃を研ぐことから始まります。学校の実技検定でも、最初の課題は包丁の手入れの状態です。研ぎ方は包丁の研ぎ方にあります。

3段目:出刃であじを三枚におろす

学校の競技会と実技検定は、野菜の次にあじの三枚おろしを課します。採点は次の3か所です。

三枚おろしの採点項目点がつく状態
下ごしらえぜいご(尾の近くの硬いうろこ)・えら・血合い(ちあい)が取れている
中骨と腹中骨が壊れていない。腹骨と膜が取れている
身の残り中骨に身が残っていない

出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)の、魚の三枚おろしの採点基準。

中骨に身が残るのは、刃を中骨に沿わせきれず、骨から浮いた分です。中骨に身を残さずおろせたら、次の段へ進めます。

4段目:同じ精度のまま、長く・速くする

調理師学校では、1年生のうちは時間がかかっても正確に切ることを目標にし、速さは2年生で求めます。子芋の六方むき(ろっぽうむき)は、子芋の皮を六つの面に剥いて形を揃える技です。

調理師学校の課題目標目標の時期
かつらむき厚さ1mm以下で200cm以上、まっすぐ入学から1年後
きざみ葱青葱30gを3分で薄く刻む2年次のテスト
子芋の六方むき5個を5分で、5個とも同じ大きさ2年次のテスト

出典: 辻調理師専門学校ブログ(2021年8月・2022年5月)。

3つとも目標に届いたら、次の段です。

5段目:3本を持ち替えて、3品を時間内に仕上げる

職業としての物差しは、国の技能試験(調理技術技能評価試験)です。合格すると、厚生労働大臣から専門調理師・調理技能士の称号が与えられます。

日本料理の実技試験内容
1品目小鯛の姿造り(すがたづくり)と網大根
2品目蟹の砧巻き(きぬたまき)
3品目あなごの八幡巻き(やわたまき)
魚の切り方上身(うわみ)の片身をそぎ身(そぎみ)に、残りの片身を四つ切りにする
大根の切り方5cmの長方形に包丁目を入れ、かつらむきにして網にする
持参する包丁小出刃・柳刃・薄刃(洋包丁は不可)
時間3品で標準1時間20分、打切り(うちきり)1時間30分
受験資格実務8年以上(養成施設の卒業者は6年以上)、うち免許3年以上

出典: 調理技術技能センター「令和7年度 実技試験問題(日本料理)」「試験の概要」。

2段目のかつらむきは網大根に、3段目のおろしは姿造りに使われます。

柳刃だけを測る公開の採点基準は見つかりませんでした。刺身の腕は、姿造りの中で見られます。

その上には、1級・特級技能士が出る技能グランプリがあります。第32回は、1kgの平目を五枚におろして薄作りにする課題でした。

いまどこにいるかを、8つの課題で確かめる

課題を易しい順に並べました。順に試して、最初に届かなかった課題の段が、いまの段です。全部に届いていれば5段目です。

試す課題届く目安届かなければ、いまの段
大根のせん切り1mm以下に揃う1段目
大根の千六本2〜3mmに揃う1段目
大根の短冊切り8mmに揃う1段目
高さ10cmの大根のかつらむき厚さ1mmで50cm以上2段目
あじの三枚おろし中骨に身が残らない3段目
長いかつらむき厚さ1mm以下で200cm以上4段目
きざみ葱青葱30gを3分4段目
子芋の六方むき5個を5分で同じ大きさ4段目

長さはメジャーで測ります。厚さは、帯を10枚に切って重ね、1cm以下なら1枚あたり1mm以下が目安です。

和・洋・中で、同じ枠に置かれる課題が違う

学校の競技会は、同じ枠で日本料理・西洋料理・中国料理の野菜の課題を並べています。

料理の部門課題Ⅰ課題Ⅱ課題Ⅲ
日本料理大根のかつらむき(厚さ1mm)横けん(太さ1mm以内)きゅうりのじゃばら(1mm幅)
西洋料理じゃがいものシャトー(長さ5〜5.5cm)6個ジュリエンヌ(長さ5cm・太さ1mm)玉ねぎのシズレ(2mm角)
中国料理大根の丁(1.5cm角)20個以上ピーマンの絲(長さ6cm・幅2mm)長ねぎの葱花(2mm角)

出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)別紙1の、地区大会3部門の標準課題。

西洋と中国の課題は、決まった寸法の形を数そろえるものです。日本料理の課題Ⅰだけが、大根を1枚の薄い帯にするものです。洋と中の段の上がり方は、フランス料理の包丁技術と中華料理の包丁技術にあります。

うまくいかせる条件

物差しの数字は、次の条件で測ったものです。条件を外すと、腕前と関係なく数字が落ちます。

条件外すとどうなるか
包丁を研いでから測る学校の採点では、手入れの状態の項目で点を落とす
大根は高さ10cm、太くまっすぐなもの採点の「芯が正円柱」「帯がまっすぐ」が、大根の形のせいで崩れる
2段目で片刃に持ち替えたら、厚い材料は刃先を少し外へ向けるまっすぐ切れない
速さは精度が出てから測る1mmが守れないまま、速さだけが上がる

出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)、辻調理師専門学校ブログ(2021年8月・2025年4月)。

かつらむきと三枚おろしの手順は、このサイトではまだ記事になっていません。切り方の全体像は切り方の種類と選び方、日本料理の技術全体の順序は日本料理の基礎を覚える順番にあります。