油の種類と選び方|サラダ油・オリーブオイル・ごま油の違いと使い分け

油は料理において欠かせない調味料であり、風味食感コクを与えるだけでなく、熱の媒体として食材を均一に加熱し、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促進する役割も担います。

サラダ油、オリーブオイル、ごま油、バター——それぞれの油には異なる原料、製法、脂肪酸組成があり、発煙点酸化安定性風味特性が大きく異なります。揚げ物には高温に耐える米油や菜種油、ドレッシングには風味豊かなエクストラバージンオリーブオイル、仕上げの香り付けには焙煎ごま油というように、調理法と目的に応じた使い分けが料理の仕上がりを左右します。

この記事では、油の種類と特徴を体系的に解説し、プロの料理人が実践する油の選び方と使い分けをご紹介します。

目次

油の基本知識

油は、料理に風味食感コクを与える重要な調味料です。また、熱の媒体として食材を加熱し、栄養素の吸収を助ける役割も果たします。

油は原料、製法、脂肪酸組成によって特性が大きく異なり、料理の仕上がりに直接影響します。発煙点、酸化安定性、風味特性を理解することで、適切な油を選び、料理の質を高めることができます。

油の製造工程

油の製造方法は大きく2種類に分けられます。

  1. 精製油:溶剤で抽出後、脱臭・脱色・脱酸処理を行う。無味無臭で安定性が高く、安価。
  2. 低温圧搾油(コールドプレス):40℃以下で機械的に圧搾。原料の風味と栄養素が残るが、高価で酸化しやすい。
工程精製油低温圧搾油(コールドプレス)
抽出溶剤抽出(ヘキサン)機械的圧搾(40℃以下)
脱臭高温脱臭処理未処理
脱色活性炭処理未処理またはろ過のみ
脱酸アルカリ中和未処理
収量高い(95%以上)低い(60-70%)
栄養素減少保持
風味ニュートラル原料の風味が残る
価格安価高価

脂肪酸組成と調理特性

油の性質は、構成する脂肪酸の種類と比率で決まります。

脂肪酸の種類特徴代表的な油調理適性
飽和脂肪酸酸化に強い、常温で固体バター、ラード、ココナッツオイル高温調理、長期保存
一価不飽和脂肪酸(オメガ9)比較的酸化に強いオリーブオイル、菜種油、アボカドオイル加熱調理、生食両用
多価不飽和脂肪酸(オメガ6)酸化しやすい大豆油、コーン油、ひまわり油低温調理、ドレッシング
多価不飽和脂肪酸(オメガ3)非常に酸化しやすい亜麻仁油、えごま油、魚油生食のみ

油の種類と特徴

カテゴリ代表的な油特徴主な用途
植物油(無香性)サラダ油、菜種油、米油、グレープシードオイル、アボカドオイル無味無臭、発煙点が高い、酸化に強い揚げ物、炒め物、万能
オリーブオイルエクストラバージン、ピュアフルーティーな香り、オレイン酸豊富ドレッシング、地中海料理
香味油ごま油、ラー油独特の香ばしさ、風味付け向き中華・韓国・和食の仕上げ
ナッツ・種子油ピーナッツ油、くるみ油ナッツの風味、高価、酸化しやすいドレッシング、製菓
トロピカルオイルココナッツオイル、パーム油飽和脂肪酸が多い、常温で固体/半固体製菓、東南アジア料理、加工食品
動物性油脂バター、ラード、牛脂コクと旨味、常温で固体ソテー、製菓、風味付け

植物油(無香性)

無香性の植物油は、さまざまな料理に使える万能油です。発煙点が高く、加熱調理に適しています。

サラダ油

項目詳細
原料菜種、大豆、コーン、ひまわり、紅花などのブレンド
特徴無味無臭、クリアな色、JAS規格で定義
発煙点約230℃
主な脂肪酸リノール酸(オメガ6)40-60%
用途揚げ物、炒め物、ドレッシング
価格帯1Lあたり300-500円

菜種油(キャノーラ油)

項目詳細
原料菜種(キャノーラ種)
特徴オメガ9が多く酸化に強い、軽い風味
発煙点約240℃
主な脂肪酸オレイン酸(オメガ9)60%、リノール酸20%
用途揚げ物、炒め物、ドレッシング
価格帯1Lあたり400-700円

米油

項目詳細
原料米ぬか
特徴γ-オリザノール含有、酸化に強い
発煙点約230℃
主な脂肪酸オレイン酸40%、リノール酸35%
用途揚げ物、炒め物、製菓
価格帯1Lあたり800-1500円

グレープシードオイル

項目詳細
原料ぶどうの種子(ワイン製造の副産物)
特徴軽くクセがない、ポリフェノール含有
発煙点約216℃
主な脂肪酸リノール酸(オメガ6)70%、オレイン酸15%
用途ドレッシング、マリネ、炒め物
価格帯500mlあたり500-1500円

アボカドオイル

項目詳細
原料アボカドの果肉
特徴発煙点が非常に高い、オレイン酸豊富
発煙点約270℃(精製)、約190℃(未精製)
主な脂肪酸オレイン酸(オメガ9)70%、リノール酸10%
用途高温調理、ドレッシング、マヨネーズ
価格帯250mlあたり800-2000円

オリーブオイル

オリーブオイルは、地中海料理の中心的な油で、風味、香り、栄養価の高さが特徴です。

エクストラバージンオリーブオイル

項目詳細
定義機械的圧搾のみ、酸度0.8%以下
特徴フルーティーな香り、ポリフェノール豊富
発煙点約190℃(品質により160-210℃)
主な脂肪酸オレイン酸(オメガ9)70-80%
用途ドレッシング、仕上げのかけ油、低温調理
価格帯500mlあたり1000-5000円

ピュアオリーブオイル

項目詳細
定義精製オリーブオイル+バージンオイルのブレンド
特徴マイルドな風味、加熱調理向き
発煙点約240℃
主な脂肪酸オレイン酸(オメガ9)70-80%
用途炒め物、揚げ物、マリネ
価格帯500mlあたり500-1200円

香味油

香味油は、原料の風味や香ばしさを活かした油で、料理の仕上げや風味付けに使います。

ごま油

項目詳細
原料ごま(焙煎または生)
特徴独特の香ばしさ、セサミン含有で酸化に強い
発煙点焙煎ごま油:約210℃、太白ごま油:約230℃
主な脂肪酸オレイン酸40%、リノール酸40%
用途中華料理、韓国料理、和食の風味付け
価格帯300mlあたり400-1200円

種類:

  • 焙煎ごま油(茶色): 焙煎したごまを圧搾。香ばしい。仕上げの風味付け向き。
  • 太白ごま油(透明): 生のごまを圧搾。香りが穏やか。加熱調理向き。

ラー油

項目詳細
原料植物油+唐辛子、花椒、香辛料
特徴辛味と香り
用途中華料理の辛味付け、麻婆豆腐、担々麺

ナッツ・種子油

ナッツや種子から作られる油は、独特の風味と栄養価が特徴です。

ピーナッツ油(落花生油)

項目詳細
原料落花生
特徴ナッツの甘い香り、発煙点が高い
発煙点約230℃
主な脂肪酸オレイン酸50%、リノール酸30%
用途中華料理の炒め物、揚げ物

くるみ油

項目詳細
原料くるみ
特徴ナッツの豊かな香り、オメガ3含有
発煙点約160℃(低温調理向き)
主な脂肪酸リノール酸50%、α-リノレン酸(オメガ3)10%
用途ドレッシング、サラダ、製菓

トロピカルオイル

熱帯地域原産の植物から得られる油で、植物由来ながら飽和脂肪酸が多く、常温で固体または半固体という特徴があります。

ココナッツオイル

項目詳細
原料ココナッツの果肉
特徴独特の甘い香り、常温で固体(約24℃で融解)
発煙点約177℃(未精製)、約232℃(精製)
主な脂肪酸ラウリン酸(飽和脂肪酸)約50%、ミリスチン酸20%
用途製菓、東南アジア料理、カレー、健康食品
価格帯500mlあたり800-2000円

種類:

  • バージンココナッツオイル: 生の果肉から低温抽出。ココナッツの香りが強い。製菓、仕上げ向き。
  • 精製ココナッツオイル: 脱臭・脱色処理済み。無味無臭で高温調理向き。

パーム油

項目詳細
原料アブラヤシの果肉
特徴世界で最も生産量が多い植物油、安価
発煙点約230℃
主な脂肪酸パルミチン酸(飽和)45%、オレイン酸40%
用途加工食品、外食産業、揚げ物、マーガリン
価格帯業務用で非常に安価

動物性油脂

動物性油脂は、独特のコクと風味を料理に与えます。飽和脂肪酸が多く、常温で固体です。

バター

項目詳細
原料牛乳の乳脂肪
特徴豊かな風味とコク、乳化作用
発煙点約150℃(無塩)、約120℃(有塩、焦げやすい)
主な脂肪酸飽和脂肪酸60%、オレイン酸30%
用途製菓、ソース、仕上げのモンテ、低温調理

澄ましバター(クラリファイドバター、ギー)

項目詳細
原料バターから水分とタンパク質を除去
特徴純粋な乳脂肪、発煙点が高い
発煙点約250℃
用途高温調理、インド料理

ラード

項目詳細
原料豚の背脂
特徴コクと旨味、サクサクとした食感
発煙点約190℃
主な脂肪酸飽和脂肪酸40%、オレイン酸45%
用途中華料理、餃子、炒飯、製菓

牛脂(ヘット)

項目詳細
原料牛の脂肪
特徴濃厚な旨味、常温で固い
発煙点約200℃
用途ステーキ、すき焼き、カレー

油の使い方

加熱調理別の油の選び方

調理法適した油理由
揚げ物(高温・長時間)米油、菜種油、太白ごま油、アボカドオイル(精製)、パーム油発煙点が高く、酸化に強い
炒め物(高温・短時間)サラダ油、菜種油、ごま油、ラード、精製ココナッツオイル発煙点が高く、風味が活きる
ソテー(中火)オリーブオイル、バター、バター+油、グレープシードオイル風味が料理に加わる
低温調理(80-90℃)オリーブオイル、太白ごま油、ココナッツオイル風味が穏やか
ドレッシング・生食エクストラバージンオリーブオイル、亜麻仁油、くるみ油、グレープシードオイル風味と栄養価を活かす

発煙点と調理温度の関係

油の種類発煙点適した調理法
亜麻仁油、えごま油約107℃生食のみ
バター(有塩)約120℃ソース、低温調理
バター(無塩)約150℃製菓、ソテー(弱火)
くるみ油約160℃ドレッシング、低温調理
エクストラバージンオリーブオイル160-210℃ドレッシング、低温~中温調理
ココナッツオイル(未精製)約177℃製菓、低温調理
ラード約190℃中華炒め、製菓
アボカドオイル(未精製)約190℃ドレッシング、低温調理
牛脂約200℃ステーキ、すき焼き
焙煎ごま油約210℃仕上げ、中温調理
グレープシードオイル約216℃ドレッシング、炒め物
太白ごま油約230℃揚げ物、炒め物
米油約230℃揚げ物、炒め物
サラダ油約230℃揚げ物、炒め物
パーム油約230℃揚げ物、加工食品
ココナッツオイル(精製)約232℃揚げ物、炒め物
菜種油(キャノーラ油)約240℃揚げ物、炒め物
ピュアオリーブオイル約240℃揚げ物、炒め物
澄ましバター(ギー)約250℃高温調理全般
アボカドオイル(精製)約270℃高温調理全般

プロが知っておくべき油の知識

油の酸化と保存

油は、光、熱、酸素により酸化し、風味が劣化します。酸化した油は、過酸化脂質を生成し、健康に悪影響を及ぼします。

酸化を防ぐポイント:

  • 遮光: 色付きのボトルで保存、または冷暗所に保管
  • 密閉: 使用後はすぐに蓋を閉め、空気との接触を最小限に
  • 低温: 高温を避ける(冷蔵庫保存は不要、常温の冷暗所で十分)
  • 早期使用: 開封後は1-2ヶ月で使い切る(エクストラバージンオリーブオイルなど風味油は特に早めに)

油の温度と食材への影響

温度帯油の状態適した食材・調理
80-100℃静か、泡なしコンフィ、低温調理(肉、魚)
140-160℃小さな泡野菜の素揚げ、低温揚げ
160-170℃細かい泡が連続唐揚げ、天ぷら(1度目)
170-180℃活発に泡立つフライ、唐揚げ(2度揚げ)
180-190℃激しく泡立つ高温揚げ、油通し
200℃以上煙が出始める使用不可(油が劣化)

油の乳化とソース

油と水は本来混ざりませんが、乳化剤(卵黄、マスタード)機械的撹拌により、微細な油滴が水中に分散した乳化状態を作ることができます。

代表的な乳化ソース:

  • マヨネーズ: 卵黄+油+酢
  • ヴィネグレット: 油+酢(一時的乳化、使用前に振る)
  • ブールブラン: バター+白ワイン+エシャロット(温かい乳化ソース)
  • オランデーズソース: 卵黄+澄ましバター+レモン汁(温かい乳化ソース)

油の選び方

ラベルの読み方

「低温圧搾(コールドプレス)」「一番搾り」 機械的圧搾で抽出。栄養素と風味が豊富だが、価格が高く酸化しやすい。

「精製」「高温圧搾」 溶剤抽出後、高温で精製。無味無臭で安定しているが、栄養素は減少。

「遺伝子組み換えでない」 原料が非遺伝子組み換え(大豆、コーン、菜種など)。

「オーガニック」「有機JAS」 有機栽培された原料を使用。化学肥料・農薬不使用。

「エクストラバージン」(オリーブオイル) 酸度0.8%以下、機械的圧搾のみ。国際オリーブ協会(IOC)基準。

用途別おすすめの油

用途おすすめの油理由
揚げ物米油、菜種油、アボカドオイル(精製)、パーム油発煙点が高く、酸化に強い、繰り返し使える
炒め物(中華)サラダ油、ラード、太白ごま油高温に耐え、コクが出る
炒め物(洋食)オリーブオイル、バター+油、グレープシードオイル風味が活きる
ドレッシングエクストラバージンオリーブオイル、くるみ油、亜麻仁油、グレープシードオイル風味と栄養価
製菓バター、太白ごま油、米油、ココナッツオイル風味と食感
和食の仕上げ焙煎ごま油香ばしさ
低温調理・コンフィオリーブオイル、太白ごま油、ココナッツオイル風味が穏やか
東南アジア料理ココナッツオイル、パーム油現地の伝統的な油

料理ジャンル別の油の使い方

日本料理

  • 天ぷら: 米油、菜種油、太白ごま油(軽く仕上がる)
  • 炒め物・焼き物: サラダ油、太白ごま油
  • 仕上げの風味付け: 焙煎ごま油(炊き込みご飯、炒め物)

フランス料理

  • ソテー: バター、オリーブオイル、バター+油のコンビネーション
  • コンフィ: オリーブオイル、鴨脂
  • ソース: バター(モンテ)、エクストラバージンオリーブオイル(仕上げ)
  • 揚げ物: ピーナッツ油(フレンチフライ)

イタリア料理

  • パスタソース: エクストラバージンオリーブオイル
  • リゾット: バター+オリーブオイル
  • ドレッシング: エクストラバージンオリーブオイル
  • 揚げ物(フリット): オリーブオイル

中華料理

  • 炒め物: サラダ油、ラード、ピーナッツ油
  • 仕上げの風味付け: 焙煎ごま油、ラー油
  • 揚げ物: サラダ油、ピーナッツ油

韓国料理

  • 炒め物: 太白ごま油、サラダ油
  • 仕上げの風味付け: 焙煎ごま油
  • ナムル: 焙煎ごま油

東南アジア料理

  • 炒め物: ココナッツオイル、パーム油、サラダ油
  • カレー・煮込み: ココナッツオイル(風味付け)
  • 揚げ物: パーム油、ココナッツオイル(精製)
  • デザート: ココナッツオイル

インド料理

  • 炒め物・カレー: ギー(澄ましバター)、マスタードオイル
  • 揚げ物: ギー、サラダ油
  • 仕上げ: ギー(テンパリング)

まとめ

油は、料理に風味コク食感を与える重要な調味料です。原料、製法、脂肪酸組成により特性が異なり、発煙点、酸化安定性、風味特性を理解することで、適切な油を選び、料理の質を高めることができます。

  • 加熱調理: 発煙点の高い米油、菜種油、精製サラダ油を選ぶ
  • 生食: エクストラバージンオリーブオイル、くるみ油、亜麻仁油で風味と栄養を活かす
  • 風味付け: ごま油、バター、ラードでコクと香りをプラス
  • 保存: 遮光、密閉、低温保存で酸化を防ぐ

油の特性を理解し、料理に合わせて使い分けることで、プロの味に近づけます。


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