この記事でわかること
- 中華料理の包丁は何から覚える?
- 6つの形を揃える→花刀を入れる→骨を抜く
- いまの腕前を数字で測りたい
- 大根の丁1.5cm角を20個。全部が立方体で揃えば5点
- 絲(スー)の太さの目安は?
- 学校の競技会は長さ6cm・幅2mm
- プロの物差しはどこにある?
- 中国の調理師資格の5級。包丁の上積みは三級まで
中華包丁で切ってはいるけれど、上手くなったのかどうかが自分では分からない。絲(スー)は切れても、次に何を練習すればいいのかが見えない。
中華料理の包丁技術には、中国の調理師資格が級ごとに定めた要求と、日本の調理師学校の採点表という、公開された物差しがあります。
この記事では、切り方の分類のうち「中華料理の包丁技術を、どの順に身につけ、いまどこにいるかをどう測るか」を扱います。絲や丁(ディン)そのものの切り方は扱いません。
絲と丁の寸法と使いどころは細切り技法の世界比較とサイコロ切り技法の世界比較にあります。
5つの段は、中国の資格の5つの級で分かれる
中国では、中華料理の調理師(中式烹調師・ちゅうしきほうちょうし)の国家資格が5つの級に分かれ、級ごとに包丁で何ができればよいかが定められています。下の級の要求は、上の級にもそのまま含まれます。
表に出てくる花刀(ホワダオ)は、材料の表面に飾りの切り込みを入れる切り方です。
| 段 | 中国の資格の級 | 包丁でできるようになること |
|---|---|---|
| 1 | 五級(初級工) | 材料を6つの基本の形に切り揃える |
| 2 | 四級(中級工) | 材料に花刀を入れる |
| 3 | 三級(高級工) | 丸ごとの鶏や魚の骨を抜く |
| 4 | 二級(技師) | 下の級の人に包丁の技術を教える |
| 5 | 一級(高級技師) | 新しい料理をつくる |
出典: 国家職業技能標準「中式烹調師」2018年版の、級ごとの技能要求。
包丁の技術として新しく求められることがあるのは3段目までです。4段目は教える段、5段目は新しい料理をつくる段です。
1・2段目は、日本の調理師学校の競技会の課題で測れます。3段目は、資格の要求そのものを目安にします。課題をどの段に置くかは、資格の級の要求に学校の課題を当てはめた、この記事の整理です。
1段目:6つの形に切り揃え、魚と鶏を部位に分ける
中国の資格の五級は、材料を6つの基本の形に切ることと、鶏・鴨・魚を部位ごとに切り分けることを求めます。
6つの形と3つの刀法
6つの形は次のとおりです。肉は絲を除く5つの形が求められます。

| 五級で求められる形 | 読み | どんな形か |
|---|---|---|
| 片 | ピエン | 薄切り |
| 絲 | スー | 細切り |
| 丁 | ディン | さいの目 |
| 条 | ティアオ | 棒切り |
| 块 | クワイ | ぶつ切り |
| 段 | ドワン | 長さで切った筒切り |
出典: 国家職業技能標準「中式烹調師」2018年版、五級の技能要求。読みと「どんな形か」の列は、この記事で添えました。
片・条・块・段の4つを測る、公開された採点基準は見つかりませんでした。
形を揃えるのは見た目のためだけではありません。主料と配料を同じ形に切ると、強火で短く炒めても火の通りが揃います(中国料理の色香味形)。
同じ五級で、刀法(ダオファ)と呼ぶ3つの切り方も求められます。名前のとおり、刃をまっすぐ下ろす直刀法、寝かせる平刀法、斜めに入れる斜刀法です。
薄く削ぐ切り方を和・洋と比べるなら、削ぎ切り技法の世界比較にあります。
学校の競技会の野菜3課題で、寸法を測る
調理師学校の競技会(地区大会)では、中国料理の野菜の課題が丁・絲・葱花(ツォンホワ)の3つです。葱花は、長ねぎを2mm角に刻んだもので、6つの形には入らない刻みの課題です。
| 競技会の採点項目 | 5点がつく状態 | 1点の状態 |
|---|---|---|
| 大根の丁の形 | すべてきれいな立方体 | 全体的に形が揃っていない |
| 大根の丁の大きさ | すべてが1.5cm角で均一 | 全体的に大きさが揃っていない |
| ピーマンの絲の長さ | 6cmで全体的に揃っている | 全体的に揃っていない |
| ピーマンの絲の幅 | 2mmで全体的に均一 | 全体的に揃っていない |
| ピーマンの絲のつながり | つながっている部分がまったくない | 全体的につながっている |
| 長ねぎの葱花の大きさ | 2mm角で全体的に揃っている | 2mm角でなく、揃ってもいない |
| 長ねぎの葱花の水気 | ほとんど水気がない | 水気が多すぎる |
出典: 全国調理師養成施設協会「第42回 調理師養成施設調理技術コンクール実施要領」地区大会の中国料理部門の採点基準(2026年8月)。
丁は高さ10cm・直径8cmの大根から20個以上、絲はピーマン2個、葱花は長さ15cmの長ねぎで作ります。
あじの三枚おろしと薄焼き卵を含めて、制限時間は35分です。
魚と鶏を部位に分ける
学校の競技会は、あじの三枚おろしを3部門共通の課題にしていて、採点は次の3か所です。
| 三枚おろしの採点項目 | 5点がつく状態 |
|---|---|
| 下ごしらえ | ぜいご・えら・血合い(ちあい)がきれいに取れている |
| 中骨と腹 | 中骨が壊れず、腹骨と膜が取れている |
| 身の残り | 中骨に身が残らず、身割れもない |
出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)の、魚のおろし方の採点基準(3部門共通)。
次の段へ進む目安は、野菜3課題の寸法が揃い、あじの中骨に身が残らないことです。
三枚おろしと鶏の部位分けの手順は、このサイトではまだ記事になっていません。
2段目:花刀を入れる
中国の資格の四級は、動物性の材料に麦穂花刀(マイスイホワダオ・麦の穂の形)、植物性の材料に蘭花花刀(ランホワホワダオ・蘭の花の形)といった花刀を入れることを求めます。豚・牛・羊を部位ごとに切り分けるのも、この級からです。

写真は、麦穂花刀を入れて茹でたいかです。茹でると切り込みが開き、尖ったひだが一方向にそろって立ちます。
学校の全国大会の、いかの松笠切り(まつかさぎり)で測る
学校の競技会の全国大会では、中国料理の1つ目の課題が「いかの松笠切り」です。いかの表面に格子の切り込みを入れ、茹でて盛り付けます。
写真の麦穂花刀と同じ切り方かどうかは、確かめられませんでした。
| 全国大会のいかの切り込み | 決められた寸法 |
|---|---|
| 格子の間隔 | 2mm |
| 深さ | 身の厚さの2/3以上 |
出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)、全国大会の中国料理部門の課題1。
切り込んだいかは、2.5〜3cm四方に切り分けます。同じ課題で、器に敷くきゅうりを長さ13cm前後・厚さ2mm程度の薄切りにします。
次の段へ進む目安は、いかの格子ときゅうりの薄切りが、この寸法どおりにできることです。
ほかの国の飾り切りと比べるなら、飾り切りの世界比較にあります。
3段目:丸ごとの骨を抜き、身を茸にする
中国の資格の三級では、包丁の仕事が次の4つに広がります。茸(ロン)と泥(ニー)は、どちらもペースト状にしたものです。
| 三級で求められること | どんな作業か |
|---|---|
| 整料脱骨(ジョンリャオトゥオグー) | 鶏・鴨・魚を丸ごとの形のまま、中の骨を抜く |
| 茸 | 鶏・魚・えびの身をペーストにする |
| 泥 | 豆腐・山芋をペーストにする |
| 食品の彫刻 | 材料で花・鳥・魚・虫の形を彫る |
出典: 国家職業技能標準「中式烹調師」2018年版、三級の技能要求。
この段を数値で測る、公開された採点基準は見つかりませんでした。資格の要求にあるとおり、丸ごとの形を残して骨を抜けるかどうかが目安になります。
整料脱骨と茸の手順は、このサイトではまだ記事になっていません。
4・5段目:包丁を教え、新しい料理をつくる
二級(技師)は、下の級の調理師に包丁と下処理の技術を指導することを求めます。一級(高級技師)は、二級以下の指導と、技能競技会の設計、新しい料理の創作です。
上の級を受けるには、前の級を取ってからの実務年数が要ります。
| 受ける級 | 受験に要る実務(主な条件) | 実技試験の時間 |
|---|---|---|
| 五級(初級工) | 実務1年以上、または見習い期間の修了 | 90分以上 |
| 四級(中級工) | 五級を取ってから4年以上 | 120分以上 |
| 三級(高級工) | 四級を取ってから5年以上 | 150分以上 |
| 二級(技師) | 三級を取ってから4年以上 | 180分以上 |
| 一級(高級技師) | 二級を取ってから4年以上 | 180分以上 |
出典: 国家職業技能標準「中式烹調師」2018年版の、受験の条件と試験時間。学校の卒業者などには別の条件があります。
いまどこにいるかを、7つの課題で確かめる
課題を易しい順に並べました。順に試して、最初に届かなかった課題の段が、いまの段です。全部に届いていれば3段目です。その先の4・5段目は、包丁を教える段です。
| 試す課題 | 届く目安 | 届かなければ、いまの段 |
|---|---|---|
| 大根の丁 | 1.5cm角の立方体が20個以上揃う | 1段目 |
| ピーマンの絲 | 長さ6cm・幅2mmで、つながっていない | 1段目 |
| 長ねぎの葱花 | 2mm角に揃い、水気が出ていない | 1段目 |
| あじの三枚おろし | 中骨に身が残らない | 1段目 |
| きゅうりの薄切り | 長さ13cm前後・厚さ2mm程度 | 2段目 |
| いかの松笠切り | 2mm間隔・深さ2/3以上の格子 | 2段目 |
| 丸鶏の骨抜き | 丸ごとの形のまま骨が抜ける | 3段目 |
出典: 丸鶏の骨抜きは国家職業技能標準「中式烹調師」2018年版の三級の要求、ほかの課題と目安は第42回グルメピック実施要領(2026年8月)。課題と段の対応は、この記事の整理です。
寸法は定規で測ります。いかの深さは、切り込んだいかを1切れ横から切って、断面で確かめます。
和・洋の課題と、切り方比較の記事の寸法と比べる
学校の競技会は、同じ枠で日本料理・西洋料理・中国料理の野菜の課題を並べています。日本料理は大根を厚さ1mmの帯に剥くかつらむき、西洋料理はじゃがいものシャトー6個から入ります。
中国料理の3課題は、西洋料理と同じく、決まった寸法の形に切る課題です。制限時間は、日本料理と西洋料理の45分に対して35分です。
日本料理と西洋料理の段の上がり方は、日本料理の包丁技術とフランス料理の包丁技術にあります。
競技会の寸法は、切り方比較の記事の標準と違う
| 寸法 | 学校の競技会(mm) | 切り方比較の記事の標準(mm) |
|---|---|---|
| 絲の幅 | 2 | 1〜4 |
| 丁の1辺 | 15 | 8〜10 |
出典: 競技会は第42回グルメピック実施要領(2026年8月)。標準は細切り技法の世界比較とサイコロ切り技法の世界比較。
競技会の絲の2mmは、四川の規範が分ける4等級(1〜4mm)のうち細絲にあたります。丁は競技会のほうが大きくなります。
うまくいかせる条件
物差しの数字は、次の条件で測ったものです。条件を外すと、腕前と関係なく点が落ちます。
| 条件 | 外すとどうなるか |
|---|---|
| 包丁を手入れした状態で使う | 全国大会の作業審査で、包丁の状態の点を落とす |
| 葱花は、刻んだ後に包丁で叩かない | 競技会の規定に反する |
| きゅうりの薄切りは包丁で切る | ピーラーは規定で使えない |
出典: 全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック実施要領(2026年8月)。
中華包丁と和・洋の包丁の形の違いは包丁の種類と特徴の比較、切り方の全体像は切り方の種類と選び方、中華料理の技術全体の順序は中華料理スキルマップにあります。