細切り技法の世界比較|千切り・ジュリエンヌ・絲の太さと繊維の向き

細切り技法の世界比較|千切り・ジュリエンヌ・絲の太さと繊維の向き

この記事でわかること

千切りとジュリエンヌの違いは?
太さは1mm前後で重なる。日本は繊維の向きでも呼び分ける
絲(スー)は何ミリ?
四川の規範で1〜4mmの4等級、長さ10cm
太さを変えると何が変わる?
火が通る時間。太さが倍なら計算で約4倍
繊維の向きで何が変わる?
沿うとシャキッと、断つとふんわり。辛みや味のなじみも変わる

レシピに「人参はジュリエンヌに」とあって、千切りと何が違うのかで手が止まる。中国料理のレシピには「絲(スー)に切る」とある。どれも細長い棒に切ることは同じに見えます。

出典を並べると、3つの呼び名は太さでは分けられません。日本のせん切り(千切り)は1mm以下、フランスのジュリエンヌは1〜2mm、中国の絲は1〜4mmで、範囲が重なっています。

この記事では、細切りの呼び名がどう違うかと、太さと繊維の向きで料理の何が変わるかを扱います。包丁の動かし方と練習の順は扱いません。

細切りは、薄い板を重ねて棒に切る操作

細切りは、材料を同じ厚さの板に切り、その板を重ねて同じ幅に切って、細い棒にする操作です。棒の断面の縦は板の厚さ、横は切る幅で決まります。

1. 同じ厚さの板に切る 厚さ 2. 板を重ね、同じ幅で切る 幅 3. 細い棒ができる(断面) 正方形 平たい長方形 厚さ=幅なら正方形、 板が薄ければ平たくなる
板の厚さと切る幅の2つで、棒の太さが決まります。板の厚さが揃っていないと、あとでどれだけ丁寧に切っても棒の太さは揃いません。

調理師学校の授業でも、せん切りはまず大根を1mm以下の厚さに「へぐ」(薄く切り分ける)ところから始めます。均一な厚みにへげなければ、そのあとどう切っても大きさがばらばらになるからです。

棒の長さは4〜10cmと幅があり、料理と出典で違います。

角切り・そぎ切りとはここが違う

細切りの棒を端から同じ幅で横に切ると、角切り(ブルノワーズ・丁(ディン))になります。最初の板のまま使うのが薄切り・そぎ切りです。

角切りの寸法はサイコロ切り技法の世界比較、そぎ切りは削ぎ切り技法の世界比較にあります。

千切り・ジュリエンヌ・絲は、太さでは分けられない

3つの呼び名の太さを、学校と料理の規範の値で並べます。

呼び名太さ(mm)長さ(cm)出典
せん切り(日本)1以下指定なし辻調理師専門学校
千六本(せんろっぽん。日本)2〜3指定なし辻調理師専門学校
ジュリエンヌ(フランス)1〜24〜5Chef Fabien・シェフリンク
絲(中国。四川の規範)1〜410四川省の川菜調理規範(2011年)
刺身に添えるけん(学校の競技会)1以内指定なし全国調理師養成施設協会
ジュリエンヌ(学校の競技会)15全国調理師養成施設協会
絲(学校の競技会)26全国調理師養成施設協会

出典: 辻調理師専門学校ブログ(2021年8月)、Chef Fabien(2026年3月)・シェフリンク、中国新聞網(2015年10月)・下厨房、全国調理師養成施設協会 第42回調理技術コンクール実施要領(2026年8月)。

せん切り ジュリエンヌ 千六本 絲(スー) 1234 01234 太さ(mm)
絲の4等級(1・2・3・4mm)は、ジュリエンヌと千六本の範囲をすべて含み、1mmでせん切りとも重なります。太さを聞いても、どの呼び名かは当てられません。

表の下3行は、同じ学校の競技会の同じ枠の課題です。同じ枠の中でも料理ごとに太さが違い、太さは国より、課題と料理で変わります。

日本料理は、太さに加えて繊維の向きでも呼び分ける

日本料理は、太さで「せん切り」「千六本」と呼び分けたうえで、刺身に添える「けん」を繊維の向きでも呼び分けます。

けんは、かつらむき(大根を帯のように薄く長くむくこと)にした大根やきゅうりを細く切ったものです。繊維に沿って切ったものを縦けん、繊維に直角に切ったものを横けんと呼びます。

縦けんは少量を三角に立てて添え、横けんは刺身の下に敷いたり、ふわっと量を見せたりするときに使います。

フランス料理と中国料理は、太さで呼び名を分ける

フランス料理は、太さが変わると別の名前を使います。1〜2mmの細い棒がジュリエンヌで、5〜6mm角の太い棒はバトネ(bâtonnet)です。

中国料理は、同じ「絲」の中を太さで4つの等級に分けます。

四川省が2011年に定めた川菜(四川料理)の調理規範では、頭粗絲(トウツースー)4mm、二粗絲(アーツースー)3mm、細絲(シースー)2mm、銀針絲(インジェンスー)1mmで、長さはどれも10cmです。

この規範は推奨で、強制ではありません。魚香肉絲(ユーシャンロースー)の肉は二粗絲の3mm角・長さ10cmとされています。

太さが倍になると、火が通るまでの時間は計算で約4倍になる

熱は表面から中心へ伝わり、中心まで届く時間は表面から中心までの距離のほぼ2乗で延びます。この計算だけで見ると、太さ2mmの棒は1mmの約4倍、3mmは約9倍、4mmは約16倍の時間がかかります。

実際には、湯や油から表面へ熱が移るのにも時間がかかるので、差は計算より小さくなります。厚い肉を湯煎した実測では、厚さが倍で2.5〜4倍でした。細切りの太さごとに測った値は見つけられませんでしたが、太いほど時間が延びる向きは変わりません。

1mm2mm3mm4mm 1倍約4倍約9倍約16倍 中心まで熱が伝わる時間(1mmを1とした倍率)
断面は同じ縮尺です。倍率は、熱が中を伝わる計算だけで見た値です。

塩がしみてしんなりする速さも、同じように太さで変わります。塩が中心まで届く時間も、距離のおよそ2乗で延びるからです。同じ時間塩をふっておくと、細いせん切りは芯までしんなりし、太い棒は外側だけがしんなりすると考えられます。

繊維に沿うか断つかで、食感・辛み・味のなじみが変わる

野菜の中には、根や茎の向きに沿って細長い繊維が通っています。細切りの棒を繊維に沿って切るか、繊維を断って切るかで、同じ太さでも食感が変わります。

繊維が棒の中に長く残るか、短く切れるか

繊維に沿って切ると、長い繊維が棒の端から端まで通ったまま残ります。噛むと歯が繊維を断ち切る手応えがあり、棒は形を保って立てやすくなります。

繊維を断って切ると、棒の中の繊維は太さの分の長さしか残りません。噛むとすぐほぐれます。

黒い石の皿の左に、まっすぐで長さの揃った大根の細切りを束ねて三角に立てた縦けん、右に、短く波打った大根の細切りをふんわり盛った横けんを並べた比較

左が縦けん(繊維に沿って切る)、右が横けん(繊維を断って切る)のイメージです。縦けんは立てて添え、横けんはふんわり敷くのに使います。

大根・キャベツ・人参・玉ねぎでの違い

野菜繊維に沿って切る繊維を断って切る
大根(刺身のけん)立つ。三角に立てて添えるふわっと量が出る。下に敷く
キャベツ(生)しゃきっとした歯ごたえ太めでも口当たりがふんわり
人参(和え物)歯ごたえが残る早くやわらかくなり、味がなじむ
玉ねぎ(生)辛み・苦みが出にくい辛み・苦みを強く感じる

出典: 大根は辻調理師専門学校「日本料理 基本用語」、キャベツ・人参・玉ねぎは名古屋学芸大学 管理栄養学部「野菜の切り方で、味も変わる!?」。

断った人参を甘いと感じる人もいますが、同じ解説は、切り方で甘みそのものが増えたり減ったりするわけではないとしています。

学校の競技会は、横けんを「繊維がつぶれず、ふんわりしている」かで採点します。繊維をつぶさずに切ることも、ふんわりさせる条件に入っています。

作りたいものによって、太さと向きの組み合わせが変わる

細切りの太さと向きは、作りたいものと料理で組み合わせが変わります。出典で確かめられた組み合わせは次のとおりです。

作りたいもの細切りの太さ繊維の向き
刺身に立てて添えるけん1mm以内沿う(縦けん)
刺身の下に敷くけん1mm以内断つ(横けん)
生のキャベツをふんわり指定なし断つ
フランス料理のサラダ・スープの具1〜2mm、長さ5cm指定なし
魚香肉絲の肉3mm、長さ10cm指定なし

出典: けんは辻調理師専門学校「日本料理 基本用語」と全国調理師養成施設協会(2026年8月)、キャベツは名古屋学芸大学、ジュリエンヌは Chef Fabien(2026年3月)、魚香肉絲は中国新聞網(2015年10月)。

刺身のけん 1mm ジュリエンヌ 2mm×5cm 魚香肉絲の肉 3mm×10cm 1cm
太さも長さも同じ縮尺です。ジュリエンヌは1〜2mmのうち2mmで描きました。けんの長さは指定が無いので、かつらむきにする大根の長さ(6〜7cm。辻調理師専門学校「日本料理 基本用語」)で描いています。

汁で煮るジュリエンヌは1〜2mmで、強火で炒める魚香肉絲の肉は3mmです。火を入れるかどうかだけでは太さは決まらず、料理ごとに決まった値があります。

同じ料理の中では、材料どうしの太さも揃えます。

中国料理の絲の切り方と、学校の競技会での測り方は中華料理の包丁技術、けんとかつらむきは日本料理の包丁技術、ジュリエンヌはフランス料理の包丁技術にあります。

太さと向きを外すとどうなるか

細切りで外しやすいのは、板の厚さ・切る向き・料理に合う太さの3つです。

外したこと起きること
板の厚さが揃っていない細い棒から先にしんなりし、太い棒に芯が残る
炒め物で肉と野菜の太さが違う細い方に火が通りすぎるか、太い方が生のまま残る
立てて添えるけんを、繊維を断って切った立てにくく、ふんわり寝る
ふんわりさせたいキャベツを、繊維に沿って切った歯ごたえが強く、ふんわりしない
生の玉ねぎを、繊維を断って切った辛み・苦みを強く感じる

出典: 火の通りは「中心まで届く時間は太さの2乗」からの推論。けんは辻調理師専門学校、キャベツと玉ねぎは名古屋学芸大学の解説を、外した側から読んだもの。

同じ時間だけ火を入れた断面 1mm2mm1.5mm3mm 火が通った 芯が残る
火は外側から同じ深さまでしか進まないので、細い棒に合わせると太い棒に芯が残り、太い棒に合わせると細い棒に火が通りすぎます。模式図です。

太さが揃ったかは、切った棒を数本並べて定規に当てると確かめられます。学校の競技会も、けんは「全体が1mm以内で均一か」、絲は「2mmで全体的に均一か」で採点しています。

切り方全体の中での細切りの位置は世界の切り方技術まとめにあります。