酢で取る抽出の仕組み|取れたものは薄めて使う少量になる

酢で取る抽出の仕組み|取れたものは薄めて使う少量になる

この記事でわかること

  • 酢で取れるもの(水溶性+酸で溶けるもの)の範囲
  • 酸が容器と素材にも働くことと、その避け方
  • 酢の抽出物だけ「薄めて使う」前提になる理由と、その利点

酢に何かを漬けると、その成分が酢に移ります。作れるものは大きく2つです。

そして取れたものの使い方が、他の溶媒とはっきり違います。

酢で取ると何ができるか

何を漬けるか取れるもの期間引き上げ
果実酢果実の酸味・糖・色1〜2日で飲み頃1週間(梅は3週間)
ハーブビネガーハーブの香り常温1週間/温めて24時間1〜2週間

どちらも引き上げる技法です。ただし引き上げる理由が違います——果実酢は傷むから、ハーブビネガーは見た目が悪くなるから。

なお「果実酢」には醸造した酢そのもの(ワインビネガー・りんご酢など)を指す使い方もあります。その区別は果実酢の記事に、酢の種類の比較は酢の記事にあります。

酢が持つ2つの力

酢は水溶性のものを溶かす力(水と同じ)に加えて、酸で溶かす力を持ちます。5つの溶媒のうち、酸で溶けるものに届くのは酢だけです。

酸で溶けるものの代表がカルシウムです。酢の記事にあるように、南蛮漬けで長時間漬けると骨まで食べられるようになります(数時間以上の漬け込みが必要です)。

一方で脂溶性側には伸びません。香りの強い素材を扱うなら、酒や油のほうが取れるものは多くなります。

もう1つの性格があります。酢酸の沸点は118℃で水より高いので、加熱できます。だからハーブビネガーは温めて24時間に縮められます。酒では同じことができません(沸点の比較は果実酢の記事に)。

酸は諸刃

届く範囲が広がる代わりに、酸は容器と素材にも働きます。

向く先何が起きるか対策
容器金属が腐食するふたは金属以外。ガラス・樹脂・ホウロウを選ぶ
素材果肉が溶けて濁る果実は取り出せる大きさに保つ。切りすぎない

骨を溶かす力と、容器を腐食し果肉を崩す力は同じものです。使いたい方向にだけ働かせることはできません。

酢の仕込みでは「溶けてほしくないもの」を先に確認します。金属を外し、素材は取り出せる大きさに保ちます。

取れたものは「効かせる少量」になる

ここが他の溶媒と決定的に違います。だしも香味油もリキュールもそのままの濃度で使えますが、酢の抽出物だけはそのままの濃度では使いません。

理由は酸度です。一般的な酢の酢酸は3〜5%で、そのままでは強すぎます。

だから果実酢は5倍程度に薄めて飲み、ハーブビネガーは仕上げに数滴使います。

逆に言えば、酢の抽出物は味の設計に組み込む部品になります。ドレッシングや仕上げの一滴として効きます。

まとめ:濃く作って、薄めて使う

  • 酢で作れるのは果実酢とハーブビネガー。どちらも引き上げる技法(理由は傷む/見た目)
  • 酢は水溶性+酸があると溶けるものを取る。脂溶性側には伸びない
  • 酢酸118℃で水より高いので加熱できる。ハーブビネガーを24時間に縮められるのはこれ
  • 酸は諸刃。骨を溶かす力と、金属を腐食し果肉を崩す力は同じもの
  • 取れたものはそのままの濃度では使わない。だしや香味油と違い主役にならない。だから濃く作ってよい

酢は酸で溶けるものに届く代わりに脂溶性側に伸びない溶媒でした。4つの溶媒を並べた比較で位置関係が分かります。