果実酢は1〜2日でできる|1週間で果実を取り出す理由と果実酒との違い

果実を酢に漬けると果実酢ができます。梅酒と同じ「漬けて待つ」作業です。

ところが**待つ時間も、そのあとの扱いも違います。**まず言葉の整理から始めます。

「果実酢」は2つの別物を指している

同じ言葉が、まったく違うものに使われています。

何か
① 醸造の果実酢果実を発酵させて作った酢そのものワインビネガー、バルサミコ酢、りんご酢、シェリービネガー
② 漬け込みの果実酢酢に果実を漬けて成分を移した調味料・飲料フルーツ酢、サワードリンク

①は「酢そのもの」で、②は「酢を溶媒として使ったもの」です。買うものと作るものの違いでもあります。

①の種類と使い分け(ワインビネガーの白と赤、バルサミコの熟成、酸度の差)は酢の記事にあります。

**本記事が扱うのは②です。**以降「果実酢」はこの意味で使います。

果実酢は1〜2日でできる

作り方は単純です。**広口瓶に果物 → 氷砂糖 → 酢(りんご酢か穀物酢)の順に入れて冷暗所に置きます。**1日1回、ふたをしたまま軽くふり混ぜます。

常温で1〜2日、氷砂糖が溶けたら飲み頃です。

果実酒と並べると桁が2つ違います。

飲めるまでその後
果実酢1〜2日(氷砂糖が溶けたら)1週間で落ち着く
果実酒(梅酒)3か月6か月〜1年の熟成でまろやかになる

同じ「果実+氷砂糖+液体」なのに、これだけ違います。理由は2つあります。

測っているものが違います。果実酢の「1〜2日」は飲める状態になるまで、果実酒の「3か月〜1年」は熟成してまろやかになるまでです。ゴールの設定が違います。

**果実の状態も違います。**梅酒は硬い青梅を丸ごと漬けます。果実酢はりんごを切り、ブルーベリーのような小さい果実を使います。表面積が違うので出る速さが違います。

その裏づけもあります。果実酢でも梅を使うときだけは3週間かかります。硬い果実は時間がかかるという同じ理屈です。

なお砂糖の役割——氷砂糖がゆっくり溶けて浸透圧の急変を防ぐこと——は氷砂糖の記事に詳しくあります。本記事では扱いません。

できあがりは冷水・炭酸水・牛乳などで5倍程度に薄めて飲みます。**薄める前提なので濃く作ります。**そのまま飲む果実酒とは設計が違います。

1週間で果実を取り出す

**果実は漬け込み後1週間(梅は3週間)で取り出します。**漬けっぱなしにしません。

理由は傷むからです。そのまま置くと果実が傷んでしまいます。さらに、果実が酢より浮き出していると、そこにカビが生えます。

だから毎日瓶を揺すります。混ぜるためだけでなく、空気に触れている時間を作らないためです。

取り出した果実は捨てなくてよく、ジャムにできます。

引き上げる理由には2種類ある

ここで区別が必要です。引き上げる技法は他にもありますが、理由が違います。

引き上げる理由放置するとどうなるか
ハーブ酒味が落ちる苦味が出る
果実酢傷むカビが生える・腐る
果実酒引き上げなくてよい熟成でまろやかになる

同じ「漬ける」でも、止める理由が味の問題か保存の問題かで分かれます。

酢は加熱できる——酒との決定的な違い

溶媒としての酢には、酒にない性質があります。

溶媒主成分の沸点加熱できるか
100℃できる
200℃以上できる(高温が主戦場)
78.4℃(エタノール)できない
118℃(酢酸)できる
78.4℃ 溶媒が先に飛ぶ 加熱できない 水 100℃ 118℃ 200℃以上 水が先に飛ぶので溶媒は残る 加熱できる ← 水より低い 水より高い → 分かれ目は水の沸点。溶媒が水より先に飛ぶかどうかで、加熱できるかが決まる。
主成分の沸点が水より低いのは酒だけ。だから酒だけが加熱による抽出を使えない。

4つのうち酒だけが加熱できません。エタノールの沸点は水より低いので、温めると溶媒そのものが先に飛びます

酢は逆です。酢酸の沸点は水より高いので、加熱すると水が先に飛んで酸は残ります。

だから酢は加熱調理で使えます。酢の記事が「調理中は米酢・穀物酢。加熱しても風味が残る」と書いているのは、この沸点の差が理由です。

ただし**香りは別です。**酢酸は残りますが、果実由来の香気成分は加熱で失われます。

料理での意味は1つです。**酸を効かせたいなら加熱してよく、香りを残したいなら加熱しません。**果実酢そのものは加熱せず、薄めて飲むか仕上げに使います。

酸だから溶けるもの

酢は水溶性のものに加えて、酸があると溶けるものを取れます。

代表がカルシウムです。酢の記事にあるように、南蛮漬けで魚を長時間酢に浸すと骨まで食べられるようになります。ただし数時間以上の漬け込みが必要で、短時間では効果が薄いです。

溶媒ごとに整理すると、こうなります。

溶媒取れるもの
水溶性
脂溶性
水溶性と脂溶性の両方
水溶性+酸があると溶けるもの

酢は「両方溶かせる酒」とは違う方向に広がっています。脂溶性側には伸びない代わりに、酸でしか溶けないものに届きます。

まとめ:薄める前提で濃く作り、1週間で引き上げる

  • 「果実酢」は2つある。醸造の果実酢(ワインビネガー等)と漬け込みの果実酢(フルーツ酢)。本記事は後者
  • 1〜2日で飲み頃。果実酒の3か月〜1年と桁が違うのは、測っているものと果実の表面積が違うから。梅だけは3週間かかる
  • 果実は1週間(梅は3週間)で取り出す。理由は傷むから。浮いた部分からカビるので毎日揺する
  • 引き上げる理由は2種類ある。ハーブ酒は味が落ちるから、果実酢は傷むから。果実酒は引き上げなくてよい
  • 果実酒が常温で置けるのはアルコールが防腐も兼ねているから。果実酢は冷蔵で数か月をめどに
  • 5倍に薄めて飲む前提なので濃く作る
  • **酢酸の沸点は118℃**で水より高いので加熱できる。4溶媒のうち酒だけが加熱できない。ただし香りは飛ぶ
  • 酢が取れるのは水溶性+酸があると溶けるもの。カルシウムが溶けるのが酢の特徴

酢で取ったものが薄めて使う前提になる理由酢で取る抽出の仕組みにあります。だから濃く作ってよい、という設計になります。