市販の固形スープには「ブイヨン」と「コンソメ」があり、どちらを買えばいいか迷います。自分で作れるのかも気になる。
先に整理しておくと、市販品の表示は商品の設計の話です。ここで扱うのは料理としての違いで、それは1つだけです。
違いは1つだけ——澄ませたかどうか
| 何か | 澄み | 使いどころ | |
|---|---|---|---|
| ブイヨン | 牛骨・鶏がら・香味野菜を弱火で3〜4時間煮出したもの | 多少濁る | 料理のベース |
| コンソメ | ブイヨンに挽き肉・卵白・香味野菜を加えて澄ませ、味を凝縮したもの | 透明 | そのままスープとして出せる |
つまりコンソメはブイヨンの上位工程です。別の料理ではなく、同じものに一手間かけた状態です。
市販品でもこの関係は保たれています。固形ブイヨンは「ベース用」、コンソメは「そのまま飲める味付き」として設計されているので、代用するときは塩分と味の完成度が違うことに注意します。ブイヨンの代わりにコンソメを使うと、味が既に決まっているぶん調整の幅が狭くなります。
なぜ卵白で澄むのか
卵白と挽き肉を冷たいブイヨンに混ぜ、ゆっくり加熱します。これで澄みます。
起きているのはタンパク質の変性です。加熱でタンパク質が固まるとき、液中に散らばっていた濁りの粒子を巻き込みながら凝固します。卵白のタンパク質が網目を作り、そこに粒子が捕まる。
固まったタンパク質は軽いので浮上し、液面に層を作ります。この層が濾過材になります。
つまり卵白は「アクを吸着する」というより、固まりながら濁りを絡めとって連れて上がる わけです。
かき混ぜると濁る
清澄化で最も大事なのは触らないことです。
| 段階 | 温度 | やること |
|---|---|---|
| 混ぜる | 冷たいうち | 卵白・挽き肉・香味野菜をブイヨンに混ぜ込む |
| 加熱 | 〜49℃ | かき混ぜながらゆっくり温度を上げる |
| 層が浮く | 49℃前後 | ここから先は二度とかき混ぜない |
| 静かに保つ | 沸騰させない | 層の中央に穴を開けて対流の通り道を作る |
| 取り出す | — | 澄んだ液を静かに掬うか濾す |
**49℃前後で層が浮き始めます。**そこから先は、かき混ぜると層が崩れ、捕捉した粒子が液中に戻って濁ります。
上位の解説のなかには工程を「かき混ぜたりアクをとったり」と書くものがありますが、混ぜていいのは層が浮く前だけです。この2つの段階を分けないと、何をすべきか分からなくなります。
沸騰させてはいけないのも同じ理由です。激しい対流は層を壊します。フォンで沸騰を避けるのは脂が乳化して濁るのを防ぐためでしたが、こちらは層を守るためです。
コンソメ作りが大変な理由は「待つこと」
「コンソメ 作り方」で検索すると「大変」という語が並びます。実際、難しいものとして知られています。
ただし難しさの正体は技術ではありません。温度をゆっくり上げて、あとは触らずに待つ——それだけです。
難しく感じるのは3つの理由からです。
- 失敗が見えるまで時間がかかる(濁ったと分かるのが終盤)
- やり直せない(一度濁ると澄まない)
- 手を出したくなる(何もしない時間が長い)
逆に言えば、急いで加熱する・かき混ぜる・沸かすの3つを避ければ大きく外しません。
気温や材料の状態で結果が変わると言われるのも、要は温度上昇の速度が変わるためです。とろ火を維持できる環境かどうかが効きます。
ブイヨンとフォンはどう違うのか
ブイヨンとフォンは近い。どちらも骨や肉から水で取る出汁です。違うのは何を目的にするかです。
| 目的 | ゼラチン | 評価の基準 | |
|---|---|---|---|
| ブイヨン | そのままスープや料理のベースに | 多くなくてよい | そのまま飲んで美味しいか |
| フォン | ソースの土台にする | 多いほど価値がある | 煮詰めたときにとろみが出るか |
同じ材料でも狙いが違います。境界は厳密ではなく、フォンを薄めればブイヨンとして使えるという関係にあります。呼び分けは用途の宣言に近い。
澄ませる・濁らせない・濁らせる
水で出汁を取る技術は、濁りに対する態度で3つに分かれます。
| 態度 | 技術 | やり方 |
|---|---|---|
| 濁らせない | フォン | 弱火で乳化を避ける |
| 一度濁ったものを澄ませる | コンソメ | タンパク質の凝固で捕捉する |
| 意図的に濁らせる | 中華の白湯 | 強火で乳化させる |
同じ材料から3つの結果が出ます。分かれ目は火加減と、その後に何をするかだけです。
濁りの正体は乳化なので、白湯は乳化させ、フォンは乳化させず、コンソメは乳化してしまったものを取り除く——と読めます。
和の出汁が澄んでいるのは、そもそも脂の少ない素材(昆布・かつお節)を短時間で引き上げるためです。濁る条件に入りません。
まとめ:コンソメはブイヨンの上位工程
- 違いは1つ。ブイヨンは取った出汁、コンソメはそれを澄ませて凝縮したもの
- 卵白と挽き肉で澄むのは、タンパク質が固まりながら濁りを絡めとって浮上するから。挽き肉は赤身を使う(脂は逆効果)。酸を少量入れると層が強くなる
- **49℃前後で層が浮く。そこから先は二度とかき混ぜない。**混ぜていいのは冷たいうちだけ
- 層の中央に穴を開けて対流を逃がす。穴の管理が唯一の作業
- 大変なのは技術ではなく待つこと。急がない・混ぜない・沸かさないの3つを守れば外さない
- ブイヨンとフォンの違いは目的。フォンはゼラチンの多さが価値で、ブイヨンはそのまま飲める味が価値
澄ませる技術は水で取る出汁の3つの態度のうちの一つです。濁らせないフォン、意図的に濁らせる白湯と並べると位置が分かります。
参考文献
- Stella Culinary「How to Make Consomme (Classic Clarified Stock)」— 49℃で raft が浮き始めること、浮いた後はかき混ぜないこと、中央に穴を開けることについて
- Cup of Yum「Classic French Consommé」— raft の材料構成について
- Phan Eats「Demystifying Clearmeat: Key Ingredients for Beef Consommé」— 赤身の挽き肉を使う理由(脂は清澄化を妨げる)、酸を少量加えると層が強くなることについて
- James Peterson『Glorious French Food』「Consommé Made Clear with Egg Whites and Ground Meat」— 挽き肉が濾過材と味の両方を担うことについて
- プロのレシピ La Table「ブイヨンから作る本格コンソメスープ」
- マイナビニュース「ブイヨンとコンソメの違いとは?」— 市販品と代用について