発酵バターと普通のバターの違い|香りは熱で飛ぶので、加熱しない使い方ほど差が出る

発酵バターと普通のバターの違い|香りは熱で飛ぶので、加熱しない使い方ほど差が出る

この記事でわかること

発酵バターと普通のバターの違い
クリームを乳酸菌で発酵させるか。変わるのは香りとほのかな酸味
発酵バターはどの料理に使うと違いが出るか
塗る・のせる・和えるなど加熱しない使い方。炒め物では香りが飛ぶ
普通のバターと置き換えられるか
同じ重さで置き換えられる。有塩どうしなら塩が少し減る

発酵バターは、クリームを乳酸菌で発酵させてから作るバターです。普通のバター(非発酵バター)との違いは香りとほのかな酸味で、脂と水の量はほとんど変わりません。

普通のバターの2倍近い値段がすることもある発酵バターを、どの料理に使えば違いが分かるのか。目安は加熱の強さです。発酵の香りは熱で飛びやすいので、加熱が弱い使い方ほど差が出ます。

バターの種類のうち、塩を加えるかどうかの違いは有塩バターと無塩バターの違いにあります。ここでは、発酵させるかどうかで何が変わり、どの料理で選ぶかを扱います。

違いはクリームを発酵させるかどうか。変わるのは香りと酸味

乳酸菌がクリームの中で、香りと酸を作る

バターは、牛乳から分けたクリームをかき混ぜて脂の粒を集め、練り固めて作ります。発酵バターは、その前にクリームへ乳酸菌を加えて置き、発酵させてから同じように作ります。

乳酸菌は乳糖を食べて乳酸を作り、これがほのかな酸味になります。一部の乳酸菌は、牛乳に含まれるクエン酸からジアセチルという成分を作ります。ジアセチルはバターらしい濃い香りのもとで、発酵バターの香りの中心です(発酵の仕組み)。

使う乳酸菌の組み合わせで、できる香りの成分が変わります。発酵バターの香りが製品ごとに違うのはこのためです。

脂と水の量は、普通のバターとほぼ同じ

100gあたり(g)有塩バター発酵バター(有塩)
脂質81.080.0
水分16.213.6
食塩相当量1.91.3

出典: 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」。

脂の差は1g、水の差は3gほどで、生地の固さや溶け方が変わるほどではありません。料理で効く違いは香りと酸味です。

発酵の香りは熱で飛ぶ。差が出るのは加熱しない使い方

香りの成分は、水より低い温度で沸く

発酵の香りの中心のジアセチルは、88℃で沸騰します。水より低い温度で沸く成分で、沸点に届かなくても温度が上がるほど空気中へ逃げていきます(加熱で香りが消える仕組み)。

使い方ごとのバターの温度と、発酵の香りが残るか0℃50℃100℃150℃200℃88℃ ジアセチルが沸く塗る・のせる料理の余熱で溶かすだけ(炒めるほど熱くならない)モンテ(ソースに溶かし込む)45〜55℃炒める・焦がす150℃〜ジアセチルの沸点は88℃。沸点より低くても、温度が上がるほど飛びやすい。モンテの温度は乳化ソースの適温
モンテは88℃より下で、発酵の香りが残る。炒める・焦がすは150℃を超え、香りが飛ぶ

塗る・のせる・和えるでは、差がそのまま舌に届く

トーストに塗る、ゆでたじゃがいもや炊きたてのご飯にのせる、ゆでたパスタに和える。どれもバターは料理の余熱で溶けるだけで、炒めるほど熱くならないので、発酵の香りと酸味がそのまま味になります。発酵バターを使う価値がいちばん出るのはここです。

ソースの仕上げに冷たいバターを少しずつ溶かし込むモンテも、香りが残ります。ソースを45〜55℃に保ち、煮立てずに火から外して混ぜながら溶かすので、88℃に届きません(乳化ソース)。

焼き菓子では、バターが主役の生地に使う

焼いている間に生地の中も100℃近くまで上がるので、発酵の香りの一部は飛びます。塗るときほどの差は出ません。

それでもサブレ、クロワッサン、フィナンシェのようにバターの割合が高い菓子は、バターの香りが味の中心です。製菓の現場でも、香りのために発酵バターが選ばれます。

バターの割合が低い生地や、ほかの香り(チョコレート・スパイス)が強い生地では、発酵バターに替えても違いが分かりにくくなります。

炒める・焼く・焦がすでは、差がほとんど消える

ムニエルやソテー、炒め物では、バターは150℃を超えます。ここまで熱すると発酵の香りは飛び、普通のバターとの差はほとんど残りません。

焦がしバターでは、乳のたんぱく質と乳糖が色づいたナッツのような香りが上に乗ります(バターを焦がすと香りが出る理由)。発酵の香りはその下に隠れるので、焦がす工程は普通のバターで十分です。

酸味とコクは、塩気やでんぷんのある素材に合う

ほのかな酸味が、脂の重さを軽くする

発酵バターの酸味は、ヨーグルトほど強くはありません。それでも酸味には、脂の重さを軽く感じさせる働きがあります(酸味の科学)。

パン・じゃがいも・ご飯のようなでんぷんの多いもの、生ハム・チーズ・アンチョビ・醤油のような塩気のあるものと合わせると、バターの量が多くても重くなりにくくなります。

乳の甘さを素直に出したいものは、普通のバターで作る

バタークリームや、酸を加えずにバターだけでまとめるソースのように、乳のやさしい甘さを出したい料理では、酸味が前に出ることがあります。こうした料理は普通のバターで作ります。

ブール・ブラン(白ワインと酢を煮詰めてバターでつなぐソース)のように、もともと酸のあるソースなら、発酵バターの酸味はなじみます。

「発酵バター」と書かれたものにも、作り方が2つある

クリームを発酵させてから作る

昔からの作り方は、クリームを乳酸菌で発酵させてからかき混ぜてバターにする方法です。発酵を待つ時間がかかり、手間も増えます。

欧州で発酵バターが主流なのは、冷蔵の無い時代に、牛乳からクリームを分けて集める間に自然に発酵していたからです。日本の市販品の多くは発酵させない普通のバターです。

欧州のバターが濃く感じられるのは、発酵だけが理由とは限りません。脂の割合も製品ごとに違うので、包装の表示で確かめます。

バターを作ってから、乳酸と香りを練り込む

1960年代にオランダの研究機関で、発酵させないクリームでバターを作り、あとから乳酸と香りを加える作り方が生まれました。香りには、香りを作る乳酸菌や、発酵で生まれた香りを集めたものを使います。

クリームをすべて発酵させなくても、発酵バターの香りが出せます。

日本でも、発酵バターの作り方として、できたバターに乳酸菌を練り込む方法が挙げられています。どちらの作り方でも料理での使い方は同じで、違うのは製品ごとの香りの強さです。

置き換えるときは同じ重さで、塩だけ見る

普通のバターと同じ重さで置き換える

脂も水もほぼ同じ量なので、生地の固さも焼き上がりもほとんど変わりません。発酵バターのレシピを普通のバターで作っても、同じ重さで置き換えられます。変わるのは香りで、仕上がりはあっさりします。

普通のバターで作った料理に香りを足したいときは、火を止めてから発酵バターを1人分5gほど落とします。

有塩どうしなら、発酵バターのほうが塩が少ない

成分表の値では、有塩バター100gの食塩1.9gに対して、有塩の発酵バターは1.3gです。有塩バター100gを有塩の発酵バターに替えると、塩が約0.6g減ります。

市販品の塩の量は製品ごとに違うので、計算は包装の表示で行います。塩の足し引きの考え方は有塩バターと無塩バターの違いと同じです。

作るものごとに、発酵バターと普通のバターを選び分ける

作るもので選ぶ

作るもの選ぶバターなぜか
パンに塗る・じゃがいもやご飯にのせる発酵バター加熱しないので、香りと酸味がそのまま味になる
ゆでたパスタに和える・野菜の仕上げ発酵バター温度が上がりきらず、香りが残る
ブール・ブランなど酸のあるソースのモンテどちらでも。香りを立てたいなら発酵バター45〜55℃で溶かし込むので香りが残り、酸味もソースになじむ
サブレ・クロワッサン・フィナンシェ香りを立てたいなら発酵バター(食塩不使用)香りの一部は飛ぶが、バターの香りが味の中心
バタークリーム・酸を加えないバターソース普通のバター酸味が乳の甘さの邪魔をする
ムニエル・ソテー・炒め物普通のバター150℃を超え、発酵の香りが飛ぶ
焦がしバター普通のバター焦がした香りが上に乗り、発酵の香りは隠れる

強火で焼き色をつけたいときは、普通のバターでも焦げやすくなります。その場合は、乳成分を除いて熱に強くした澄ましバターを使います(バターの種類)。

1つだけ買うなら、加熱しない分だけ発酵バターにする

発酵バターを全部の料理に使っても、炒め物では値段の差が味に出ません。普通のバターを基本にして、塗る・のせる・和える分と、香りを食べる菓子の分だけ発酵バターを買うのが無駄のない分け方です。

発酵バターの香りは、開封してからの時間とともに弱まります。使う分ずつ小分けにしてラップで包み、冷凍しておくと香りが長持ちします(脂が劣化する仕組み)。

よくある失敗と対策

香りが弱い・飛んだ部分的
なぜ
発酵の香りの中心のジアセチル(沸点88℃)が、炒める・焼くなど150℃を超える加熱で揮発して飛んでしまいます
どうする
火を止めてから、仕上げに発酵バターを1人分5gほど落とします
次から
加熱する工程は普通のバターで作り、発酵バターは仕上げと塗る・和えるに回します