氷砂糖|溶ける遅さを梅酒・梅シロップに活かす、ロックとクリスタルの選び方

氷砂糖|溶ける遅さを梅酒・梅シロップに活かす、ロックとクリスタルの選び方

この記事でわかること

氷砂糖とはどんな砂糖か
グラニュー糖の濃い糖液から大きく育てた結晶。溶けるのが遅い
梅酒に氷砂糖を使う理由
ゆっくり溶けて、液の砂糖が少しずつ濃くなる
ロック型とクリスタル型の選び方
梅シロップ・果実酢はロック型、梅酒は売り場に多いクリスタル型でよい
梅1kgに入れる量
梅酒は500〜800g、梅シロップは1kg
氷砂糖が無いとき
グラニュー糖を同じ重さで。瓶を回して底の糖液を果実にかける

氷砂糖は、グラニュー糖を溶かした濃い糖液に種の結晶を入れ、大きく育てた砂糖です。砂糖の中でいちばん大きな結晶で、溶けきるまでに時間がかかります。中身はグラニュー糖と同じ、ほぼショ糖だけです。

日本の家庭では梅酒・果実酒・梅シロップに使われ、1年に売れる量の約7割が梅の出回る5月末〜6月に売れます。ゆっくり溶けて、酒やシロップの砂糖が少しずつ濃くなることが、漬け込みに向く理由です。

この記事では、氷砂糖がほかの砂糖と何が違い、梅酒・梅シロップ・果実酢でどう使い、ロック型とクリスタル型のどちらを買うかを扱います。グラニュー糖で代えるとき、煮物での使い方、余ったときの保存まで書きます。

精製した砂糖全体の比べ方は精製糖の使い分けにあります。

氷砂糖は、溶けるのが遅く、甘味がすっきりしている

料理の手を変える持ち味は3つです。

氷砂糖の持ち味どこから来るか料理で起きることだからこうする
溶けるのが遅い結晶が大きく、重さのわりに水に触れる面が小さい瓶の中の砂糖の濃さが、何日もかけて少しずつ上がる果実を漬けて置く梅酒・梅シロップ・果実酢に使う
甘味がすっきりしているグラニュー糖をもう一度結晶にした、純度の高いショ糖果物の香りや風味を損ねない果実の香りを主役にしたい漬け込みに選ぶ
塊で重い1粒が大きい果実の上に置くと重しになる瓶の一番上を氷砂糖で終える

出典: 結晶の作り方は文部科学省 日本食品標準成分表。溶ける遅さと果実酒は農林水産省「砂糖の種類」・aff 2021年11月号。甘味・重しは農畜産業振興機構(2017)と全日本氷糖工業組合(2020)。

浸透圧で梅から液が出るしくみは砂糖で取る抽出にあります。

白ざら糖・グラニュー糖との違いは、振り入れるか、漬けて溶かすか

同じ精製糖の仲間でも、粒の砂糖は料理や菓子に振り入れて使い、氷砂糖は果実と漬けて溶けるのを待ちます。

グラニュー糖白ざら糖氷砂糖
粒の大きさ0.2〜0.7mm1〜3mm塊
溶け方すぐ溶けるグラニュー糖より遅い日数をかけて溶ける
甘味クセのない淡白な甘味クセのない淡白な甘味すっきりした甘味
使い方菓子・飲み物・カラメルに振り入れるゼリー・綿あめ・菓子に振り入れる果実と漬けて、溶けるのを待つ

出典: 粒の大きさと甘味は農林水産省 aff 2021年11月号・全日本氷糖工業組合(2020)。用途は農林水産省「砂糖の種類」。

3つとも純度の高いショ糖で、甘味の説明はほぼ同じです。違いは粒の大きさと、そこから来る溶ける速さです。

上白糖とは中身から違います。上白糖は転化糖(ショ糖が分かれてできたぶどう糖と果糖)の液をまとっていて、これがコクと焼き色のもとになります。氷砂糖には転化糖が無いので、コクも焼き色も足しません。

漬ける期間に合わせた使い方:梅酒・梅シロップ・果実酢

氷砂糖で漬けるものは、守ってくれる液と、できるまでの期間が違います。

漬けるもの梅や果実1kgに対してできるまで置き場所
梅酒・果実酒氷砂糖500〜800g、35度のホワイトリカー1.8L3か月で飲める。6か月〜1年でまろやか冷暗所
梅シロップ氷砂糖1kg、水は入れない約2週間冷暗所
果実酢氷砂糖1kg、酢1kg氷砂糖が溶けて1〜2日で飲める。1週間で果実を出す冷暗所。できたら冷蔵

出典: 梅酒は果実酒、梅シロップは砂糖で取る抽出、果実酢は果実酢と全日本氷糖工業組合(2020)。

梅酒・果実酒は、酒が守るので溶けるのを待てる

瓶には梅と氷砂糖を交互に重ねます。氷砂糖は梅の上で重しになりながら、数日から数週間かけて少しずつ溶けていきます。砂糖を増やすほど甘くなります。

酒が傷みを防いでくれるので、氷砂糖が溶けきるまでの時間を急ぐ必要はありません。あんず・びわ・かりん・きんかん・ゆずなど、ほかの果実でも同じように漬けられます。配合の調整、手順、酒の選び方は果実酒にあります。

梅シロップは、溶けきるまでの数日がいちばん傷みやすい

酒を入れずに果実と氷砂糖だけで漬けると、梅シロップになります。約2週間で、梅から出た液が瓶を満たします。

酒が守ってくれないので、砂糖が溶けて液が濃くなるまでの最初の数日がいちばん傷みやすい時期です。一番上を氷砂糖で終え、1日2〜3回瓶を回して、できた糖液を全部の梅にかけます。作り方と発酵の防ぎ方は砂糖で取る抽出にあります。

果実酢は、氷砂糖が溶ければ飲める

酢が液を守るので、氷砂糖が溶けたら飲めます。溶けるまでは1日1回、ふたをしたまま軽くふり混ぜ、できた果実酢は冷蔵庫に移します。期間と果実を取り出す理由は果実酢にあります。

ロック型とクリスタル型は、漬ける期間で選ぶ

濃い灰色の陶板の上に、同じ形の浅い白磁の鉢を2つ左右に並べて真上近くから写した。左の鉢はロック型の氷砂糖で、平たく不揃いな半透明の塊が重なる。右の鉢はクリスタル型の氷砂糖で、角の立った小さな粒が大きさを揃えてぎっしり入る

左がロック型(不揃いの塊)、右がクリスタル型(大きさの揃った角のある粒)。

氷砂糖には、作り方の違う2つの型があります。

ロック型クリスタル型
形ごつごつした不揃いの塊角の立った16面体で、大きさが揃う
作り方浅い皿に濃い糖液と種の結晶を入れ、約2週間かけて育ててから砕く回転する円筒の中で、濃い糖液と種の結晶を3〜4日かけて育てる
溶け方溶けやすいロック型よりゆっくり
向く漬け込み早く溶かしたい梅シロップ・果実酢溶けるのを待てる梅酒・果実酒
出回る量生産の約2割生産の約7割

出典: 作り方と生産量(2015年7月〜2016年6月)は農畜産業振興機構(2017)。溶け方は全日本氷糖工業組合(2020)。

迷ったら、梅シロップ・果実酢にはロック型、梅酒には売り場に多いクリスタル型を選びます。ロック型は溶けやすいので、液を早く濃くしたい漬け込みで傷みやすい日数を縮められます。

喫茶店で見る茶色の小粒のコーヒーシュガーも氷砂糖の仲間で、カラメルで色をつけた糖液から結晶を育てたものです。

手元の型で漬けるとき

梅酒はロック型でも漬けられます。ロック型のほうがアクの少ない味になる、とも言われますが、型を変えて比べた測定は見つかりませんでした。

梅シロップを作りたいのにクリスタル型しか無いときは、そのまま使えます。溶けきるまで日数がかかるぶん、1日2〜3回瓶を回すのを、氷砂糖が見えなくなるまで続けます。

店で見分けるには、形と袋の表示を見る

袋の表示は「ロック」「クリスタル」のように型の名前が入っています。中日本氷糖の「馬印 氷砂糖 ロック大粒」(1kg)はロック型です。袋の上からでも、不揃いの塊ならロック型、揃った粒ならクリスタル型と見分けられます。

梅1kgを漬けるなら、梅シロップで1kg、梅酒で500〜800gが要ります。1kg入りの袋が1つあれば足ります。

氷砂糖が無いときは、グラニュー糖を同じ重さで

氷砂糖はグラニュー糖を結晶に育て直したものなので、グラニュー糖で代えるなら同じ重さにすれば甘さは揃います。氷砂糖は塊でスプーンでは量れないので、レシピの量はどちらも重さで量ります。

違うのは溶ける速さです。グラニュー糖は瓶の底ですぐ溶け、底に濃い糖液がたまります。瓶を回して、底の糖液を上の果実にかけます。梅シロップなら1日2〜3回、梅酒でも砂糖が溶けきるまでは1日1回が目安です。

煮物と、中国料理の冰糖

煮物に使うなら、先に煮汁で溶かす

煮豆や豚の角煮の甘味を、氷砂糖でつける人もいます。上白糖の代わりに使うなら重さで同じ量です。転化糖が無いぶん、上白糖よりコクと焼き色は控えめになります。

溶けるまで時間がかかるので、材料より先に煮汁に入れて溶かします。

中国料理では、冰糖を飲み物と煮込みに使う

中国料理では氷砂糖を冰糖(ビンタン)と呼び、お茶などの飲み物を甘くしたり、煮込みや漬けだれの味つけに使ったりします。

精製の度合いが低い黄色い冰糖もあり、白いものより風味が深いので煮込みに選ばれます。

余った氷砂糖は、密閉すれば翌年の梅の季節まで使える

梅の季節に買った氷砂糖が余っても、捨てる必要はありません。砂糖は品質が変わりにくく、法律で賞味期限の表示が要らない食品です。

ふたの閉まる容器に入れて、湿度の変化が大きいコンロのそばなどを避けて常温に置けば、翌年の梅酒や梅シロップに使えます。

出典: 賞味期限の表示は農畜産業振興機構(2017)。保存の場所は農林水産省 aff 2021年11月号。

参考文献

  1. 文部科学省「日本食品標準成分表 砂糖及び甘味類の解説」——氷砂糖・コーヒーシュガー・氷糖みつの定義(グラニュー糖の糖液から大きな結晶を成長させる加工糖)
  2. 農林水産省「砂糖の種類」——氷砂糖は時間をかけて結晶を大きくし、溶けるのに時間がかかるため果実酒に向く。白ざら糖・グラニュー糖の用途
  3. 農林水産省「違いを知って料理をおいしく!砂糖の種類と製造方法」aff 2021年11月号——氷砂糖は酒の中で濃度がゆっくり上がるため果実酒に向く、クリスタル氷糖とロック氷糖、グラニュー糖・白ざら糖の粒径、保存で湿度の変化を避けること
ほか7件を見る
  1. 農畜産業振興機構「【業務関連情報】氷砂糖のあれこれ」(2017年5月)——ロック型(皿・約2週間・砕く)とクリスタル型(回転円筒・3〜4日・16面体)の作り方、種類別の生産量、果実酒で重しになり少しずつ溶けること、煮物での使い方、賞味期限の表示
  2. 農畜産業振興機構「氷砂糖あれこれ」(2019年8月)——氷砂糖はショ糖のひとつの大きな結晶、果実と氷砂糖だけでシロップにできること
  3. 全日本氷糖工業組合「氷砂糖で作るフルーツビネガー」砂糖類・でん粉情報 2020年5月——純度が高くすっきりした甘味、ロックタイプは溶けやすく短い漬け込み向き、販売の約7割が梅の時期、果実酢の配合
  4. 世界大百科事典「氷砂糖」(コトバンク)——砂糖製品の中で最も大きな結晶、溶けるのが遅いので浸透圧が急に上がらないこと
  5. 内田麻理香「科学しちゃうぞ!」imidas(2011年5月)——溶けやすい砂糖では梅の水分が一気に抜けて表面がしわになるという説明
  6. アスクル「中日本氷糖 馬印 氷砂糖 ロック大粒 1kg」——ロック型の商品の例(原材料グラニュー糖、梅酒・果実酒・シロップ向け)
  7. China Sichuan Food「Rock Sugar」——中国料理の冰糖(飲み物・煮込み・漬けだれ、黄色い冰糖の風味)