日本料理の余白|和食の盛り付けは主菜を器の3割、副菜を5割に

日本料理の余白|和食の盛り付けは主菜を器の3割、副菜を5割に

この記事でわかること

和食は器の何割に盛るか
主菜は面の約3割、副菜の鉢は約5割、小鉢は約3割
器の大きさの選び方
飯碗を1として主菜2.5・副菜1.5・小鉢1.0の面積
なぜ山高に盛るか
表面が小さく冷めにくい。箸でつまむ頂点ができる
汁物の汁の量
300ml前後の椀に150ml前後。具を多くすると汁と塩が減る
食べる量の止めどころ
満腹を感じるまで15〜20分。八分で箸を置く

焼き魚を、ちょうどよい大きさの角皿にのせます。皿の端から端まで魚が届いて、大根おろしを置く場所がありません。味は同じなのに、どこから箸を入れるか迷い、食べ進めると皮が皿の縁に引っかかります。

和食のレシピや盛り付けの解説には、「余白を残す」「山高に盛る」「奇数で盛る」とよく書かれています。見た目のための約束に見えますが、どれも空きをどこにどれだけ残すか、という同じ話の言い換えです。

この記事では、日本料理が器と量に空きを残して盛る理由と、家で盛るときの割合・高さ・数・汁の量・食べる量の目安を扱います。素材からアクや臭みを除く下ごしらえは、日本料理の引き算で扱っています。器とあしらいで季節を見せる替え方は日本料理の旬にあります。旬・引き算・余白の3つが台所のどの場面に効くかは、日本料理の考え方にまとめています。

和食の余白は、器の面・高さと数・汁・食べる量の4か所に残す

和食の余白は、1つの割合ではありません。空ける場所が4つあり、それぞれに目安があります。

空ける場所目安空けると良くなること詰めすぎると
器の面主菜は面の約3割、副菜の鉢は約5割に盛る箸を入れる場所ができ、料理の輪郭が見える取るときに崩れ、器の縁に汁と脂がつく
高さと数中央に山高に盛り、切り身や刺身は3・5・7の奇数表面が小さくなり冷めにくい。頂点ができて三角に収まる平らに広げると表面から冷める
汁300ml前後の汁椀に150ml前後。煮物の煮汁は深さ5mmほど器を手に持てる。汁が隣の料理に回らない持ち上げると縁からこぼれ、塩も増える
食べる量少しずつ出し、満腹の手前(八分)で止める次の皿を温かいうちに食べられる満腹を感じるまでの15〜20分で食べ過ぎる

出典: 器の面は伊藤ら(日本調理科学会誌)、満腹までの時間は神奈川県、具と汁の量は堺市の減塩資料、汁椀の容量は市販品の表示。

器の面と高さは、盛り付けの解説でよく言われる部分です。この記事では、汁の量と1回に出す量も、同じく空きを残す場所として扱います。

洋食の「7割盛り」と和食の余白は、同じ割合ではない

盛り付けの解説を読み比べると、「皿の7割に盛って3割を空ける」と「器に対して3割ほど盛る」が両方出てきます。逆の数字に見えますが、前提にしている食卓が違います。

洋食は1皿にまとめるので、皿の7割を使う

ハンバーグとつけ合わせの野菜とソースを、1枚の皿にのせる洋食の家庭料理では、皿の7割に盛り、3割を空けるのが目安とされています。主菜も副菜も1枚にのるので、皿の大半を使います。

和食は器を分けるので、1皿の面は3〜5割で足りる

和食の家庭の食事は、ご飯・汁・主菜・副菜・小鉢(研究では副副菜=ふくふくさい)を別々の器に盛る一汁三菜が基本です。器が5つあるので、1つの器にのる量は少なくなります。

一汁三菜の盛り付けを測った研究で、料理が器の面のどれだけを覆っていたかは次のとおりです。焼き魚のような主菜は、器の面の7割を空けて盛っていることになります。

器料理が覆う面の割合盛り方の目安
主菜(焼き魚・煮魚)約30%中央からやや奥に置き、手前を空ける
副菜(煮物・和え物)約50%中央に山にして、周りを空ける
小鉢(和え物・香の物)約30%器の中央に小さくまとめる

出典: 伊藤(博士論文要旨)。

盛りながら測るなら、3割は器の縦と横それぞれ約55%の幅に、5割は縦と横それぞれ約70%の幅に料理を収める大きさです。

洋食:皿1枚に7割和食:器を5つに分けて3〜5割料理 70%直径27cmの皿(飯碗の約5倍の面積)主菜 2.5(料理30%)副菜 1.5(料理50%)小鉢 1.0(30%)ご飯飯碗 1.0汁汁椀 1.0数字は飯碗を1とした器の面積。色の部分が料理
同じ縮尺で並べると、和食は器を分けるぶん1つの器の料理が小さく、どの器にも周りの空きが残る。洋食は大きな皿1枚の大半を使う。

器の大きさは、飯碗を1として主菜2.5・副菜1.5・小鉢1.0

同じ研究では、器の大きさの組み合わせも比べています。飯碗と汁椀の面積を1としたとき、主菜の器が2.5、副菜が1.5、小鉢が1.0の組み合わせが最も評価が高く、主菜の器は縦1:横1.6の長皿や楕円が好まれました。

家の器に当てはめると、次のようになります。

器面積の比飯碗の口径が12cmのときの大きさ(cm)
飯碗・汁椀1.0直径12
主菜(長皿)2.521×13
副菜(鉢)1.5直径15
小鉢1.0直径12

寸法は面積の比から計算した値です。

この比で器を選ぶと、主菜3割・副菜5割・小鉢3割で盛ったときに、器ごとの空きがそろいます。主菜を直径27cmの洋皿に盛ると、面積は飯碗の約5倍になり、同じ量の魚が覆うのは皿の面の約15%です。

空けると、箸が入り、器を持てて、形と量が見える

余白は見た目のためだけに残すのではありません。和食の食べ方と器の持ち方に、そのまま関わっています。

箸を入れる空きがあると、崩さずに取れる

箸は、料理の横から差し入れて、下からすくうか挟んで取ります。周りに空きが無いと、箸を入れる場所がなく、上から押して身を崩します。

焼き魚は頭を左、腹を手前にして皿の中央からやや奥に置き、手前を空けます。右利きの人が手前から箸を入れて、皮と身を一緒にはがせる向きです。

前盛り(大根おろしや、はじかみ=葉しょうがの甘酢漬け)は、その手前の空いたところに小さく置きます。

縁まで盛らないと、器を持てて汁がこぼれない

和食は、ご飯茶碗・汁椀・小鉢を手に持って食べます。器の縁は、手の指と口が触れる場所です。縁まで料理が届いていると、持ち上げたときに汁がこぼれ、縁についた脂やたれが指につきます。

縁の内側を一周空けておくと、持つ場所と口をつける場所が料理と分かれます。

何も盛っていない部分があると、料理の輪郭と量が先に目に入る

器の何も盛っていない部分が料理の周りにあると、料理の形と大きさがひと目で分かります。器いっぱいに盛ると、料理の輪郭が器の縁と重なります。

量が見えると、その皿を食べ切れるかどうかも先に分かります。量の余白(少しずつ出して八分で止める)は、ここから始まります。

高さと数で、空いたところに形を作る

面を空けたら、残した部分に高さを出して形を作ります。

山高に盛ると、平らに広げるより冷めにくい

山高は、器の中央に料理を高く寄せて盛る形です。和え物やきんぴらは、中央に円すい形に寄せる杉盛り(杉の木のように高く盛る)にして、上に針しょうがやごまをのせます(天盛り=てんもり)。

高く寄せると、料理の表に出る面が小さくなります。

重さ100gの煮物(体積をおよそ100cm³とします)を厚さ5mmに広げると、上の面だけで約200cm²が空気に触れます。同じ量を半球の山に寄せると、表面は約80cm²です。

熱が逃げる面が半分以下になるので、冷めるのが遅くなります。

冷めると味の感じ方が変わり(温度で変わる味覚)、牛や豚の脂は固まって口に残ります(脂肪の融点)。

料理盛り方器
和え物・きんぴら中央に杉盛りにして天盛り小鉢。温めない
煮物(炊き合わせ)大きいものを奥、小さいものを手前に重ねて山にする深めの鉢。温める
焼き魚中央からやや奥。頭を左長皿。温める
刺身大根のけんを奥に立て、手前に向かって身を立てかける平皿か角皿。冷やす
天ぷら立てかけて重ねず、面の半分ほどに和紙を敷いた皿。温めない

3・5・7の奇数で盛ると、頂点ができて三角に収まる

和食の盛り付けの基本は、料理を三角形に、立体で置くことです。3切れなら2切れを奥に並べて1切れを手前に、または1切れを奥に立てて2切れを手前に置くと、三角ができます。偶数の4切れは2つずつ並んで四角になり、どれが頂点か分かりません。

刺身や切り身は、3・5・7の奇数で盛るのが一般的です。日本語の「奇数」が「喜数」に通じて縁起がよいからとも言われますが、形の上では、奇数のほうが頂点を1つ作れるという理由があります。

2人分を1皿に盛るときは、6切れを2つに分けず、5切れか7切れにして1つの山にします。

汁物と煮物は、汁を張りすぎない

汁の余白は、器の中の液の量です。

汁椀は、普段使いのもので容量300〜360mlほどです。味噌汁やすまし汁は1杯150ml前後を注ぐので、椀の半分ほどになります。持ち上げても縁から汁がこぼれず、蓋をしても蓋の裏が汁に触れません。

具を多くすると、同じ椀に入る汁が減り、汁に溶けた塩も減ります。汁の量を減らしたいときは、汁を浅く注ぐより、具を増やして汁の入る場所を減らします。

煮物の煮汁の量に、決まった数値は見つかりませんでした。目安は、具の底が浸る深さ5mmほどです。具の表面が乾かず、器を傾けても縁まで回りません。残りの煮汁は鍋に置き、温め直しやおかわりに使います。

量も空ける。少しずつ出して、八分で止める

余白は器の中だけではありません。1回に出す量と、食べる量にも空きを残します。

茶懐石は、ご飯をひと口から3回に分けて出す

茶事の食事である茶懐石は、向付(むこうづけ。刺身などの小さな皿)と汁と飯から始まり、炊き合わせ、焼物と順に出します。

最初のご飯は、炊き立てを飯碗にひと口だけよそいます。その後、10分ほど蒸らしたもの、20分ほど蒸らしたものと、2回に分けて足します。

一度に盛りきらないので、2杯目・3杯目のご飯も冷めないうちに出せ、蒸らし具合の違いを順に味わえます。

家の食卓で同じことをするなら、ご飯と汁は1杯目を少なめによそい、おかわりで足します。大皿に盛った煮物は、取り分けた器に1回分ずつ盛ります。献立の組み方と出す順は、改まった席ほど細かい決まりがあります(日本料理の献立)。

満腹を感じるまで15〜20分かかるので、八分で止める

満腹の合図が出て食欲が落ちるまで、食べ始めてから15〜20分ほどかかります。それより早く食べ切れる量を盛ると、合図が届く前に食べ過ぎます。

江戸時代の健康書『養生訓(ようじょうくん)』には、珍しい料理を前にしても八、九分で止めよ、とあります。満腹の合図が15〜20分遅れて届くことを考えると、八分で箸を置いておけば、合図が届く前に食べ過ぎずに済みます。

少しずつ盛り、ひと口30回ほど噛んで食べると、1回の食事に15〜20分以上かかり、盛った量で足りるかどうかを合図が届いたあとで確かめられます。

日本は料理ごとに器を替え、その器の中を空ける

器に余白を残すのは、和食だけではありません。違いは、皿を料理に合わせて替えるかどうかと、余白をどこに残すかです。

料理体系皿余白をどこに残すか
フランス料理厨房で1人分を、同じ形の白い大皿に組んで出す皿の縁。ソースと料理を囲む枠として残す
中国料理主菜をまとめて大皿に盛り、食卓で取り分ける大皿は満たす。空きは各自の取り皿の側
日本料理料理ごとに形と大きさの違う器に盛る料理ごとの器の中。器の大きさを料理に合わせて替える

出典: フランス料理の特徴、中国料理の特徴。

フランス料理は、コースの皿を同じ白い大皿でそろえることが多くあります。料理を皿に合わせて組み、白い縁を額縁にして、ソースの線や色を見せます。

中国料理の大皿は、大人数で囲んで取り分ける前提です。大皿は満たして出し、1人分の量は、食べる人が取り皿に取る量で加減します。

日本料理は、焼き魚には長皿、煮物には深い鉢、和え物には小鉢と、料理ごとに器を替えます。器が料理に合わせて小さくなるので、1つの器の中の余白を測って残せます。余白の割合が料理ごとに違うのは、器が料理ごとに違うからです。

うまくいかせる条件

家の器は、一汁三菜の比のとおりにそろっているとは限りません。器が合わないときの盛り方です。

こんなときどうするか理由
主菜の皿が大きすぎる(直径27cmの洋皿など)長皿に替える。無ければ中央に寄せて高さを出す平らに広げて埋めると冷める
器が小さすぎて縁まで届く量を減らして2回に分けて出す縁を空けないと持てず、汁がこぼれる
小鉢が足りない副菜を1つの皿に盛るときは、料理ごとに山を分けて間を空ける汁や味が隣に移らない
汁物の具が少なく汁が多い具を足すか、椀を一回り小さくする汁を減らしたほうが塩も減る
大人数で大皿に盛る大皿は満たしてよい。取り皿は小さめを用意する余白は取り皿の側で残る
冷たい料理(刺身・酢の物)器を冷蔵庫で冷やしてから盛る。高さは同じように出す冷たい料理も、器が室温だと身の温度が上がる

よくある失敗と対策

脂が口の中で固まる回復できる
なぜ
豚の角煮や牛肉の煮物を冷たい大皿に平たく広げ、表面から冷めて脂が白く固まりました
どうする
電子レンジで器ごと温め直し、具を中央に寄せて盛り直します
次から
器を湯か電子レンジで温めておき、具は中央に山にして盛ります
水っぽい・ゆるい回復できる
なぜ
煮物の煮汁を器いっぱいに張ったため、器を持ち上げた傾きで煮汁が縁を越え、隣の料理に流れて味が移りました
どうする
煮汁を鍋に戻し、器の底に残る程度にして盛り直します
次から
煮汁は具の底が浸る深さ5mmほどにとどめ、残りは鍋に置きます
衣・皮がベチャッとした部分的
なぜ
天ぷらを皿いっぱいに寝かせて重ね、下の衣が蒸気と油を吸いました
どうする
網にのせて余分な油を落とし、立てて盛り直します
次から
器の面の半分ほどに、立てかけて盛ります
煮崩れた部分的
なぜ
煮魚や炊き合わせを器の縁まで詰めて盛り、箸を入れる隙間が無くて取るときに崩れました
どうする
崩れた身は奥へ寄せ、手前に空きを作って形のよいものを前に出します
次から
器の手前と周りを空け、具は奥から手前へ高さを下げて盛ります

和食の余白で押さえる4つ

和食の余白は、器を替えて食べる料理が、器の中と食卓の上に空きを残すことです。

  • 器の面は、主菜が約3割、副菜の鉢が約5割、小鉢が約3割。器の大きさは飯碗を1として主菜2.5・副菜1.5・小鉢1.0です
  • 料理は中央に山高に寄せ、切り身や刺身は奇数で三角に置きます。広げないほうが冷めにくくなります
  • 汁は300ml前後の椀に150ml前後。煮物の煮汁は深さ5mmほどで止めます
  • 量は少しずつ出し、満腹を感じるまでの15〜20分を見込んで八分で止めます

器を料理に合わせて替えることが、余白を残す前提です。

参考文献

  1. 農林水産省「実践してみよう!和食の盛り付けのコツとおもてなし」(三角形を三次元的に配置し、少し崩して余白を残す。高さをつける)
  2. 農林水産省 Let's 和ごはんプロジェクト「おうちで茶懐石」(向付・汁・飯から出し、飯は炊き立てをひと口から3回に分けて出す。飯・汁・向付を三角に置く)
  3. 伊藤有紀・香西みどりほか「一汁三菜の食事における好ましい食器の大きさおよび形の組み合わせの検討」日本調理科学会誌 48(5), 351-358, 2015(飯碗・汁椀の面積を1.0として主菜2.5:副菜1.5:副副菜1.0、主菜の器は縦1:横1.6)
ほか6件を見る
  1. 伊藤有紀「一汁三菜における料理の盛り付け」日本調理科学会誌 49(6), 341-347, 2016、および同著者の博士論文要旨(お茶の水女子大学)(料理が器に占める面積: 主菜約30%・副菜約50%・副副菜約30%)
  2. 神奈川県「よく噛んで食べよう」(満腹中枢が食欲にブレーキをかけるまで食べ始めて15〜20分。ひと口30回噛む)
  3. 堺市「今日からできる減塩のヒント」(具だくさんにすると椀に入る汁が減り、みそを減らせる)
  4. 地球の歩き方「日本の魅力 日本食の盛りつけ」(立体の盛り付けは箸でつまみやすい。刺身は3・5・7種の奇数で盛る)
  5. 家電Watch「ハンバーグを美味しく盛り付ける3つのコツ」(洋食の1皿は皿の7割に盛り3割を余白にする)
  6. Customs and etiquette in Chinese dining(Wikipedia。主菜をまとめて出し、大皿から取り分ける)