日本料理の献立|一汁三菜は塩とうま味を主菜に寄せ、副菜は酢やごまで

日本料理の献立|一汁三菜は塩とうま味を主菜に寄せ、副菜は酢やごまで

この記事でわかること

一汁三菜の献立はどう組むか
塩とうま味を主菜に寄せ、副菜は淡く、汁は具を多く
一汁三菜の塩分の目安
1食2.6g。主菜1.2g、副菜0.7gずつ
味噌汁を付けると塩が多くなる
副菜1品を酢・ごま・かつお節で味つけする
全部を温かいうちに出すには
温かく出すのはご飯・汁・主菜。副菜は先に作る
懐石と会席の違いは
茶懐石は飯が最初、会席はご飯が最後

焼き魚、肉じゃが、ほうれん草のお浸し、味噌汁を作りました。どれも醤油か味噌の味で、食べ進めるうちに口の中がしょっぱくなり、ご飯ばかり減っていきます。1品ずつは丁度よい味なのに、並べると塩が多すぎます。

一汁三菜は、ご飯に汁1つとおかず3つを付ける献立です。品の数だけでなく、品ごとにどの濃さで味をつけ、どの順に作るかまで、ご飯を食べ進める側から組み立てられています。

この記事では、日本料理が日々の食事と改まった席の献立をどう組むかを扱います。素材から余分を除く考え方は日本料理の引き算、器に余白を残す盛り方は日本料理の余白、うま味で味を支える理由は日本料理のうま味にあります。

一汁三菜は、ご飯を中心におかずの味を組む

日本の日常の食事は、塩を入れずに炊いたご飯が中心にあります。おかずと汁は、そのご飯を食べ進めるための味を受け持ちます。

ご飯とおかずを交互に食べ、口の中で味を整える

和食では、ご飯・汁・おかずを交互に口に運び、口の中で混ぜ合わせて味を整えます。これを口中調味(こうちゅうちょうみ)と呼びます。

ご飯に味が無いので、おかずはご飯と一緒に食べて丁度よい濃さにします。おかずだけを食べると少し濃い、くらいが目安です。

全部の品をご飯と食べる濃さにすると、冒頭のように塩が重なります。濃いのは1品にして、ほかは淡くします。

一汁三菜の品ごとの役割と量

品受け持つこと量の目安1品の塩の目安(g)出す温度
ご飯味の無い主食。おかずの味を受け止める中盛り1杯(主食1.5つ)0炊き立て
汁水分をとり、具で野菜を足す椀に150ml前後0.75〜0.9熱い
主菜塩とうま味の中心。ご飯が進む濃さ魚1人前(主菜2つ)1.2温かい
副菜野菜を食べる。淡い味小鉢1皿・野菜70g(副菜1つ)0.7常温か冷たい
副々菜(ふくふくさい)酸味・ごまなど主菜と違う味小鉢1皿・野菜70g(副菜1つ)0.7以下常温か冷たい

出典: 量は名古屋市の食事バランスガイド資料(「つ」は食事バランスガイドの数え方)、塩は広島県の減塩の目安、汁は石田・手塚 2011 のすまし汁・みそ汁1杯、汁の量は日本料理の余白。香の物(漬物)は一汁三菜の数に入れません。

食事バランスガイドの1日の目安は、主食5〜7つ、副菜5〜6つ、主菜3〜5つです(2200±200kcal)。3食で割ると1食あたり主食2つ前後、副菜2つ前後、主菜1〜2つになり、一汁三菜1回分とほぼ重なります。

塩とうま味は主菜に寄せ、副菜と汁は淡くする

塩を全部の品に同じだけ配ると、どれも淡くてご飯が進まないか、どれも濃くて塩が多すぎるかのどちらかになります。

1食の塩は2.6g前後。主菜1.2g、副菜は0.7gずつ

成人の1日の食塩の目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満です。3食で割ると、1食2.5g・2.2gほどです。

自治体の減塩の目安には、1食2.6gを主菜1.2g、副菜0.7g、副菜0.7gに分けたものがあります。主菜に副菜の1.7倍の塩を置き、ご飯にはつけません。

汁を付けるなら、副菜1品の塩を減らす

この配分には汁が入っていません。味噌汁1杯の食塩相当量は約0.9g、すまし汁は約0.75gで、足すと1食3.4〜3.5gになります。

汁の分を取り戻すには、副菜の1品を塩を使わずに味つけします。お浸しはかつお節と柑橘、和え物はごまや酢、煮物は野菜の甘みで味をつけます。

1食の塩の配り方の例汁の塩(g)主菜の塩(g)副菜の塩(g)副々菜の塩(g)合計(g)
汁なし01.20.70.72.6
味噌汁を付ける0.91.20.502.6
すまし汁を付ける0.751.20.602.55

汁なしは広島県の目安です。汁を付ける2行は、その目安に汁の値(石田・手塚 2011)を足して副菜側を減らした計算例で、副々菜は酢・ごま・かつお節で味つけして塩を使わない前提です。

汁の塩を減らしたいときは、汁を薄めるより、具を増やして椀に入る汁を減らします(日本料理の余白)。うま味を足すと、汁の塩を2〜3割減らしてもおいしさの評価が変わらなかった試験があります(日本料理のうま味)。

調理法・味・色を品ごとに替える

日本料理の基本の調理法は、生(切る)・煮る・焼く・蒸す・揚げるの5つで、五法(ごほう)と呼びます。献立では、品ごとに別の五法を当てます。

主菜と副菜は、別の調理法にする

同じ調理法を重ねると、口当たりと温度が揃い、油や塩も重なります。主菜を先に選び、副菜はそれと違う調理法にします。

主菜合わせる副菜避ける組み合わせ
焼く(焼き魚・照り焼き)煮物、お浸し、和え物焼き野菜を重ねる
煮る(煮魚・肉じゃが)和え物、酢の物煮物をもう1品
揚げる(天ぷら・唐揚げ)酢の物、お浸し炒め物・揚げ物
生(刺身)煮物、焼き物生野菜のサラダだけ
蒸す(茶碗蒸し・酒蒸し)焼き物、和え物汁気の多い煮物

出典: 五法は農林水産省「和食ワールドチャレンジ」、組み合わせは DELISH KITCHEN「一汁三菜とは?」をもとに整理。

刺身のように火を通さない主菜を置く日は、口当たりが切り方で決まります(日本料理の割主烹従)。

醤油の味を3品続けない。酸味を1品入れる

味は甘・酸・塩・苦・うま味の5つで、五味(ごみ)と呼びます。醤油の味が3品続くと、冒頭のように塩が重なります。

醤油の品を主菜にしたら、副菜の1品は酢の物にし、塩ではなく酸味で味つけします。

主菜は旬の素材から選び、色は副菜で足す

主菜は、その時期においしい魚や野菜から選ぶと、調理法も絞りやすくなります。脂ののった秋の魚なら塩焼き、脂の少ない春の魚なら刺身や煮物です(日本料理の旬)。

色は赤・黄・青(緑)・白・黒の5つで、五色(ごしき)と呼びます。焼き魚と煮物は茶色に寄るので、お浸しの緑、人参の赤、卵の黄色を副菜で足します。

全部を同時に出す。温かい品は3つに絞る

一汁三菜は、全部の品を1人分ずつ一度に並べます。並べた時点で、温かい品は温かく、冷たい品は冷たくなっている必要があります。

温かく出すのはご飯・汁・主菜。副菜は常温か冷たい料理にする

温かく出す品が5つあると、5つを同じ時刻に仕上げることになります。ご飯・汁・主菜の3つに絞り、副菜2品は冷めてもおいしいお浸し・和え物・酢の物にします。

副菜を先に作って置いておけるので、最後の数分に仕上げる品が3つで済みます。主菜が刺身の日は、副菜の1品を温かい煮物にしても、温かい品はご飯・汁・煮物の3つです。

ご飯の蒸らし10〜15分で、汁と主菜を仕上げる

段取りは、時間の決まっているご飯から逆算します。米の浸水は夏30分〜2時間、冬1〜2時間、炊き上がってからの蒸らしは10〜15分です。

一汁三菜を同時に出す段取り(夏の例)ご飯浸水 30分炊く蒸らし10〜15分副菜2品作って冷まし、置いておく主菜(焼き魚)塩をして10〜20分焼く汁だしと具を用意温め、味噌を溶く全部を盛る棒の長さは目安です。炊く時間は鍋や炊飯器の表示どおりに当ててください
副菜は浸水の間に済ませて置き、蒸らしの10〜15分に主菜を焼き、汁に味噌を溶きます。蒸らしが終わる時刻に、温かい3品が揃います。

出典: 浸水と蒸らしは香川県、魚の塩は日本料理の旬、味噌の温度は味噌と温度。

味噌は80℃を超えると香りが逃げます。だしと具は先に温めておき、蒸らしの終わり近くに火を止める直前で味噌を溶き、沸かさずに椀へ注ぎます。

ご飯は左手前、汁は右手前に置く

並べ方は、ご飯を左手前、汁を右手前、主菜を右奥、副菜を左奥、副々菜を中央奥に置くのが基本です。香の物は数に入れず、ご飯と汁の間に置きます。

右手で箸を持ち、左手で持ち上げるご飯茶碗と汁椀が、いちばん手前に来ます。茶懐石の最初の膳も、飯を左手前、汁を右手前に置きます。

茶懐石は飯が最初、会席は飯が最後

改まった席では、品を1つずつ順に出します。同じ「かいせき」と読む茶懐石と会席は、ご飯の出る位置が逆です。

真上から撮った茶懐石の最初の膳。黒漆の四角い折敷の上に器が3つだけ三角形に並ぶ。手前左に白いご飯を盛った黒い飯椀、手前右に白味噌の汁を張った内側が朱の汁椀、奥の中央に大葉と大根のけんを敷いて鯛の刺身3切れとわさびをのせた陶器の向付。下の帯に、左から飯・向付・汁と名前を焼き込んでいる

出る順茶懐石(茶事の食事。最後に濃茶)会席(酒を楽しむ席の料理)
1飯・汁・向付(むこうづけ。刺身などの皿)を折敷(おしき)にのせて先付(さきづけ。前菜)
2煮物椀(具の多い吸い物)吸い物
3焼物お造り(刺身)
4強肴(しいざかな。酒に合わせて足す料理)焼き物
5箸洗(はしあらい。ごく小さな吸い物)煮物または蒸し物
6八寸(はっすん。酒の肴の盛り合わせ)揚げ物
7湯桶(ゆとう。おこげの湯)と香の物酢の物
8主菓子(おもがし)と濃茶(こいちゃ)ご飯・止め椀(とめわん。最後の汁)・香の物
9出ない水菓子(みずがし。果物)

出典: 茶懐石の始まりは農林水産省「おうちで茶懐石!」、全体の順は GOOD LUCK TRIP「懐石料理とは?」・和樂web。流派・店によって順や品数は変わります。

茶懐石は飯と汁から始まる

茶懐石は、茶事で濃茶を出す前にとる食事です。懐石の名は、修行僧が空腹をしのぐために懐に入れた温めた石(温石=おんじゃく)から来ているとされます。

茶をおいしく飲んでもらうための軽い食事なので、最初の膳から飯と汁が出ます。向付・煮物椀・焼物と合わせて一汁三菜になります。最初の飯はひと口だけよそい、2回に分けて足します(日本料理の余白)。

会席はご飯で酒を切り上げる

会席は、酒を楽しむ宴席の料理です。酒の肴になる品を先に並べ、ご飯と止め椀は料理を出し終えたあと、酒を切り上げる合図として出します。

空腹で酔わないように途中でお凌ぎ(おしのぎ。一口の寿司やそば)を挟み、ご飯は最後に回します。会席でご飯が終盤に来るのは、席の中心が酒にあるからです。

家の献立では、酒を飲む晩だけ会席の順にする

日々の食事は一汁三菜を同時に並べ、ご飯と交互に食べます。酒を飲む晩は、主菜と副菜を先に出して肴にし、ご飯と汁はあとで温かく出します。

フランスは1皿ずつ出し、日本は温度の違う品を同時に並べる

温かい料理を温かいうちに出すという問題に、料理体系ごとに違う答えを出しています。

料理体系日々の出し方主食の位置温かさの保ち方
フランス料理コースで前菜・主菜・デザートを1皿ずつパンは添え物厨房で盛り、1皿ずつ順に運ぶ
中国料理大皿を卓の中央に置いて取り分ける宴席ではご飯が終盤に出ることもある大皿を熱いうちに出し、各自が取る
日本料理一汁三菜を1人分ずつ同時に並べるご飯が中心温かい品を3つに絞り、副菜を常温の料理にする

出典: フランスは Wikipedia「Service à la russe」とフランス料理の特徴、中国は中国料理の特徴。

フランスもかつては全部の皿を一度に食卓へ並べていました。並べた料理が冷めてしまうため、19世紀に厨房で盛って1皿ずつ運ぶ方式へ移り、それが今のコースの元になりました。

日本の日常の食事は、今も全部を同時に並べます。温かさは、温かく出す品を絞り、冷めてもおいしい副菜と組むことで保ちます。1品ずつ出すのは、茶懐石と会席のような改まった席です。

うまくいかせる条件

こんなときどうするか理由
主菜が煮物で、汁も味噌汁汁をすまし汁にするか、副菜を酢の物にする塩とうま味の濃い品が2つ重なる
主菜が揚げ物副菜に酢の物かお浸しを置き、汁は具の多いもの油を使う品が2つになる
主菜が刺身副菜に温かい煮物を1品入れる主菜が冷たいので、温かい品はご飯・汁・煮物の3つになる
副菜が1品しか作れない具を多くした味噌汁を副菜1つに数える具だくさんの味噌汁は副菜1つに当たる
1人分だけ作る副菜は2〜3日分まとめて作り、小鉢で出す温かい3品の段取りだけに集中できる

よくある失敗と対策

味が濃い・塩辛い部分的
なぜ
主菜を照り焼き、副菜を醤油の煮物と醤油のお浸しにして、味噌汁も付けたため、どの品を食べても塩が強くなりました
どうする
汁を半分の量にし、お浸しの醤油を拭って柑橘を搾ります
次から
醤油の味は主菜の1品にとどめ、副菜の1品は酢・ごま・かつお節で味つけします
味が薄い・ぼやけた回復できる
なぜ
全部の品を同じように薄味にしたため、ご飯と一緒に食べると味が足りず、ご飯が残りました
どうする
主菜に醤油か塩を少し足すか、香の物を添えます
次から
主菜だけはご飯と食べて丁度よい濃さにし、薄くするのは副菜と汁にします
香りが弱い・飛んだ回復できる
なぜ
味噌を溶いた汁を盛る前に沸くまで温め直したため、80℃を超えて味噌の香りの成分が揮発しました
どうする
火を止めてから味噌を小さじ1ほど溶き足します
次から
だしと具だけ先に用意し、味噌はご飯の蒸らしの間に溶いて沸かさずに出します
冷めると固くなった部分的
なぜ
焼き魚を最初に焼き、ご飯の炊き上がりを待つ間に冷めて、身の脂が固まり身が締まりました
どうする
電子レンジで30秒ほど温め、皮を上にして盛り直します
次から
魚はご飯の蒸らしに入ってから焼き始め、焼き上がりを最後に置きます

日本料理の献立で押さえる4つ

日本料理の献立は、塩を入れないご飯を、おかずと交互に食べ進めるための組み方です。

  • 塩とうま味は主菜に寄せ、ご飯と食べて丁度よい濃さにします。1食2.6gなら主菜1.2g、副菜0.7gずつです
  • 汁を付けたら、副菜の1品を酢・ごま・かつお節で味つけし、塩を汁の分だけ減らします
  • 品ごとに調理法と色を替え、醤油の味を3品続けません
  • 温かく出すのはご飯・汁・主菜の3つ。副菜は先に作り、ご飯の蒸らしの間に汁と主菜を仕上げます

改まった席では、茶懐石は茶の前の食事なので飯が先、会席は酒の席なのでご飯が後になります。

参考文献

  1. 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」(一汁三菜を基本とする食事スタイル、うま味で動物性油脂の少ない食生活)
  2. 農林水産省「『食事バランスガイド』の適量と料理区分」(主食・副菜・主菜の1つ〈SV〉の基準)
  3. 名古屋市「食事バランスガイド」(1日の目安 主食5〜7つ・副菜5〜6つ・主菜3〜5つ、ごはん中盛り1杯=1.5つ、魚料理1人前=2つ、小鉢の野菜料理=1つ、具だくさん味噌汁=副菜1つ)
ほか12件を見る
  1. 広島県「減塩と野菜摂取の推進」(1食2.6g=ごはん+主菜1.2g+副菜0.7g+副菜0.7g、野菜は主菜・副菜1品70g以上)
  2. 農林水産省 みんなの食育「食塩の取りすぎに注意」(日本人の食事摂取基準2025年版の目標量 男性7.5g未満・女性6.5g未満)
  3. 石田眞弓・手塚宏幸「うま味を利用した減塩料理の提案とその官能評価」日本栄養・食糧学会誌 64(5):305-311, 2011(すまし汁・みそ汁1杯の食塩相当量)
  4. 三菱電機 クラブメ「和食の知恵」熊倉功夫インタビュー(ごはん・汁・おかずを交互に口に運んで味を調節する口中調味)
  5. 農林水産省「和食ワールドチャレンジ」五味・五感・五色・五法(生・煮る・焼く・蒸す・揚げる、赤・黄・青・白・黒)
  6. DELISH KITCHEN「一汁三菜とは?」(主菜の調理法で副菜を替える、醤油の料理を3品続けない、器の並べ方)
  7. 香川県「もっと好きになろう」2020(米の浸水 夏30分〜2時間・冬1〜2時間、蒸らし10〜15分)
  8. 農林水産省 Let's 和ごはん「おうちで茶懐石!」(向付・汁・飯から始め、飯を左手前・汁を右手前に置く)
  9. 農林水産省 Let's 和ごはん「茶道の世界へようこそ」(懐石の語源は温石、茶をおいしく飲んでもらうための軽い食事、茶事は通常4時間)
  10. GOOD LUCK TRIP「懐石料理とは?知っておくべき料理の構成とマナー」(茶懐石と会席の出る順、ご飯で酒を切り上げる)
  11. 木村悦子「これだけは覚えたい!和食・日本料理のマナーを3分でマスター」和樂web 2021年12月26日(会席の出る順)
  12. Service à la russe(Wikipedia。全品を並べる方式から1皿ずつ出す方式への移行と、その理由)