韓国料理の薬食同源|にんにく・生姜・ごまを毎日どれだけ入れるか

韓国料理の薬食同源|にんにく・生姜・ごまを毎日どれだけ入れるか

この記事でわかること

韓国の薬食同源とは
薬の書に載る香味を、毎日の合わせ調味に少しずつ入れること
にんにくはどれくらい入れるか
4皿に3皿。4人分のナムルに小さじ½から、肉と魚に大さじ1
生姜はどの料理に入れるか
魚介・豚・キムチに、にんにくの2分の1〜6分の1
ヤンニョムは「薬念」と書くのか
辞書は漢字を当てない。19世紀の약념が양념になった
中国の医食同源との違い
中国は献立を組み、韓国は合わせ調味に入れる

韓国料理のレシピを並べると、豆もやしのナムルにも、プルコギのたれにも、わかめスープにも、刻んだにんにくとごま油が入っています。生姜は、いかの炒め物やたちうおの煮付けには入るのに、プルコギには入りません。

韓国料理は薬食同源(やくしょくどうげん。韓国語で약식동원(ヤクシクトンウォン))の料理だと言われます。台所で見ると、韓国の薬食同源は、薬の書に載る香味——生姜・にんにく・ねぎ・ごま——を、毎日の合わせ調味に少しずつ入れる形になっています。

1613年の医学書『東医宝鑑(とういほうかん)』は、これらを薬草と同じ篇に載せたうえで、生姜は「いつも食べてよいが多すぎないように」、ねぎは「味を和えるのに使い、多くは食べない」と書いています。

この記事では、『東医宝鑑』が台所の材料をどう書いたか、薬念・薬食同源という語が何を指すか、毎日の料理でにんにく・生姜・ごまの量と入れる料理がどう変わるかを扱います。食材の効能や病気の治療は扱いません。

醤・キムチ・塩辛を重ねて味を増やす側は韓国料理が発酵を重ねる理由に、合わせ調味の用途ごとの配合はヤンニョムにあります。

2つの考え方がそれぞれ台所のどの場面で手を変えるかは、韓国料理の考え方にまとめています。

薬の書に載る香味を、毎日の味付けに少しずつ入れる

台所で変わるのは、香味ごとの入れ方です。

香味入る品(180品中)割合(%)4人分の量入れる料理
にんにく13575多くは小さじ½〜大さじ1ナムル・汁・肉・魚の大半
ねぎ12771刻んで多くは大さじ1〜2合わせ調味と汁
ごま油9452小さじ½〜大さじ1和え物・焼き物
生姜5531多くは小さじ½〜大さじ½魚介・豚・キムチ

出典: 韓食振興院の標準レシピ180品(飲み物・餅・菓子・醤の仕込みを除く)を、材料欄にその香味があるかで数えました(2026年11月)。ねぎは玉ねぎを除き、大ねぎ・細ねぎ・刻みねぎを数えました。

生姜・ねぎ・にんにく・ごま油は、どれも『東医宝鑑』に載っている材料です。ほぼ毎日の料理に入りますが、1品に入る量は小さじと大さじの単位です。

『東医宝鑑』は、台所の材料を薬と同じ篇に韓国語の名で載せた

『東医宝鑑』は、朝鮮の医官の許浚(ホ・ジュン)が王の命で編み、1613年に刊行された医学書です。2009年にユネスコの世界の記憶に登録され、予防と国による保健の考え方を育てた本とされています。

湯液篇では、穀部・獣部・魚部・果部・菜部が草部と並ぶ

薬の材料をまとめた湯液篇(とうえきへん)は、次の部に分かれています。

巻部
巻1水・土・穀・人・禽(とり)・獣
巻2魚・虫・果・菜・草(上)
巻3草(下)・木・玉・石・金

出典: 『東医宝鑑』緫目(記事末尾の参考文献)。穀物や野菜を薬と同じ書に載せる形は、中国の本草書が古くから取ってきたもの(真柳 2016)。

米・ごま・醤・酢は穀部に、生姜・にんにく・ねぎ・白菜は菜部に、薬草と同じ並びで載っています。

各項には、漢字の名の横に「ᄉᆡᆼ강(生姜)」「마ᄂᆞᆯ(にんにく)」「파(ねぎ)」と当時の韓国語の名が書かれています。国産の材料には韓国での名と産地を書く、と序で決めているためです。

生姜の項には、産地として「わが国では全州(チョンジュ)に多く産する」とあります。

『東医宝鑑』は、中国の本草書と同じこの並びに韓国語の名と産地を書き添え、台所にある材料として引けるようにしました。

生姜・ねぎ・醤には「味を和える」「多く食べない」と書いた

台所の香味の項には、薬としての働きと並んで、食べ方の一言が付いています。

項目原文意味
生姜(生薑)不徹薑食…可常啖 但勿過多食卓から下げない。いつも食べてよいが、多すぎないように
ねぎ(葱白)只可和五味用之 不宜多食味を和えるのに使い、多くは食べない
にんにく(大蒜)久食傷肝損目長く食べ続けないように
醤(醬)將和五味…以豆作陳久者良五味を和える。豆で作り、長く寝かせたものがよい
酢(醋)能措五味以適中五味をほどよいところに収める
ごまの油(油)炒熟者可供食 一名香油炒ったごまを搾った油は食用。香油とも呼ぶ

出典: 『東医宝鑑』湯液篇巻1 穀部・巻2 菜部(記事末尾の参考文献)。生姜の句は『論語』の一節を引いたもの。

薬としての働きの記載はこの記事では扱いません。台所に残ったのは、毎日入れる、量は控える、味を和えるために入れる、の3つです。

「薬念」も「薬食同源」も、古典の語ではない

日本語の解説では、ヤンニョムを「薬念」と書き、薬食同源を韓国の古い言葉として紹介するものがあります。韓国の国語辞典を引くと、どちらも古典の語ではありません。

辞書はヤンニョムに漢字を当てていない

韓国の国語辞典(標準国語大辞典)は、양념(ヤンニョム)を「料理の味を引き立てるために使う材料の総称」とし、油・ごま塩・ねぎ・にんにく・醤油・味噌・塩・砂糖を挙げています。漢字の表記は載せていません。

同じ辞書の歴史情報では、19世紀の文献に약념(ヤンニョムの古い形)があり、発音が変わって20世紀から양념になったとしています。

「薬念」は、약념の音に「薬」の字を当てた書き方で、辞書は語源として挙げていません。それでも、辞書が양념に並べる材料(ごま塩・ねぎ・にんにく・醤油・味噌)は、『東医宝鑑』が薬の材料として載せたものと重なります。

ヤクシクトンウォン(약식동원)は新しい語

약식동원(藥食同源)は標準国語大辞典に見出しがなく、新しい語も集める韓国の国語辞典(우리말샘(ウリマルセム))に「薬と食べ物は根源が同じ」という意味で載っています。

日本語の医食同源は1972年に日本で作られた語で、薬食同源・薬膳も20世紀後半に中国と日本で広まった語とされます。韓国の古い書物は、食べ物で病を治すことを食療(식료(シンニョ))・食治(식치(シクチ))と呼びました。

1460年に王の医官の全循義(チョン・スヌィ)が編んだ『食療纂要(しょくりょうさんよう)』は、序で「人が世に生きるには飲食が第一で、薬はその次」「昔の人はまず食で治し、治らなければ薬を用いた」と書いています。

語は新しくても、食べ物を薬の手前に置く順序は15世紀の書物にあります。

変わるのは、にんにく・生姜・ごまの量と入れる料理

韓国の標準レシピ180品を、香味がどの料理にどれだけ入るかで数えました。

にんにくは4皿に3皿、4人分に小さじ½〜大さじ1

料理(4人分)主材料にんにく生姜ごま油
豆もやしのナムル豆もやし300g小さじ½なし小さじ½
ほうれん草のナムルほうれん草300gなしなし小さじ½
わらびのナムル戻したわらび300g大さじ½なし大さじ1
プルコギ牛ロース500g大さじ1なし大さじ1
いかの炒め物いか500g大さじ1小さじ1大さじ1
たちうおの煮付けたちうお450g大さじ1小さじ½大さじ1
わかめスープ牛肉200g・乾燥わかめ30g・水2L小さじ1なし大さじ2

出典: 韓食振興院の標準レシピ「콩나물무침」「시금치나물」「고사리나물」「불고기」「오징어볶음」「갈치조림」「미역국」。にんにくと生姜は刻んだもの、計量は大さじ15mL・小さじ5mL。

180品のうち135品(75%)、4皿に3皿ににんにくが入ります。量は、豆もやしのナムル300gに小さじ½、わらびに大さじ½、500gの肉や魚に大さじ1です。

ナムルの標準レシピは、香りのよい野菜を使うときは、ねぎとにんにくの味付けを濃くしないよう添えています。ほうれん草のナムルには、にんにくが入りません。野菜の茹で時間と絞り方は韓国料理のナムルの作り方の基本にあります。

生姜は魚介・豚・キムチに、にんにくの2分の1〜6分の1

主材料品数生姜が入る品割合(%)
キムチ111091
魚介522752
豚肉20945
鶏肉7343
牛肉5559
野菜・穀物・豆腐3513

出典: 韓食振興院の標準レシピ180品を主材料で分けて数えました(2026年11月)。

生姜は魚介・豚肉・キムチの料理に入り、牛肉と野菜の料理にはほとんど入りません。

量はにんにくより少なく、すけとうだらの鍋で2分の1、いかの炒め物で3分の1、白菜キムチで4分の1、たちうおの煮付けで6分の1です。

魚介と豚肉に生姜を合わせるのは、生姜の強い香りが生臭さを覆うためで、和食の薬味と同じ使い方です。

ごま油は、和え物では和え衣に、わかめスープでは炒め油に

ごまは、180品のうち65品(36%)に入ります。『東医宝鑑』が食用とした炒ったごまの油が、韓国のごま油(참기름(チャムギルム))です。

料理(4人分)ごま油を入れるところごま油の量
豆もやし・ほうれん草のナムル(300g)調味料と合わせてから、茹でた野菜を和える小さじ½
きのこのナムル(300g)炒めたきのこを和える大さじ½
プルコギ(牛肉500g)たれに合わせて肉を漬ける大さじ1
わかめスープ(水2L)牛肉とわかめを炒める油にする大さじ2

出典: 韓食振興院の標準レシピ「나물」「불고기」「미역국」。

和え物では調味料と合わせた和え衣に、プルコギではたれに、わかめスープだけは炒め油として入ります。

中国は献立を組み、韓国は合わせ調味に入れる

食べ物で体を整える考え方は、中国料理にもあります。違うのは、その考え方が台所のどこに入るかです。

料理体系体を整える考えが入るところ台所でやること
中国料理献立穀物を1日200〜300g(炊く前)の土台にして、ほかの量を割り振る
韓国料理毎日の合わせ調味にんにくを4皿に3皿、生姜は魚介・豚・キムチに、量は小さじと大さじの単位

出典: 中国料理は『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』の「五穀為養(穀物が体を養う)」と《中国居民膳食指南(2022)》、韓国料理は韓食振興院の標準レシピ180品の集計(記事末尾の参考文献)。

中国の食養は、何をどれだけ食べるかという献立の組み方から入ります。韓国の薬食同源は、献立ではなく、料理ごとの合わせ調味の中身として入っています。

うまくいかせる条件

こんなときどうするかなぜ
魚介や豚肉を煮る・炒める合わせ調味に、にんにくの3分の1を目安に生姜を入れる標準レシピの魚介の料理は半数に生姜が入る
牛肉の焼き物・葉物のナムル生姜は入れず、にんにくとごま油で調える標準レシピの牛肉と野菜の料理には生姜がほぼ入らない
毎日の料理ににんにくを入れる4人分で大さじ1までにする標準レシピの多くは小さじ½〜大さじ1で、『東医宝鑑』も多すぎないようにと書く

よくある失敗と対策

苦い・えぐい部分的
なぜ
刻んだにんにくだけを熱い油に先に入れ、細かい粒の糖が焦げて苦い褐色物質に変わりました
どうする
焦げた粒は油ごと捨て、にんにくを合わせ調味に混ぜてから炒め直します
次から
にんにくは醤油・砂糖と合わせ調味にしてから具に絡め、具と一緒に鍋に入れます
香りが弱い・飛んだ回復できる
なぜ
香りの強いせりや春菊のナムルに肉と同じ量のにんにくを入れ、にんにくの香りが野菜の香りを覆いました
どうする
茹でた野菜を足して和え直し、ごま油を小さじ½足します
次から
香りのよい野菜はにんにくを小さじ½までにし、ほうれん草のように入れない手もあります
生臭い回復できる
なぜ
魚の煮付けに生姜を入れず、魚のトリメチルアミンのにおいが煮汁に残りました
どうする
おろし生姜を小さじ½加えて2〜3分煮て、仕上げにねぎを散らします
次から
魚介と豚肉の合わせ調味には、にんにくの3分の1を目安に生姜を入れます
油っぽい・重い回復できる
なぜ
300gのナムルに肉と同じ大さじ1のごま油を入れ、野菜の表面を油が覆って塩と醤油が絡まなくなりました
どうする
茹でた野菜を100g足して和え直し、塩をひとつまみ足して味を見ます
次から
葉物のナムル300gにはごま油小さじ½、わらびのように乾物を戻したものは大さじ1までにします

薬食同源で押さえる3つ

韓国の薬食同源を台所に置き換えると、香味を毎日入れ、1品の量は小さじと大さじで止めることです。

  • 『東医宝鑑』は生姜・にんにく・ねぎ・ごま・醤を薬草と同じ篇に韓国語の名で載せ、生姜は多すぎないように、ねぎは味を和えるのに使うと書きました
  • 「薬念」は辞書の語源ではなく、약식동원も新しい語ですが、食べ物を薬の手前に置く順序は15世紀の書物にあります
  • 標準レシピでは、にんにくは4皿に3皿に4人分で多くは小さじ½〜大さじ1、生姜はにんにくの2分の1〜6分の1を魚介・豚・キムチに入れます

参考文献

  1. UNESCO Memory of the World「Donguibogam: Principles and Practice of Eastern Medicine」(2009年登録。1613年に朝鮮で編まれた医学の百科、予防医学と国による保健の理想)
  2. 許浚『東医宝鑑』緫目・集例(湯液篇の部立て、国産の薬材には韓国での名と産地を書く方針)Wikisource 東醫寶鑒
  3. 許浚『東医宝鑑』湯液篇巻2 菜部(生薑・葱白・大蒜・菘菜の項)Wikisource 동의보감
ほか12件を見る
  1. 許浚『東医宝鑑』湯液篇巻1 穀部(胡麻・油・醬・醋の項)Wikisource 동의보감
  2. 농촌진흥청 웹진(2025年7月)고영「식치(食治)」(全循義『食療纂要』1460年の序「人之處世 飮食爲上 藥餌次之」「先用食療 食療不愈然後藥治」)
  3. 国立国語院 標準国語大辞典「양념」(料理の味を引き立てる材料の総称。油・ごま塩・ねぎ・にんにく・醤油・味噌・塩・砂糖など。漢字表記なし)
  4. 国立国語院 우리말샘「양념」歴史情報(약념(19世紀)>양념(20世紀〜)。2音節目の鼻音が1音節目のㄱを同化)
  5. 国立国語院 우리말샘「약식동원(藥食同源)」(標準国語大辞典には見出しなし)
  6. 真柳誠「医食同源の由来:古典籍にみる論理と歴史」漢方と最新治療 25(3), 2016(医食同源は1972年に日本で造語。薬食同源・薬膳も20世紀後期の造語)
  7. 한식진흥원(韓食振興院)標準レシピ「나물_버섯나물·콩나물무침·시금치나물」(4人分。助言「香りのよい野菜はねぎ・にんにくの味付けを濃くしない」)
  8. 한식진흥원 標準レシピ「불고기」(4人分。牛ロース500gににんにく大さじ1・ごま油大さじ1)
  9. 한식진흥원 標準レシピ「오징어볶음」(4人分。いか500gににんにく大さじ1・生姜小さじ1)
  10. 한식진흥원 標準レシピ「배추김치」(白菜約20kgににんにく300g・生姜75g)
  11. 『黄帝内経素問』蔵気法時論篇第二十二(「毒藥攻邪,五穀為養,五果為助,五畜為益,五菜為充」)Wikisource 黃帝內經/素問第七卷
  12. 上海交通大学公共衛生学院「2022版《中国居民膳食指南》権威科普解読」(穀類1日200〜300g)