この記事でわかること
- 韓国料理が大事にしてきたこと
- 発酵したものを重ねることと、食べ物で体を整えること
- それぞれで手を変える場面
- 鍋に醤・キムチを入れるときと、合わせ調味に香味を入れるとき
- 2つのつながり
- 醤とキムチに両方が入り、どちらも量で止める
- 日本・中国料理との違い
- 発酵したキムチを具ごと煮て、香味は合わせ調味に入れる
キムチチゲのレシピには、キムチ500gの鍋にクッカンジャン(汁物用の韓国醤油)を大さじ2とあります。プルコギのたれにはにんにく大さじ1とごま油大さじ1、いかの炒め物には生姜小さじ1です。
どれも韓国料理の約束ごとですが、出てくる場面はばらばらです。
並べ直すと、2つの場面に分かれます。キムチと醤は鍋に塩を入れるとき、にんにく・生姜・ごま油は合わせ調味を作るときの話です。
韓国料理が大事にしてきたことは、2つに分けられます。発酵したものを重ねることと、食べ物で体を整えること(薬食同源(やくしょくどうげん))です。
ここでは、2つがそれぞれ台所のどの場面で手を変えるかと、互いのつながりをまとめます。日本・中国料理との違いと、2つを支える手段の記事への入口も並べます。
韓国料理が大事にしてきたのは、発酵と、体を整える香味
2つは、手に取るものが違います。発酵を重ねるのは、醤(ジャン)・キムチ・塩辛という発酵したものを同じ鍋と膳に重ねて入れることです。体を整えるのは、にんにく・生姜・ねぎ・ごまといった香味を毎日の合わせ調味に入れることです。
| 大事にすること | 手を変える場面 | 迷ったとき | 目安の一例 |
|---|---|---|---|
| 発酵を重ねる | 鍋と膳に醤・キムチ・塩辛を入れるとき | 先に入るキムチの塩から数え、後から入れる醤を減らす | キムチチゲの塩の約3分の2はキムチから入る |
| 食べ物で体を整える | 合わせ調味ににんにく・生姜・ごまを入れるとき | 毎日の料理に入れ、1品の量は小さじと大さじで止める | にんにくは標準レシピ180品のうち135品(75%)に入る |
出典: 数値は各記事の値。拠り所は、無形文化遺産のキムジャン(2013年)と醤づくり(2024年)の記載、許浚(ホ・ジュン)の医学書『東医宝鑑(とういほうかん)』(1613年)、韓食振興院の標準レシピ(参考文献)。
レシピの1工程で迷ったら、その工程が鍋に塩を入れる場面か、合わせ調味を作る場面かを見て、表の「大事にすること」の列の記事を開きます。
2つは、醤とキムチで重なり、どちらも量で止める
2つは別々の約束ではありません。同じ醤とキムチの中に両方が入り、どちらも入れる量の止め方とセットになっています。
醤は、発酵したものでもあり、『東医宝鑑』の材料でもある
韓国の醤づくりは2024年に無形文化遺産に記載され、醤は飯・キムチと並ぶ食事の土台とされています(韓国料理が発酵を重ねる理由)。
同じ醤を、1613年の『東医宝鑑』は生姜・にんにく・ねぎと同じ湯液篇(とうえきへん)に載せ、「五味を和える。豆で作り、長く寝かせたものがよい」と書いています(韓国料理の薬食同源)。
醤ににんにく・ねぎ・砂糖を合わせたものがヤンニョムです。発酵した醤と薬の書に載る香味は、毎日の合わせ調味の中で一緒になります。
キムチには、塩辛と生姜が一緒に入る
韓国の標準レシピの白菜キムチは、白菜1kg当たりセウジョッ(小エビの塩辛)20gとカタクチイワシの魚醤25gを薬味に合わせます。キムチは、野菜の発酵の中に魚介の発酵がもう1つ入っている食べ物です(韓国料理が発酵を重ねる理由)。
同じ薬味には生姜も入ります。標準レシピのキムチ11品のうち10品(91%)に生姜が入り、白菜キムチの生姜はにんにくの4分の1です(韓国料理の薬食同源)。
重ねるときは塩1gで数え、毎日入れるときは小さじと大さじで止める
発酵したものは、どれも塩を持っています。塩はキムチ・醤・塩辛の3つから入るので、足し算で数えます。キムチを100g増やしたら、クッカンジャンを約14g(大さじ1弱)減らせば鍋の塩は元のままです(韓国料理が発酵を重ねる理由)。
香味は毎日入れる代わりに、1品の量を小さじと大さじで止めます。標準レシピのにんにくは4人分に多くは小さじ½〜大さじ1で、『東医宝鑑』も生姜を「いつも食べてよいが多すぎないように」と書いています(韓国料理の薬食同源)。
日本料理は発酵の調味料で付け、中国料理は献立で体を整える
発酵したものを土台に置くのも、食べ物で体を整えるのも、韓国料理だけではありません。違うのは、それを台所のどこに入れるかです。
| 比べること | 韓国料理 | 比べる相手 |
|---|---|---|
| 発酵したものの入れ方 | 醤は汁に溶かし、キムチは具として25〜30分煮込む | 日本料理: 醤油・味噌をだしに溶かし、味噌は沸く手前で溶いて沸かさない |
| 体を整える考えが入るところ | 毎日の合わせ調味 | 中国料理: 穀物を1日200〜300g(炊く前)の土台にして献立を組む |
出典: 韓国料理が発酵を重ねる理由と韓国料理の薬食同源の比較の節。日本料理の側は和食の発酵調味料にあります。
日本料理は発酵の香りが沸騰で飛ばないように調味料として入れ、韓国料理は酸味の出たキムチを具ごと煮て、酸味とうま味を汁に移します。
日本料理が大事にしてきたことは日本料理の考え方に、体系全体を他の料理と並べた違いは韓国料理の特徴にあります。
2つを支える手段と、膳での形
2つを実際の料理にするには手段が要ります。醤・塩辛・ヤンニョム・ナムルの4つは韓国料理の技法にまとめていて、2つとは次のようにつながります。
| 大事にすること | 手段 | つながるところ |
|---|---|---|
| 発酵を重ねる | 醤の使い分け | 汁は水1Lにクッカンジャン大さじ½〜1⅓ |
| 発酵を重ねる | 塩辛(ジョッカル) | 汁には小皿で添え、食べる人が足す。セウジョッ5gで塩約1g |
| 発酵を重ねる | 火加減 | チゲは沸いたら弱火に落とし、キムチチゲは20分+10分で止める |
| 体を整える | ヤンニョム | にんにくはほぼ必ず入り、しょうがは魚介・豚・キムチに足す |
| 体を整える | ナムル | ごま油は青菜300gに小さじ½、乾物を戻したものに大さじ1 |
出典: 各記事の本文。
チゲを強火のまま煮ると水だけが飛び、重ねた塩はすべて鍋に残ります。火を落とすのは、重ねた塩を濃くしないためでもあります(韓国料理が発酵を重ねる理由)。
膳では、ご飯・汁・キムチ・醤の小皿を数えない土台に置き、その上のおかずの数で3チョプ・5チョプと呼びます。汁250mLとキムチ40gだけで塩2.7〜3.2gになるので、チゲの日は汁を付けません(韓国料理の献立)。
基礎をどの順に身につけるかは韓国料理スキルマップにあります。
韓国料理の考え方で押さえる2つ
- 鍋と膳に醤・キムチ・塩辛を入れるときは、発酵を重ねる。先に入るキムチの塩から数え、後から入れる醤を塩1gの換算で減らします
- 合わせ調味ににんにく・生姜・ごまを入れるときは、食べ物で体を整える。毎日の料理に入れ、1品の量は小さじと大さじで止めます
参考文献
- UNESCO「Kimjang, making and sharing kimchi in the Republic of Korea」(2013年 人類の無形文化遺産の代表的な一覧に記載。キムチの定義と、春の魚介・夏の塩・晩夏の唐辛子・晩秋の漬け込み)
- UNESCO「Knowledge, beliefs and practices related to jang making in the Republic of Korea」(2024年記載。醤は食事の土台で、野菜・魚・肉と合わせる)
- UNESCO Memory of the World「Donguibogam: Principles and Practice of Eastern Medicine」(2009年登録。1613年に朝鮮で編まれた医学の百科)