この記事でわかること
- 甘酒は料理のどんな時に使う?
- 甘さを足す煮物・たれ・和え衣と、肉や魚の漬け床
- 砂糖大さじ1を甘酒に替えたい
- ストレートの甘酒で約70〜80g。2倍では甘さが足りない
- みりんの代わりに使いたい
- 糖の量で約2.4倍。増えた水の分だけだしを減らす
- 甘酒で漬けたら味がぼやけた
- 塩がほぼ入っていない。食材の重さの1%前後の塩を足す
- 甘酒で肉を柔らかくしたい
- 加熱殺菌していない冷蔵品か自家製を使い、塩も足す
砂糖の代わりに甘酒を2倍入れたら、煮物がほとんど甘くならなかった。甘酒に鶏肉を漬けて焼いたら、甘いのに味がぼやけていた。みりんの代わりに入れたら、煮汁が白く濁って量が増えた。
どれも、甘酒が何を持ち込み、何を持ち込まないかで説明がつきます。
この記事が扱うのは、麹調味料のうち、塩を含まない甘酒を調味料に使うときです。何に使い、砂糖・みりんと何が違い、どれだけ入れるかを書きます。
塩を含む塩麹の量と漬け時間は塩麹の量と漬け時間、漬けると何が起きるかと焼くときの注意は麹調味料の使い方まとめにあります。
甘酒は、甘さを足したい漬け床・煮物・和え衣・焼き物に使う
砂糖やみりんの代わりに、甘さを足したいときに使います。料理によって、甘酒のどの働きが効くかが変わります。
| 使う場面 | 甘酒で効くもの | 足すもの・気をつけること |
|---|---|---|
| 肉や魚を漬ける | 甘味と、加熱殺菌していなければ酵素 | 食材の重さの1%前後の塩。冷蔵で漬ける |
| 煮物・たれ | 甘味だけ | 甘酒の水の分だけだしを減らす。濁りが気になるならミキサーにかける |
| 和え衣・ドレッシング | 甘味。非加熱の甘酒なら酵素も残る | 塩・醤油・味噌・酢で味をつける |
| 焼き物・照り焼き | 甘味と焼き色 | 砂糖より早く色づくので中火以下。たれは仕上げに絡める |
甘酒が入れるのは甘味と酵素だけ。塩は自分で足す
| 100gあたり | 砂糖(上白糖) | 本みりん | 甘酒(そのまま飲む濃さ) | 塩麹 |
|---|---|---|---|---|
| 糖(炭水化物、g) | 99.3 | 43.2 | 18.3 | 約22(還元糖) |
| 主な糖 | ショ糖 | 麹が作った糖 | ブドウ糖 | 麹が作った糖 |
| 水(g) | 0.7 | 47.0 | 79.7 | ― |
| アルコール(g) | 0 | 9.5 | 0 | 0 |
| 食塩(g) | 0 | 0 | 0.2 | 8〜13 |
| 麹の酵素 | 無い | 無い | 加熱殺菌していなければ残る | 製品による |
出典: 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(甘酒は、し好飲料類の値)、倉橋(2019)、前橋ほか(2015)の市販塩麹14製品(食塩は多くの製品の幅、糖は平均21.9%)。
本みりんの糖の内訳を量った資料は見つかりませんでした。
甘酒と塩麹は、同じ米麹から作ります。違いは塩を入れるかどうかです。塩麹は塩味と酵素を一緒に入れ、甘酒は甘味と酵素だけを入れます。だから甘酒を使うときは、甘さの量と塩の量を別々に量って入れます。
調味料に使うのは、米麹と米(または米麹だけ)と水で作る米麹の甘酒です。酒粕を砂糖で甘くした酒粕甘酒は、甘さが砂糖から来ていて、この記事の数字は当てはまりません。
砂糖の代わりにするなら、甘酒は重さで約8倍が要る
甘酒の糖はブドウ糖で、砂糖より甘さが弱い
甘酒の甘さは、麹の酵素が米のデンプンを切ってできたブドウ糖です。麹だけで仕込んだ甘酒を量った例では、100gあたりブドウ糖が15.9gでした。ほかにオリゴ糖が合わせて約3%入っています。
ブドウ糖の甘さは、砂糖の約60〜70%です(砂糖の成分と糖類の違い)。同じ重さの糖でも、ブドウ糖は砂糖より甘く感じません。
砂糖大さじ1の甘さには、ストレートの甘酒で約70〜80g
そのまま飲む濃さの甘酒(ストレートタイプ)100gに入っている糖は18.3gで、甘さに直すと砂糖約11〜13g分です。
| 置き換える砂糖 | 同じ甘さにするストレートの甘酒 | 甘酒に入っている水 |
|---|---|---|
| 大さじ1(9g) | 約70〜80g | 約56〜64g |
| 小さじ1(3g) | 約25g | 約20g |
| 大さじ2(18g) | 約140〜160g | 約110〜130g |
出典: 計算した値。甘酒の糖と水は日本食品標準成分表(八訂)、ブドウ糖の甘さを砂糖の60〜70%として出しています。
式にすると次のとおりです。
甘酒の量(g)= 砂糖の量(g)× 100 ÷(甘酒100gあたりの炭水化物(g)× 0.65)
砂糖9gをストレートの甘酒で置き換えるなら、9×100÷(18.3×0.65)で約76gです。甘酒を入れた鍋は、量が増えて白っぽく濁ります。作るたびに味見をして、次の量を調整します。
「2倍」は濃縮タイプの話。袋の炭水化物で量を出す
「砂糖の2倍」という目安がありますが、ストレートの甘酒を2倍入れると、甘さは砂糖の4分の1ほどにしかなりません。
甘酒には、水を少なく仕込んだ濃縮タイプと、水を多く仕込んだストレートタイプがあります。濃縮タイプは糖が濃いので、同じ甘さに要る量は少なくなります。
袋の栄養成分表示の炭水化物を甘酒の量の式に入れれば、手元の甘酒で量が出ます。表示が1本あたりなら、内容量で割って100gあたりに直します。
みりんとの違いは水とアルコール。糖の量で約2.4倍
本みりんも、麹がもち米を糖にしたもの
本みりんは、もち米と米麹を焼酎かアルコールに仕込み、20〜30℃で30〜60日かけて糖化・熟成させます。糖は45%前後、アルコールは14%程度です。
甘酒と同じく、甘さは麹の酵素がデンプンを切ってできた糖です。違うのは、水の代わりに焼酎やアルコールで仕込むので、糖が濃く、アルコールが入っていることです。
本みりん大さじ1(18g)の糖は約7.8gです。同じ糖の量を甘酒で入れるなら約43gで、重さで約2.4倍になります。
甘酒は水が多く、アルコールが無い
本みりんは水が半分ほどですが、甘酒は約8割が水です。本みりん大さじ1を甘酒43gに替えると、水が約25g増えます。煮物なら、その分だけだしを減らします。
甘酒にはアルコールが入っていないので、煮切ってアルコールを飛ばす手間はありません。一方で、本みりんのアルコールが担っていた働き(香りや、魚の生臭さを抑えるとされる働き)は甘酒には期待できません。
魚の煮付けのように生臭さが気になる料理では、甘さの半分を甘酒にし、残りを本みりんのままにします。
甘酒の米の粒は、煮汁を白く濁らせます。濁りや粒が気になる料理では、ミキサーにかけてなめらかにしてから入れます。
塩が入っていないので、塩は別に足す
漬けるなら、食材の重さの1%前後の塩を足す
甘酒100gに入っている食塩は0.2gです。肉300gに甘酒30g(重さの10%)を使っても、入る塩は0.06gで、下味にはなりません。
甘酒とは別に、食材の重さの1%前後の塩を加えます(肉に塩を振るときの目安は0.5〜1.5%。肉に塩を振るタイミングと科学)。肉300gなら塩3g、濃口醤油なら大さじ1強(約21g)です。
漬ける時間は、塩が中まで届く時間で見ます。塩麹と同じく冷蔵で、薄切り肉なら30分程度、厚切り肉なら2時間〜1日程度です(塩麹の量と漬け時間)。焼いた端を切って中心の味を見て、薄ければ次は時間を延ばします。
塩を足さないと、焼いてもしっとりしない
豚ロースをいろいろな漬け床に冷蔵で一晩漬けて加熱した試験では、塩を含む漬け床は、含まない漬け床より加熱で減った重さが平均で約6%少なくなりました。
食べ比べでは、塩麹に漬けた肉は甘酒に漬けた肉より柔らかく、ジューシーと評価されました。塩水だけで漬けた肉も、甘酒より柔らかいと評価されています。
甘酒だけで漬けた肉は、甘味は入っても、しっとりさせる塩が入っていません。
酵素が残っているかは、加熱殺菌したかで決まる
加熱殺菌した甘酒では、酵素が止まっていることがある
麹の酵素は熱に弱く、塩麹を温度ごとに保った試験では、50℃と60℃では6時間たってもほぼ残り、70℃ではタンパク質を切る酵素が2時間でほぼ止まりました。
甘酒を55〜60℃で作るのは、酵素が働き続ける温度に保つためです(糊化×酵素の科学)。できた甘酒をひと煮立ちさせる火入れをすると、酵素は止まります。売るために加熱殺菌した製品も、酵素が残っていないことがあります。
加熱殺菌した甘酒は、甘味料として働きます。酵素の働きも使いたいなら、加熱殺菌していない冷蔵品か、自分で仕込んだ甘酒を使います。
塩が無いぶん、タンパク質を切る働きは塩麹より進む
同じ麹を、塩を入れるかどうかだけ変えて60℃で仕込んだ試験では、6時間でできたアミノ酸は甘酒のほうが塩麹の約1.5倍でした。麹のタンパク質を切る酵素は塩で働きが抑えられ、塩10%の中では約65%に落ちます。
デンプンを切る酵素の残り方も違いました。60℃で24時間置くと、塩麹では止まり、甘酒では約30%残りました。
酵素の働きだけを比べれば、甘酒のほうが進みます。ただし柔らかさとしっとり感は塩が支えるので、甘酒で漬けるなら塩を足します。
煮る・焼く料理では、酵素は甘酒の中で止まる
煮物やたれのように沸かす料理では、甘酒の酵素は鍋の中ですぐ70℃を超えて止まります。この使い方では、甘酒は甘味料としてだけ働きます。
酵素が食材に働くのは、加熱する前に冷蔵で漬けている間だけです。
焼き物とたれは、色づきの早さと水の多さに気をつける
甘酒は、砂糖より早く焼き色がつく
焼き色と香ばしさは、糖とアミノ酸が熱で反応してできます(メイラード反応の科学)。甘酒のブドウ糖はアミノ酸とそのまま反応しやすい糖で、砂糖(ショ糖)はそのままでは反応が遅い糖です。
甘酒で漬けた肉や、甘酒を入れたたれは、砂糖のたれと同じ火加減では早く色づきます。表面の甘酒を拭い、中火以下で焼きます。焼き色がついたら蓋をして、中まで火を通します。
韓国の조청(ジョチョン、米飴)は、先に煮詰めて水を飛ばしている
韓国では、米を麦芽(엿기름、ヨッキルム)で糖化した식혜(シッケ)を煮詰めて、조청という飴にします。조청は煮物(조림、ジョリム)などの甘味に使われます。
甘酒と同じく、米のデンプンを酵素で糖にした甘味料です。違うのは、酵素の出どころが麹ではなく麦芽であることと、使う前に水を飛ばしていることです。
甘酒の弱点は水の多さです。たれに使うなら、甘酒を小鍋で半分ほどになるまで煮詰めてから入れると、煮汁が薄まりません。煮詰めると酵素は止まり、焦げやすくなるので、弱火でかき混ぜながら煮詰めます。
うまくいかせる条件
| 条件 | 外すとどうなるか |
|---|---|
| 米麹の甘酒を使う | 酒粕甘酒では甘さが砂糖から来るので、量も働きも変わる |
| 量は袋の炭水化物から出す(ストレートなら砂糖の約8倍) | 2倍では甘さが足りない |
| 甘酒の水の分だけ、だしや水を減らす | 煮汁が薄く、水っぽくなる |
| 漬けるなら、食材の重さの1%前後の塩を別に足す | 下味がつかず、焼くと汁が出る |
| 酵素を使うなら、加熱殺菌していない甘酒を冷蔵で漬ける | 柔らかくならない |
| 焼くときは中火以下で、たれは仕上げに絡める | 中より先に表面が黒くなる |
よくある失敗と対策
甘くならない回復できる
- なぜ
- 砂糖の2倍の甘酒で置き換えました。甘酒は糖が約18%で、ブドウ糖は砂糖より甘さが弱く、2倍では約4分の1の甘さです
- どうする
- 甘酒を足すと水っぽくなるので、足りない分は砂糖かみりんで補います
- 次から
- 砂糖の重さの約8倍(砂糖9gに甘酒70〜80g)を目安にするか、甘さの半分だけを甘酒に替えます
水っぽい・ゆるい回復できる
- なぜ
- 甘酒は重さの約8割が水です。砂糖の代わりに70〜80g入れると、だしを大さじ4ほど足したのと同じになります
- どうする
- 蓋を外して煮詰め、煮汁を減らします
- 次から
- 甘酒に入っている水の分(甘酒の重さの約8割)だけ、だしや水を減らしてから煮ます
味が薄い・ぼやけた回復できる
- なぜ
- 甘酒の食塩は100gあたり0.2gです。甘酒だけで漬けると甘味は入りますが、下味がつきません
- どうする
- 焼き上がりに塩か醤油で味を足します
- 次から
- 甘酒で漬けるときは、食材の重さの1%前後の塩を別に加えます
肉が固くなった諦める
- なぜ
- 加熱殺菌した甘酒で酵素が止まっていたか、塩を足さず、焼いたときに汁が多く出ました
- どうする
- 焼いた後は戻せません。薄く切って、たれと合わせて食べます
- 次から
- 加熱殺菌していない冷蔵品か自家製の甘酒を使い、食材の重さの1%前後の塩を足して冷蔵で漬けます
表面が焦げた部分的
- なぜ
- 甘酒のブドウ糖は砂糖(ショ糖)より早くアミノ酸と反応して色づき、中より先に表面が黒くなりました
- どうする
- 焦げた部分をこそげ、火を弱めて蓋をし、中まで火を通します
- 次から
- 表面の甘酒を拭い、中火以下で焼きます。照り焼きのたれは火を止める直前に絡めます
甘酒は、甘さと塩を別々に量って使う
- 甘酒の糖はブドウ糖で、砂糖より甘さが弱く、水が約8割です。砂糖と同じ甘さには、ストレートの甘酒で重さの約8倍(砂糖9gに70〜80g)が要ります
- 本みりんとの違いは、糖の濃さ(甘酒の約2.4倍)とアルコールです。甘酒に替えたら、増えた水の分だけだしを減らします
- 甘酒には塩がほとんど入っていません。漬けるなら食材の重さの1%前後の塩を足します。酵素を使いたいなら、加熱殺菌していない甘酒を使います
参考文献
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」甘酒|100gあたりの水分・炭水化物・食塩相当量について
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」本みりん|100gあたりの水分・炭水化物・アルコールについて
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」上白糖|100gあたりの水分・炭水化物について
ほか8件を見る
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」こいくちしょうゆ|100gあたりの食塩相当量について
- 国税庁「本みりんの歴史」|本みりんの原料と製法、糖分とアルコール分について
- 倉橋敦「麴甘酒の成分・機能性・安全性」生物工学 97(4) 190-194(2019)|麹甘酒の糖組成(グルコース・オリゴ糖)、麹甘酒と酒粕甘酒の違い、濃縮タイプとストレートタイプについて
- 前橋健二「塩麹の調味特性」日本海水学会誌 71(4) 232-239(2017)|塩麹と甘酒を同じ条件で仕込んだときのアミノ酸のでき方と酵素の残り方、食塩による酵素の阻害について
- 前橋健二ほか「塩麹製造での熟成温度が残存酵素活性に及ぼす影響」日本食品科学工学会誌 62(6) 290-296(2015)|50・60・70℃で保ったときの麹の酵素の残り方について
- 阿部真紀・秋田修「塩麹に含まれる麹由来酵素および食塩の食肉調理への効果」日本醸造協会誌 114(5) 258-267(2019)|塩を含む漬け床と含まない漬け床(甘酒)の加熱損失と食べ比べについて
- 中久喜輝夫「でん粉から作られる糖化製品の現状と将来」農畜産業振興機構 砂糖類・でん粉情報|ブドウ糖の甘味度が砂糖の約60〜70%であることについて
- 農村振興庁 농사로「조청 만들기」|엿기름で米を糖化した식혜を煮詰めて조청にする製法について