塩麹漬けの焼き方|糖で早く色づくので、拭って中火以下で中まで焼く

塩麹漬けの焼き方|糖で早く色づくので、拭って中火以下で中まで焼く

この記事でわかること

塩麹に漬けた肉の焼き方
表面の麹を拭い、中火以下。色づいたら蓋で中まで
塩麹で焼くとすぐ焦げる
重さの約2割が糖。焼き色が普段より早くつく
拭き取ると効果が落ちる?
落ちない。下味と柔らかさは漬けている間に中へ入る
塩麹の唐揚げは何℃で揚げる
160℃前後。仕上げの高温は色を見て短く

塩麹に漬けた鶏もも肉を、いつもの火加減で焼きました。皮はすぐに黒い点だらけになり、切ると中はまだ赤い。

塩麹に漬けた食材は、焼き色の材料を表面にまとっています。だから普段の火加減と、普段の焼き色の目安が通じません。

この記事では、麹調味料に漬けた肉や魚に火を入れる段階を扱います。焦げる理由、酵素が止まる温度、拭くかどうか、加熱の仕方ごとの火加減と順番です。

何gをどれだけ漬けるかは塩麹の量と漬け時間、漬けている間に何が起きるかと甘酒の使い方は麹調味料の使い方まとめにあります。

焼くなら拭って中火以下。煮るなら拭わない

加熱の仕方表面の麹火加減・温度順番
フライパン拭う中火以下片面がうっすら色づいたら裏返し、蓋をして弱めの中火で中まで
魚焼きグリル・オーブン拭う普段どおり色づいたらアルミホイルをかぶせて中まで
揚げる拭ってから粉をまぶす油は160℃前後仕上げに油の温度を上げるなら、色を見て短く
煮る拭わない普段どおり麹ごと煮汁の味にし、醤油や塩を減らす
低温調理麹ごと袋へ。焼く前に拭う湯の温度は普段どおり焼き目をつけるなら最後に高温で短く

フライパンの火加減は恵那市の献立資料、揚げ油を低めにするのは佐倉市の学校給食資料によります。160℃は揚げ油の低温帯の値です。

厚いものほど、色がつくのと中に火が通るのとの差が開きます。色が先についてしまうので、色づいたあとは蓋やアルミホイルをかぶせ、中に火が通るまで加熱を続けます。

焦げやすいのは、焼き色の材料が表面に塗ってあるから

塩麹は重さの約2割が、焼き色になりやすい糖

焼き色と香ばしさは、糖とアミノ酸が熱で反応してできます(メイラード反応の科学)。

市販の塩麹14製品を調べた研究では、還元糖(アミノ酸と反応しやすい糖)が平均21.9%ありました。麹の酵素が米のでんぷんを切ってできたブドウ糖などです。

砂糖(ショ糖)は、そのままでは反応が遅い糖です。塩麹の糖は、最初から反応しやすい形で表面にのっています。

反応の相手のアミノ酸も、麹の酵素が作って表面に残しています。材料が両方そろっているので、普段の肉より低い火加減で色がつきます。

麹の粒は薄いので、肉より先に乾いて熱くなる

表面が濡れている間は、水が蒸発して熱を奪うので、表面は100℃より上がりません(水分管理と焼き色の関係)。焼き色がつき始めるのは140〜150℃、190℃を超えると黒く焦げて苦くなります。

麹の粒は薄く、肉から浮いています。肉より先に水が飛び、先に140℃を超え、先に190℃に届きます。焼いている途中に出る黒い点は、まずこの粒です。

味噌漬けを拭って焼くのも、同じ理由

西京焼きのような味噌漬けの魚も、焼く前に味噌をぬぐいます(西京味噌)。味噌も糖とアミノ酸を含む漬け床で、焦げる理由は塩麹と同じです。

違うのは糖の量です。塩麹の塩分は辛口の味噌とほぼ同じですが、還元糖はおよそ2倍あります。味噌漬けと同じ感覚で焼くと、焼き色の材料が多い分、塩麹のほうが早く色づきやすくなります。

酵素は60℃までは残り、70℃で止まる

酵素が止まる温度と、焼き色がつく温度は離れている0℃50℃100℃150℃200℃冷蔵で漬ける50〜60℃酵素はほぼ残る(低温調理の温度)酵素が止まる70℃〜焼き色がつく140〜150℃で始まる焦げ煮る(100℃まで。焼き色はほとんどつかない)焼く・揚げるときの表面酵素は塩麹を各温度で保った試験(前橋ほか 2015)。焼き色の温度はメイラード反応の一般的な目安
焼く表面は焼き色がつくずっと手前で酵素の止まる温度を越える。柔らかさは焼く前に作るもの

50〜60℃では、6時間たっても酵素が残る

米麹を塩水と合わせた塩麹を温度ごとに保った試験では、50℃と60℃では6時間たっても酵素がほぼ残っていました。70℃ではタンパク質を切る酵素が2時間でほぼ止まりました。塩を抜いた麹の抽出液では、70℃で30分保つとほぼ止まりました。

塩には、タンパク質を切る酵素を熱に強くする働きもあります。

60℃と70℃の間で何℃から止まるかは、この試験では調べられていません。60℃を超えたら止まり始め、70℃ではほぼ止まる、と見ておけば外しません。

焼くと表面はすぐ70℃を超え、酵素はそこで止まる

フライパンや網に触れた面は、焼き色がつく140℃に届くずっと前に70℃を超えます。焼き色がついた時点で、表面の酵素はもう働いていません。

中心も、鶏もも肉なら70〜75℃まで上げます(鶏肉の火入れ)。焼き時間を延ばしても、酵素の分の柔らかさは増えません。延ばした分だけタンパク質が縮み、硬くなります。柔らかさは、漬けている間に作るものです。

低温調理の58〜60℃では、加熱中も酵素が止まらない

鶏むね肉の低温調理は58〜60℃で、厚さ25mmなら58℃で2¼時間です。

残る菌は、新鮮なものを買ってすぐ冷蔵し、増える前に加熱して減らします。子どもや高齢者、妊娠中の人、体調の悪い人に出すときは、安全を優先して中心63℃で30分、または75℃で1分にします(鶏肉の火入れ)。

58〜60℃は、塩麹の酵素が6時間たってもほぼ残る温度の中に入ります。焼く場合と違い、袋の中では加熱している間も酵素が残っています。

焼いている間に酵素が止まるのは、焼く・揚げる・煮るのように、食材が70℃を超える加熱のときです。

表面の麹を拭っても、下味と柔らかさは残る

下味と柔らかさは、漬けている間に中へ入っている

塩と酵素の働きは、漬けている間に食材の中へ入っています。豚ロースを塩麹に冷蔵で一晩漬けた試験では、肉の中のうま味のアミノ酸が約2.4倍に増え、塩を含む漬け床に漬けた肉は焼いたときに出ていく汁が約6%少なくなりました。

どちらも肉の中で起きた変化で、表面の麹を拭っても消えません。

塩麹に漬けた豚ロースを拭ってから焼いた試食でも、酵素の多い塩麹ほど柔らかいと評価されました。拭っても、酵素が作った柔らかさは残ります。

拭って落ちるのは、表面の粒と甘味・塩味の一部

拭って落ちるのは、表面の粒と、表面についた甘味と塩味の一部です。

  • 指かキッチンペーパーで、粒が残らない程度にぬぐう
  • 水で洗わない。表面が濡れると100℃より上がらず、焼き色がつきにくくなる

加熱の仕方ごとに、火加減と順番を変える

フライパンは、うっすら色づいたら蓋をして弱める

中火で片面を焼き、うっすら色がついたら裏返します。そこで蓋をして弱めの中火にし、蒸し焼きで中まで火を通します。

焼き色は普段より早く、低い火でつきます。いつもの焼き色を待つと、そのときには表面が焦げ始めています。色が薄い茶色になった時点で火を弱めます。

鶏もも1枚より厚い肉は、表面の色と中の火の通りの差がさらに開きます。先に弱火と蓋で中まで火を通し、最後に火を強めて表面に色をつける順番にすると、表面が焦げる前に中が仕上がります。

魚焼きグリルとオーブンは、色づいたら覆う

グリルとオーブンは上からも熱が来るので、表面の麹は真っ先に焦げます。拭ってから入れ、色がついたらアルミホイルをかぶせて、中に火が通るまで焼き続けます。

黒い点が出始めたら、覆うか火から離す合図です。

揚げるなら、油は160℃前後

唐揚げは中温の170℃で揚げることが多いですが、塩麹に漬けた鶏肉は焦げやすいので、低めの160℃前後で揚げます(揚げ物の油温)。温度計が無ければ、乾いた菜箸の先を油に入れ、小さな泡がゆっくり出る状態が150〜160℃です。

表面の麹を拭ってから粉をまぶすと、粒が衣の外に出ず、焦げる点が減ります。二度揚げで仕上げに油を180℃に上げるなら、色を見ながら短くします。

煮るなら拭わず、麹を煮汁の味にする

煮汁の中は100℃より上がらないので、焼き色はほとんどつかず、麹は焦げません。拭う理由がありません。

麹は煮汁に溶けて、塩味と甘味とうま味になります。その分、煮汁に入れる醤油や塩を減らします。煮詰めて汁が少なくなると、鍋底では100℃を超えて焦げ始めるので、煮詰める料理は火を弱めます。

低温調理は麹ごと袋に入れ、焼く前に拭う

袋の中は60℃前後なので、麹は焦げません。麹ごと袋に入れて加熱してかまいません。

焦げるのは、低温調理のあとに表面を焼くときです。袋から出したら表面の麹を拭い、高温で短く焼き目をつけます。

塩麹を使った低温調理の実例は低温調理の鶏ハムの「塩麹鶏ハム」にあります。

この焼き方が効かないとき

焼き方で変えられるのは、焦げと火の通りだけです。次の2つは焼き方では直りません。

  • 酵素が残っていない塩麹では、どう焼いても柔らかくなりません。市販14製品のうち5製品では、タンパク質を切る酵素が検出されませんでした
  • 塩辛いのは、使った量と製品の塩分の問題です。量の出し方は塩麹の量と漬け時間にあります

うまくいかせる条件

条件外すとどうなるか
焼く前に表面の麹を拭う粒が先に黒くなり、苦味が出る
色がつき始めたら火を弱めて蓋をするいつもの焼き色を待つと、表面が焦げて中が生
厚い肉は中に火を通してから、最後に色をつける色が先につき、中が仕上がる前に焦げる
揚げ油は160℃前後中に火が通る前に表面が焦げる
麹ごと煮るなら、醤油や塩を減らす煮汁が塩辛くなる

よくある失敗と対策

表面が焦げた部分的
なぜ
表面に残った麹の粒は肉より先に水が飛んで熱くなり、メイラード反応が炭化まで進みます。強めの中火だと中より先に黒くなります
どうする
黒い粒をこそげ落とし、火を弱めて蓋をし、中まで火を通します
次から
焼く前に表面の麹を指かキッチンペーパーで拭い、中火以下で焼きます
中が生だった回復できる
なぜ
焼き色を見て下ろしました。塩麹に漬けた肉は表面の糖で普段より早く色づくので、いつもの色の時点では中が生のことがあります
どうする
蓋をして弱火に戻すか、切り分けてから断面を焼きます
次から
色づき始めたら火を弱めて蓋をし、色ではなく中心の温度か、切った断面で火の通りを見ます
肉が固くなった諦める
なぜ
焼き時間を延ばして柔らかくしようとしました。麹の酵素は70℃で止まるので焼いても柔らかくならず、火を通しすぎた分だけ硬くなります
どうする
焼いた後は戻せません。薄く切って、たれやソースと合わせて食べます
次から
柔らかさは漬けている間に作ります。焼くのは中心が火の通る温度に届くまでにします
味が濃い・塩辛い回復できる
なぜ
塩麹に漬けた肉を拭わずに煮て、溶け出した塩麹の塩に加えて、いつもと同じ量の醤油や塩を入れました
どうする
水かだしを足して煮汁を薄めます
次から
麹ごと煮るときは、煮汁に入れる醤油や塩を減らし、味を見てから足します

柔らかさは漬けている間に作り、焼くときは焦がさない

  • 塩麹は重さの約2割が糖で、焼き色が普段より早く、低い火でつきます。焼く前に表面の麹を拭い、中火以下で焼きます
  • 酵素は60℃までは残り、70℃で止まります。焼き時間を延ばしても柔らかくはならず、柔らかさは漬けている間に作ります
  • 色づいたら蓋やアルミホイルで中に火を通します。煮るなら拭わずに麹を煮汁の味にし、醤油や塩を減らします