中国醤油の等級|特級・一級の品質差と「王」の意味・ラベルの読み方

中華料理

中国醤油の品質は、国家標準(GB/T 18186)に基づく等級制度で格付けされています。等級の中心指標はアミノ酸態窒素(g/100mL)であり、この値が高いほど遊離アミノ酸が豊富、つまり旨味が強いことを意味します。

本記事では、4段階の等級制度の仕組み、製造段階(一抽・二抽・三抽)との関係、「王」の意味、そして日本のJAS等級との比較を解説します。

目次

中国の等級制度(GB/T 18186)

国家標準の概要

GB/T 18186は、中国の醸造醤油に適用される国家標準(推奨標準)です。2000年に制定され、その後改訂を経て、醸造醤油の品質基準を定めています。

項目内容
規格名GB/T 18186(醸造醤油)
対象大豆・小麦を原料とした醸造醤油
等級数4段階(特級・一級・二級・三級)
中心指標アミノ酸態窒素(g/100mL)
その他の指標全窒素、可溶性無塩固形物

2つの醸造法

GB/T 18186は、醸造法によって2つのカテゴリに分けられます。

醸造法中国語特徴代表的な産地
高塩液態法高盐稀态塩水で仕込む液体発酵。日本の本醸造に近い広東、香港
低塩固態法低盐固态塩分を抑えた固体発酵。発酵期間が短い中国内陸部

高塩液態法は発酵期間が長く(4〜6ヶ月以上)、風味が複雑で品質が高い傾向にあります。日本で流通している広東系の醤油(李錦記、海天、珠江橋など)は主にこの方法で作られています。

品質指標の一覧

等級を決定する主な品質指標は以下のとおりです。

指標意味測定対象
アミノ酸態窒素遊離アミノ酸由来の窒素量旨味の強さ
全窒素全窒素化合物の総量タンパク質分解の程度
可溶性無塩固形物塩分を除いた溶存成分の総量エキス分の豊富さ

このうち、等級の決定に最も直結するのがアミノ酸態窒素です。

アミノ酸態窒素とは

定義

アミノ酸態窒素とは、醤油中の遊離アミノ酸に含まれる窒素の量(g/100mL)です。大豆のタンパク質が発酵中に麹菌の酵素で分解されると、遊離アミノ酸が生成されます。アミノ酸はすべて窒素を含んでいるため、アミノ酸態窒素の値が高い=遊離アミノ酸が多い=旨味が強い、という関係が成り立ちます。

日本の「全窒素分」との違い

日本のJAS規格では「全窒素分」(醤油中のすべての窒素化合物の量)を品質指標としています。中国のアミノ酸態窒素は、全窒素のうち遊離アミノ酸由来の窒素のみを測定するため、旨味の強さをより直接的に反映します。

指標測定対象採用国旨味との相関
アミノ酸態窒素遊離アミノ酸由来の窒素のみ中国高い(直接的)
全窒素分全窒素化合物(アミノ酸+ペプチド+タンパク質)日本中程度(間接的)

4段階の等級

GB/T 18186では、アミノ酸態窒素を中心に4段階の等級が定められています。

等級一覧

等級アミノ酸態窒素(g/100mL)品質レベル味の特徴
特級≥0.80最高品質旨味が強く、香りが豊か。バランスの取れた深い味わい
一級≥0.70高品質十分な旨味があり、日常の高品質な料理に適する
二級≥0.55標準品質標準的な旨味。一般的な家庭料理に十分
三級≥0.40最低品質最低限の旨味。煮込み料理や大量調理向き

特級(≥0.80 g/100mL)

特級は国家標準における最高等級です。アミノ酸態窒素≥0.80 g/100mLは「十分に発酵が進み、タンパク質が遊離アミノ酸に効率的に分解された醤油」であることを示します。

ただし、0.80 g/100mLはあくまで特級の下限値です。プレミアム製品は特級の基準を大きく超える値を持つことがあります。なお、アミノ酸態窒素が高い製品のすべてが純粋な発酵由来とは限りません。味極鮮のように、MSG(グルタミン酸ナトリウム)や核酸系調味料を添加することでアミノ酸態窒素を人工的に高めている製品もあります。等級の数値だけでなく、原材料表示も併せて確認することが重要です。

製品例アミノ酸態窒素等級
一般的な特級生抽0.80〜1.0 g/100mL特級
頭抽(一番搾り)≥1.0 g/100mL特級(大幅超過)
味極鮮≥1.2 g/100mL特級(大幅超過)
生抽王≥1.0 g/100mL特級(大幅超過)

一級(≥0.70 g/100mL)

一級は高品質の醤油で、日常使いとしては十分な旨味を持っています。名の知れたブランドの標準ラインは、多くが一級以上の品質です。

二級(≥0.55 g/100mL)

二級は標準的な品質です。一般的な家庭料理に十分使える品質ですが、つけダレや仕上げの用途では旨味が物足りなく感じることがあります。炒め物や煮込み料理などの加熱調理に適しています。

三級(≥0.40 g/100mL)

三級はGB/T 18186の最低基準を満たす等級です。旨味は控えめですが、大量調理や他の調味料と組み合わせる場面では十分に機能します。0.40 g/100mL未満の製品は、この国家標準の適用外となります。

製造段階との関係

搾りの段階と等級の傾向

中国醤油の製造では、発酵した諸味を複数回にわたって圧搾します。搾りの段階が進むほどアミノ酸態窒素は低下し、等級も下がる傾向にあります。

製造段階名称ラベル表記アミノ酸態窒素の傾向該当しやすい等級
第1搾り頭抽 / 一抽頭抽≥1.0 g/100mL特級(大幅超過)
第2搾り二抽金標(Gold Label)0.80〜1.0 g/100mL特級〜一級
第3搾り三抽銀標(Silver Label)0.55〜0.80 g/100mL一級〜二級
第4搾り以降四抽以降表示なし0.40〜0.55 g/100mL二級〜三級

ブレンドによる等級調整

実際の製品は、複数段階の搾り液をブレンドして作られることがほとんどです。ブレンド比率を変えることで、目標とする等級に合わせたアミノ酸態窒素を実現します。

  • 特級製品:頭抽(第1搾り)の比率を高くする
  • 一級製品:第1搾りと第2搾りをバランスよく配合
  • 二級・三級製品:第2搾り以降の比率が高い

つまり、等級の高い醤油ほど、より早い段階の搾り液が多く含まれています。

「王」の意味

「王」はマーケティング用語

中国醤油のラベルでよく見かける「王」(ワン)は、GB/T 18186の公式等級ではありません。「王」は「King」「プレミアム」を意味するマーケティング上の表記で、各メーカーが自社の高級ラインを差別化するために使用しています。

「王」が付く主な製品

製品名意味アミノ酸態窒素特徴
生抽王生抽のプレミアム品≥1.0〜1.2 g/100mL旨味が強く、香り豊か
老抽王老抽のプレミアム品基準は老抽規格に準拠照りが美しく、カラメルの質が高い
醤油王醤油のプレミアム品≥1.0 g/100mL以上メーカーの最高級ライン

「王」と等級の関係

「王」が付く製品は通常、特級を満たした上でさらに高い品質を持っています。しかし、「王」の基準はメーカーごとに異なり、統一規格はありません。

三級 → 二級 → 一級 → 特級(ここまでGB/T 18186)→ 「王」(メーカー独自)

日本のJAS等級との比較

等級制度の比較表

項目中国(GB/T 18186)日本(JAS)
中心指標アミノ酸態窒素(g/100mL)全窒素分(g/100mL)
指標の特性遊離アミノ酸のみ測定全窒素化合物を測定
旨味との相関高い(直接的)中程度(間接的)
等級数4段階(特級・一級・二級・三級)3段階(特級・上級・標準)
最高等級の基準特級 ≥0.80 g/100mL特級(濃口 ≥1.50 g/100mL)
最低等級の基準三級 ≥0.40 g/100mL標準(濃口 ≥1.20 g/100mL)
公式上位等級なしなし
非公式上位等級「王」(メーカー独自)特選・超特選(日本醤油協会推奨)
醸造法の区分高塩液態法 / 低塩固態法本醸造 / 混合醸造 / 混合

注意:数値の単純比較はできない

中国のアミノ酸態窒素と日本の全窒素分は測定対象が異なるため、数値を直接比較することはできません。

  • 中国の特級(アミノ酸態窒素 ≥0.80 g/100mL)
  • 日本の特級(全窒素分 ≥1.50 g/100mL、濃口の場合)

全窒素分にはペプチドやタンパク質由来の窒素も含まれるため、アミノ酸態窒素より常に大きい値になります。「0.80 < 1.50 だから中国醤油は品質が低い」という解釈は誤りです。

上位等級の考え方

中国日本
公式の最高等級特級特級
公式を超える区分なし(国家標準の範囲外)特選(特級の1.1倍)、超特選(特級の1.2倍)
非公式のプレミアム表記「王」「頭抽」など―(特選・超特選が準公式)

日本の特選・超特選は日本醤油協会という業界団体の推奨表示基準であり、JAS規格そのものではありませんが、基準が明確で統一されています。一方、中国の「王」はメーカーごとに基準が異なります。

ラベルの読み方

実際のラベルで確認すべきポイント

中国醤油のラベルを読む際、品質を判断するために以下の項目を確認します。

確認項目ラベル表記見るべきポイント
等級特级 / 一级 / 二级 / 三级特級(特级)が最高品質
アミノ酸態窒素氨基酸态氮 ≥X.XX g/100mL数値が高いほど旨味が強い。≥0.80で特級
醸造法高盐稀态 / 低盐固态高塩液態法のほうが品質が高い傾向
原材料配料:大豆、小麦、食塩、水シンプルなほど良い
添加物谷氨酸钠(MSG)、焦糖色 等旨味や色の人為的な調整の有無
国家標準GB/T 18186この表記があれば醸造醤油
プレミアム表記王 / 头抽 / 金标 / 双璜メーカー独自のプレミアム指標

等級表示の優先順位

醤油を選ぶ際は、以下の優先順位で品質を判断します。

  1. アミノ酸態窒素の数値:最も客観的な指標(≥1.0なら非常に高品質)
  2. 等級表示:特級 > 一級 > 二級 > 三級
  3. 醸造法:高塩液態法 > 低塩固態法
  4. プレミアム表記:「頭抽」「王」は高品質の目安(ただしメーカー基準)
  5. 原材料:添加物が少ないほど自然な発酵の品質を反映

まとめ

中国醤油の等級制度は、アミノ酸態窒素を中心指標とした4段階の格付け(特級・一級・二級・三級)であり、旨味の強さを客観的に比較できる仕組みです。

重要なポイント

  • 4段階の等級:特級(≥0.80)> 一級(≥0.70)> 二級(≥0.55)> 三級(≥0.40 g/100mL)
  • アミノ酸態窒素:遊離アミノ酸由来の窒素量で、旨味の強さを直接的に反映する
  • 製造段階と等級は連動する:第1搾り(頭抽)ほどアミノ酸態窒素が高く、等級も高い傾向
  • 「王」は公式等級ではない:メーカー独自のプレミアム表記。特級を超える品質を示すことが多いが、統一基準はない
  • 日本のJAS等級とは測定法が異なる:数値の直接比較はできない。中国はアミノ酸態窒素、日本は全窒素分
  • ラベルではアミノ酸態窒素の数値を確認する:等級表示よりも具体的な数値のほうが品質を正確に判断できる

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