ジンガンジャン(진간장)は、現代韓国料理で最も使用頻度が高い醤油です。韓国醤油の体系における煮物・炒め物の主力醤油であり、砂糖や水飴が添加された甘辛い味わいが最大の特徴です。プルコギ、カルビ、ジャプチェなど、日本人にもなじみ深い韓国料理の味は、このジンガンジャンによって支えられています。
本記事では、ジンガンジャンの甘みの正体、混合醸造製法、煮物・炒め物での具体的な使い方から、日本の濃口醤油との違いまで解説します。韓国醤油の全体像は韓国醤油の分類体系を、選び方やブランド比較は韓国醤油の選び方をご覧ください。
目次
基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 韓国語 | 진간장(jin-ganjang) |
| 読み方 | ジンガンジャン |
| 意味 | 陳醤油(長期熟成醤油)、濃い醤油 |
| 色 | 濃い茶色(ほぼ黒色) |
| 塩分濃度 | 約15-17% |
| 甘み | 強い(砂糖・水飴添加) |
| 製法 | 混合醸造(ヤンジョガンジャン + サンブンヘガンジャンの混合が多い) |
| 主な用途 | 煮物、炒め物、カンジャンケジャン、プルコギ |
| 特徴 | 加熱しても風味が安定する |
ジンガンジャンは「진(陳 = 長く熟成した、濃い)+ カンジャン(醤油)」を意味し、クッカンジャンよりも色が濃く、甘みのある醤油です。現代の韓国家庭で最も消費量が多く、韓国料理の「甘辛い」味わいの基盤を作る調味料です。
成分と特徴
砂糖添加による明確な甘み
ジンガンジャンの最も顕著な特徴は、製造過程で砂糖や水飴が添加されていることです。これは日本の醤油にも中国の醤油にもない、韓国独自の特徴です。
| 項目 | ジンガンジャン | 日本の濃口醤油 | 中国の老抽 |
|---|---|---|---|
| 甘みの由来 | 砂糖・水飴の直接添加 | 発酵由来の自然な甘み | カラメル由来の甘苦み |
| 甘みの強さ | 非常に強い | わずか | 中程度 |
| 甘みの質 | 直接的、明確 | まろやか、控えめ | 焦がし糖の深い甘み |
| 照り | 砂糖由来の美しい照り | 自然な照り | カラメルによる照り |
砂糖を加えることで、ジンガンジャンは3つの効果を得ています。
- 甘辛い味わい: 韓国料理の基本である「甘辛い」(달콤하고 매콤한)味を実現
- 照り(윤기): 砂糖が加熱時にカラメル化し、料理に美しい照りを出す
- まろやかさ: 塩味のカドを砂糖の甘みが和らげ、味がまとまる
加熱に強い安定した風味
ジンガンジャンは加熱しても風味が安定しています。混合醸造による製品が多く、ヤンジョガンジャンほど揮発性の香り成分が多くないためです。煮込みや炒め物で長時間加熱しても味が崩れないため、煮物・炒め物の主力醤油として適しています。
製法:混合醸造
市販のジンガンジャンの多くは、ヤンジョガンジャン(醸造醤油)とサンブンヘガンジャン(酸分解醤油)の混合に、砂糖・水飴・カラメル色素を添加して作られます。
| 成分 | 役割 |
|---|---|
| ヤンジョガンジャン(醸造醤油) | 旨味と香りの基盤 |
| サンブンヘガンジャン(酸分解醤油) | アミノ酸(旨味)の効率的な供給 |
| 砂糖・水飴 | 甘み、照り |
| カラメル色素 | 濃い色 |
ヤンジョガンジャンの配合比率が品質の目安となり、高級品にはヤンジョガンジャン100%のものもあります。
最適な使い方:煮物・炒め物・カンジャンケジャン
プルコギ(불고기)
ジンガンジャンの代表的な使い方がプルコギです。ジンガンジャンの甘辛い味わいがそのまま料理の味になります。
プルコギの基本ヤンニョム(양념 / 調味液):
- ジンガンジャン 大さじ3
- 砂糖 大さじ1
- にんにくのすりおろし 大さじ1
- ごま油 大さじ1
- 梨のすりおろし 大さじ2(肉を柔らかくする)
- 白ごま 大さじ1
- 刻みネギ 大さじ2
ポイント:
- ジンガンジャンにはすでに甘みがあるため、砂糖は控えめに
- 梨のすりおろしは酵素(プロテアーゼ)で肉を柔らかくし、自然な甘みを加える
- 最低30分、できれば2時間以上漬け込む
カルビ(갈비)
| 調理法 | ジンガンジャンの量(4人分) | 追加調味料 | ポイント | |--------|------------------|-----------|---------|| | カルビチム(갈비찜 / 煮込み) | 大さじ3-4 | 砂糖、にんにく、ネギ、大根 | 煮込み開始から投入 | | ヤンニョムカルビ(양념갈비 / 漬け込み焼き) | 大さじ3 | 砂糖、梨、にんにく、ごま油 | 最低2時間漬け込み |
ジャプチェ(잡채)
ジャプチェ(春雨の炒め物)はジンガンジャンの甘みと色を最大限に活かす料理です。
使い方:
- ジンガンジャン 大さじ2-3で春雨と野菜を炒める
- ジンガンジャンの色が春雨に均一に絡まり、美しい茶色に仕上がる
- 甘みがあるため、砂糖の追加は味を見てから
カンジャンケジャン(간장게장)
カンジャンケジャン(醤油漬けの生ワタリガニ)は、ジンガンジャンの甘みと加熱安定性を活かした代表的な料理です。
作り方の概要:
- ジンガンジャンに生姜、にんにく、唐辛子、青ネギを加えて煮立たせる
- 冷ましたタレに生のワタリガニを漬ける
- 冷蔵庫で2-3日漬け込む
- タレを一度取り出して再加熱し、冷ましてから戻す(2-3回繰り返す)
ポイント:
- ジンガンジャンの甘みがカニの旨味を引き立てる
- 塩分15-17%のジンガンジャンは、クッカンジャン(19-22%)より低く、2-3日の漬け込みでちょうど良い塩梅になる
- タレを繰り返し加熱・冷却しても風味が安定する
その他の煮物(ジョリム)
ジンガンジャンは韓国の煮物(ジョリム)全般の基本調味料です。
| 料理 | ジンガンジャンの量(4人分) | 追加調味料 | ポイント | |------|------------------|-----------|---------|| | 煮魚(センソンジョリム) | 大さじ2-3 | コチュガル、にんにく、大根 | 魚は煮崩れしやすいため中火で | | 煮卵(チャンジョリム) | 大さじ3-4 | にんにく、唐辛子 | 牛肉と一緒に煮込むことが多い | | 煮豆(コンジョリム) | 大さじ2 | 砂糖、水飴 | 照りが出るまで煮詰める | | じゃがいも煮(カムジャジョリム) | 大さじ2-3 | 砂糖、水飴、ごま油 | 甘辛い味と照りが特徴 |
日本の濃口醤油との比較
比較表
| 項目 | ジンガンジャン | 濃口醤油 | |------|--------|---------|| | 原料 | 大豆+小麦(+ 酸分解液が多い) | 大豆+小麦(1:1) | | 塩分濃度 | 15-17% | 約16% | | 甘み | 強い(砂糖・水飴添加) | わずか(発酵由来) | | 色 | 濃い(カラメル色素添加) | 中程度(発酵由来) | | 製法 | 混合醸造が主流 | 本醸造が主流 | | 主な用途 | 煮物・炒め物(甘辛い味) | 万能(煮物・炒め物・かけ・つけ) |
味わいの違い
ジンガンジャンを舐めた第一印象は「甘辛い」です。砂糖の甘みと醤油の塩味・旨味が一体となった味わいで、日本の醤油に比べて甘みがはっきりしています。一方、濃口醤油は「旨味と塩味が主体で、甘みは控えめ」という印象です。
この味の違いは、そのまま料理の味に反映されます。プルコギやカルビの甘辛い味はジンガンジャンによるものであり、日本の濃口醤油だけでは再現が困難です。
代用の可否
| 代用パターン | 可否 | 調整方法 | |-------------|------|---------|| | ジンガンジャン → 濃口醤油 | △ 調整必要 | 濃口醤油 大さじ2 + 砂糖 小さじ1 + みりん 大さじ1 + 水飴 小さじ1/2 | | 濃口醤油 → ジンガンジャン | △ 調整必要 | ジンガンジャンの甘みを考慮して砂糖を減らす。加熱しない用途には不向き |
中国の老抽との比較
ジンガンジャンと中国の老抽は、ともに「色が濃く、甘みのある醤油」ですが、設計思想が根本的に異なります。
| 項目 | ジンガンジャン | 老抽 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 調味(甘辛い味付け) | 着色(色と照り) |
| 甘みの由来 | 砂糖・水飴の添加 | カラメルの添加 |
| 旨味 | あり(調味が主目的) | 中程度(着色が主目的) |
| 単独使用 | 可能(メインの調味料) | まれ(生抽と併用が基本) |
ジンガンジャンは「味付けの主役」として単独で使える醤油ですが、老抽は「色付けの脇役」として生抽と併用するのが基本です。
まとめ
ジンガンジャンは、韓国料理の「甘辛い」味わいを支える最も使用頻度の高い醤油です。
- 砂糖・水飴が添加されており、甘辛い味わいと美しい照りを1本で実現する
- 混合醸造(ヤンジョガンジャン + サンブンヘガンジャン)が主流で、加熱に強い
- プルコギ・カルビ・ジャプチェ・カンジャンケジャンなど、韓国の煮物・炒め物全般の基本調味料
- 日本の濃口醤油+砂糖+みりんで近づけることは可能だが、甘みの一体感は完全には再現できない
選び方やブランド比較は韓国醤油の選び方を、保存方法を含む韓国醤油の全体像は韓国醤油の分類体系をご覧ください。
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