パスタの茹で方|塩は湯の1%、茹で汁を残してソースの鍋で仕上げる

パスタの茹で方|塩は湯の1%、茹で汁を残してソースの鍋で仕上げる

この記事でわかること

パスタの湯の塩は何グラムか
湯1Lに10g(1%)。麺100gに湯1L
なぜ湯に塩を入れるのか
乾麺の生地に塩が無く、麺の塩は湯からしか入らない
湯は少なくてもよいか
100gに0.7Lでも茹で上がりは同じ。茹で汁が濃くなる
どこで湯から上げるか
袋の時間の8割。中心に芯が点で残るところ
茹で汁を残す理由
湯の塩とデンプンをソースに足し、油と水を乳化させる

イタリアのパスタのレシピは、たいてい同じ書き方で始まります。湯を沸かして塩を入れ、袋の時間より2分ほど早く上げ、茹で汁をお玉1杯取っておく。

塩を入れるのは、乾麺の生地に塩が入っていないからです。茹で汁を取っておくのは、湯の塩と麺から溶け出したデンプンを、ソースに足すためです。

アルデンテ(al dente、「歯に当たる」の意味)は、麺の中心に芯がわずかに残る茹で加減です。芯は、まだ水が届いていない麺の中心のことです。

この記事では、イタリア料理がパスタをどれだけの湯と塩で、どこまで茹でるのか、茹で汁を残してソースの鍋で仕上げるのはなぜかを扱います。

パスタの皿を作る段何をするか記事
ソースの土台を作る香味野菜を油で炒めるソッフリット
麺を茹でる湯と塩の量、湯から上げる時刻、茹で汁を取り分けるこの記事
麺とソースを合わせる茹で汁のデンプンで油と水を乳化させるマンテカーレ
味を足すチーズ・アンチョビでうま味と塩を足すイタリア料理のうま味
油を使い分ける炒める油と、皿に生でかける油イタリア料理のオリーブオイル

パスタの形とソースの組み合わせはパスタの種類、1人分の乾麺の量と食事のどこで出すかはイタリア料理のコースの順番にあります。

5つの技法が、イタリア料理の考え方のどちらを支えているかはイタリア料理の技法にまとめています。

湯の量・塩・上げる時刻の目安

項目麺100gあたりの目安そうする理由
湯の量1L(0.7Lまで減らしてよい)湯の量で麺の硬さは変わらず、変わるのは茹で汁の濃さ
塩湯1Lに10g(1%)生地に塩が無く、麺の塩は湯からしか入らない
塩を入れる時湯が沸いてから、麺より先塩が溶けた湯で麺を茹でる
湯から上げる時刻袋の時間の8割残りの2分はソースと一緒に鍋で加熱する
茹で汁お玉1杯(約50mL)を取り分ける塩とデンプンをソースに足す
湯に油・茹でた麺の水洗いどちらもしない麺の表面のデンプンがソースを絡める

出典: 湯の量・塩・時刻・油・水洗いは、イタリアの食品業界団体 Unione Italiana Food のパスタ部会の助言(2021年)。湯の量と麺の硬さは Cimini ほか(2019)。

塩10gは、精製塩なら小さじ1と2/3です(小さじ1杯が6g)。粗塩は粒が大きく、同じ小さじでも軽くなるので、はかりで量ります。

乾麺の生地はセモリナと水だけ

乾麺100gに入っている塩は0g

イタリアで乾燥パスタを名乗るには、デュラム小麦のセモリナ(粗く挽いた粉)と水だけで作ります。材料に塩は入っていません。

日本の食品成分表でも、乾燥スパゲッティ100gの食塩相当量は0gです。

だから、茹でる湯に塩を入れないと、麺は無塩のまま茹で上がります。ソースにいくら塩を効かせても、麺の内側の味は付きません。

この法令が乾麺の品質を揃えている仕組みはパスタの種類にあります。

北の卵の生パスタには、はっきりした芯ができない

デュラム小麦と水の乾麺は南のナポリ周辺に、粉と卵の生パスタは北のボローニャやエミリアに残っています(イタリア料理の地方の違い)。

生パスタは生地の段階で水を含んでいて、2〜3分で茹で上がります(生パスタの作り方)。

茹でた麺(MRI=磁気共鳴画像で見た中心)中心の水の少ない芯
乾麺を茹でたものはっきり写る
生麺を茹でたものはっきりしない

出典: 農研機構 食品総合研究所(2004年)。デュラム小麦のセモリナの生麺と、それを乾かした乾麺を比べた結果。

このあと書く芯と上げる時刻は、乾麺の話です。

湯1Lに塩10g。麺100gに入るのは約1.6g

湯の塩が濃いほど、麺の塩は比例して増える

湯の塩の濃さと、茹で上がった麺の塩は、実験で一直線に並びます。

湯1Lに溶かす塩(g)茹で上がった麺100gの塩(g)茹でる前の乾麺100gに入る塩(g)
70.501.1
100.711.6
15(日本の食品成分表の茹で方)1.22.6

出典: 7gと10gは Bianchi ほか(2019)の式(ナトリウム(mg/100g)=27.4×湯の塩(g/L)+3.3)を、ナトリウム×2.54で塩に換算した値。15gは日本食品標準成分表(八訂)の実測値。

茹でる前の乾麺100gに入る塩は、乾麺100gが茹でると約220gになる(同じ成分表の重量変化率)として計算しました。

湯1Lに10gの塩を溶かしても、麺100gに入るのは約1.6gです。残りは湯に残り、その一部が茹で汁としてソースに入ります。

同じ実験では、茹で時間を延ばしても、麺の形を変えても、同じ濃さのまま湯の量を半分にしても、麺の塩は変わりませんでした。麺の塩を変えたのは、湯の塩の濃さと、茹でた麺の水洗いだけです。

1%は、イタリアの目安の上の端

目安を出しているところ湯1Lに溶かす塩(g)
Unione Italiana Food(イタリアのパスタ業界)7〜10
日本パスタ協会5〜10
このサイト(茹で方のコツと同じ)10

出典: Unione Italiana Food は2021年の助言(麺100gに7〜10g、湯は麺100gに1L)。日本パスタ協会は J-CAST(2023年)の記事。

ソースにアンチョビやペコリーノを使うなら、湯の塩を7gに下げます。麺100gに入る塩は約1.1gになります。

塩で沸点はほとんど上がらない

「塩を入れると沸点が上がる」と言われますが、湯1Lに塩10gで約0.2℃です(茹で方のコツの計算値)。塩を入れるのは、温度のためではなく、麺の味のためです。

湯の量で変わるのは、茹で汁の濃さ

麺1kgに湯3Lでも10Lでも、麺は同じに茹で上がる

比べたもの麺1kgに湯3L麺1kgに湯10L
麺が吸った水(麺1gあたり)1.3g1.3g
湯に溶け出した量(麺1kgあたり)38g38g
硬さ・弾力・デンプンの糊化(こか)の度合い差なし差なし

出典: Cimini ほか(2019、イタリアのトゥーシャ大学)。同じ研究室は、湯12L〜2L/kgの幅でも茹で上がりの質が変わらないと報告しています。

それでも1Lを目安にするのは、麺を入れたときに湯の温度が下がる幅を小さくし、早く沸き直らせるためです。湯が少ないと、沸き直るまでのあいだに麺どうしがくっつきます(イタリア料理の火加減)。

湯が少ないほど、茹で汁は濃くなる

麺から溶け出す量は麺100gで約3.8gと一定なので、湯が少ないほど茹で汁は濃くなります。

麺100gに対する湯茹で汁に溶けた麺の成分(%)
1L約0.38
0.7L約0.54

出典: Cimini ほか(2019)の溶出38g/kgからの計算値。茹でるあいだに蒸発する湯は数えていません。

チーズを溶かしてとろみを付けるソースは、デンプンがチーズの重さの2〜3%あるとダマになりにくくなります(イタリア料理の火加減)。茹で汁だけではこの量に届かないので、湯を0.7Lに減らすか、取り分けた茹で汁を別の鍋で煮詰めます。

アルデンテは、湯から上げたとき芯が点で残る茹で加減

芯は、水がまだ届いていない中心

乾麺を湯に入れると、外側から水が入ります。たんぱく質は熱で固まって網になり、その網の中でデンプンの粒が水を吸って膨らみ、糊化します。

小麦のデンプンは、水があれば58〜64℃で糊化します(デンプン糊化の科学)。沸いた湯なら熱は中心まですぐ届きます。中心で遅れているのは、熱ではなく水です。

茹でた乾麺を MRI(磁気共鳴画像)で見ると、中心に水分の少ない部分がはっきり写り、噛むとここが固く感じられます。これが芯です。

出典: たんぱく質の網は Bresciani ほか(2022)、芯は農研機構 食品総合研究所(2004年)。

ソースの鍋に移すなら、袋の時間の8割で上げる

袋に書いてある時間は、湯だけで茹でて芯が消えるまでの時間です。イタリア料理は最後の2分をソースと一緒に鍋で加熱するので、そのぶん早く湯から上げます。

湯から上げる時刻(袋が9分の麺)1本切った断面次にすること
袋の時間の8割(約7分)中心に白い点が残る茹で汁を取り分け、ソースの鍋へ移す
袋の時間(9分)白い点が消えたところソースの鍋を使わず、湯から皿へ盛る
袋の時間を越える外側がふやけて崩れ始める柔らかくなりすぎ

出典: 8割と残り2分は Unione Italiana Food の助言。断面の見え方は茹で方のコツの図と同じ。

8割で上げた麺の白い点は、ソースの鍋で加熱する残りの2分で消えます。

茹で汁を取り分け、最後の2分はソースの鍋で

湯を切る前に、お玉1杯を取り分ける

茹で汁がソースに足すもの鍋の中での働き
湯と同じ1%の塩麺とソースの塩を同じ濃さに揃える
麺から溶けたデンプン油と水を乳化させ、ソースを麺に絡める
水麺が鍋で吸う水分になる

ソースの鍋が乾いたら、茹で汁を大さじ2ずつ足して鍋をゆすります。デンプンで油と水を乳化させる手順はマンテカーレにあります。

湯に油を入れず、茹でた麺を洗わない

湯に油を入れると、ソースが麺に絡みにくくなることがあります。湯に油は入れません。

茹でた麺を水で洗うと、表面のデンプンが流れ、麺の塩も34%減ります。

出典: 油は Unione Italiana Food の助言、水洗いの34%は Bianchi ほか(2019)。

皿の上には、火を止めてから生のオリーブオイルを1皿4〜5gかけます(イタリア料理のオリーブオイル)。

うどんは塩を茹で湯に捨て、パスタは茹で湯の塩をソースに足す

同じ小麦の麺でも、塩が動く向きが逆です。うどんと中華麺は生地に塩やかんすいを入れてこね、茹でるとその塩が湯に出ていきます。パスタは生地に塩が無く、湯から塩が入ります。

麺生地に入れるもの茹でる前の麺100gの塩(g)茹でた麺100gの塩(g)茹でたあと茹で汁
うどん10〜13%の塩水2.50.3洗って冷水で締める捨てる
中華麺かんすい1.00.2湯を切ってスープに浸す捨てる
パスタ(乾麺)セモリナと水だけ01.2洗わずソースの鍋へお玉1杯をソースに足す

出典: 塩は日本食品標準成分表(八訂)の食塩相当量。うどんと中華麺は生とゆで、パスタは乾とゆで(1.5%の塩の湯で茹でたもの)。うどんの塩水はうどんの生地の記事の値。

うどんは、生地の塩で麺を締め、茹でたら湯ごと塩を捨てて、つゆで食べます。ラーメンは、茹でた麺を湯から上げてスープに浸します。

パスタは、茹でる湯で麺に塩を入れ、その湯の一部をソースにも足します。

うまくいかせる条件

こんなときどうするかそうすると
アンチョビ・ペコリーノのソース湯の塩を1Lに7gにする麺100gに入る塩が約1.6gから約1.1gに減る
大きな鍋が無い麺100gに湯0.7Lで茹でる麺は同じに茹で上がり、茹で汁が濃くなる
チーズや卵でとろみを付けるソース茹で汁を多めに取り、別の鍋で煮詰めるデンプンが濃くなり、ダマになりにくい
冷製パスタにする袋の時間より数分早く上げ、洗わずに広げて冷ます湯から上げても余熱で火が進む

出典: 塩の量は Bianchi ほか(2019)の式から。冷製は Unione Italiana Food の助言。

よくある失敗と対策

味が薄い・ぼやけた部分的
なぜ
湯に塩を入れずに茹でました。乾麺の生地には塩が入っていないので、麺そのものが無塩のままです
どうする
ソースに塩を足し、鍋で1〜2分からめて麺の表面に味をのせます
次から
麺100gに湯1L・塩10gを、沸いてから麺より先に入れます
味が濃い・塩辛い部分的
なぜ
1%の茹で汁をソースに何度も足し、ペコリーノやアンチョビの塩と重なりました
どうする
茹で汁の代わりに水か無塩のブロードで伸ばし、チーズを減らします
次から
塩の強いソースのときは、湯の塩を1Lに7gまで下げます
麺にコシがない諦める
なぜ
芯が消えるまで湯で茹でた麺を鍋でさらに加熱し、デンプンが水を吸いすぎて外側から崩れました
どうする
戻りません。ソースをからめる時間を短くして、すぐ皿に盛ります
次から
ソースの鍋に移すなら、袋の時間の8割で湯から上げます
麺どうしがくっついた回復できる
なぜ
沸き直るまでのぬるい湯で、表面のデンプンが糊になり、麺どうしが貼りつきました
どうする
湯に戻して菜箸でほぐし、強火で沸き直らせます
次から
麺を入れたら、湯が沸き直るまで菜箸でほぐし続けます

塩は湯から入れ、最後の2分はソースの鍋で

  • イタリアの乾麺の生地はセモリナと水だけです。麺の塩は茹で湯からしか入らないので、湯1Lに10g(1%)を入れます
  • 1%の湯で茹でると、麺100gに入る塩は約1.6g。塩の強いソースなら7gに下げます
  • 湯の量で麺の硬さは変わりません。湯が少ないほど茹で汁が濃くなります
  • アルデンテは、湯から上げたとき中心に芯が点で残る茹で加減です。袋の時間の8割で上げ、茹で汁をお玉1杯取り分けて、最後の2分はソースと一緒に鍋で加熱します

参考文献

  1. Decreto del Presidente della Repubblica 9 febbraio 2001, n. 187, art. 6(Normattiva。乾燥パスタはデュラム小麦のセモリナと水だけで作る。水分12.50%以下、たんぱく質は乾物100に対し10.50以上)
  2. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース(マカロニ・スパゲッティ 乾・ゆで、うどん 生・ゆで、中華めん 生・ゆでの食塩相当量)
  3. 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」第3章 穀類(マカロニ・スパゲッティ ゆでの調理条件。20倍の1.5%食塩水でゆでて湯切り、重量変化率220%)
ほか8件を見る
  1. Bianchi LM ほか「Cooking parameters affect the sodium content of prepared pasta」Food Chemistry 271:479-487, 2019(湯の塩の濃さと茹でた麺のナトリウムの回帰式、洗うと34%減)
  2. Cimini A, Cibelli M, Moresi M「Is Pasta Cooking Quality Affected by the Power Rating, Water-to-Pasta Ratio and Mixing Degree?」Chemical Engineering Transactions 75:115-120, 2019(湯3L/kgと10L/kgで吸水・溶出・糊化・硬さが同じ。溶出38g/kg)
  3. Cimini A, Cibelli M, Moresi M「Reducing the cooking water-to-dried pasta ratio and environmental impact of pasta cooking」J Sci Food Agric 99(3):1258-1266, 2019(湯12〜2L/kgで茹で上がりの質が変わらない)
  4. 農研機構 食品総合研究所「MRIで見るスパゲティ内部の水分分布」2004(Irie K ほか, Cereal Chemistry 81:350-355, 2004。茹でた乾麺と冷凍麺の中心にデンプンの糊化が不十分な低水分の領域があり、茹でた生麺などでは明確でない)
  5. Bresciani A, Pagani MA, Marti A「Pasta-Making Process: A Narrative Review on the Relation between Process Variables and Pasta Quality」Foods 11(3):256, 2022(たんぱく質の網がデンプン粒を閉じ込める)
  6. ISO 7304-2:2008「Durum wheat semolinas and alimentary pasta — Estimation of cooking quality of spaghetti by sensory analysis — Part 2: Routine method」(押しつぶした麺の中心の白い線が消えるまでを最短の茹で時間とする。概要のみ確認)
  7. MeteoWeb「Pasta, gli errori da evitare」2021年3月10日(Unione Italiana Food のパスタ業界の助言。100gに水1L〜0.7L、塩7〜10g、油を入れない、茹で汁をお玉1杯残す、80%を湯で残り2分をフライパンで)
  8. J-CAST ニュース「パスタはなぜ塩入れて茹でる?」2023年7月23日(日本パスタ協会の目安。100gに水1L、1Lに塩5〜10g、中心に針先ほどの芯)