イタリア料理のうま味|パルミジャーノはうま味、生ハムとアンチョビは塩を足す

イタリア料理のうま味|パルミジャーノはうま味、生ハムとアンチョビは塩を足す

この記事でわかること

イタリア料理が熟成食材で味を足す理由
熟成でうま味が増え、塩と一緒に1つで入る
10g入れると塩とうま味はどれだけ増えるか
24か月熟成のパルミジャーノで塩0.38g、うま味118〜168mg
うま味を足したいとき
パルミジャーノ。塩1gあたりのうま味が醤油の約5〜6倍
塩を足したいとき
生ハムかアンチョビ。うま味は塩の割に少ない
日本料理との違い
日本はだしでうま味、醤油で塩を別々に入れる

パスタの仕上げにパルミジャーノを削ると、味が急に濃くなります。塩を足したわけでも、だしを入れたわけでもありません。

24か月熟成のパルミジャーノ10gには、塩0.38gと、うま味のもとのグルタミン酸118〜168mgが入っています。完熟トマト50gとほぼ同じ量のうま味が、塩と一緒にひと削りで入ります。

イタリア料理は、パルミジャーノ・生ハム・アンチョビのように熟成させた食材で味を足してきました。熟成のあいだにたんぱく質が分かれてうま味が増え、塩も一緒に入っています。

ただ、塩とうま味の割合は食材ごとに違います。この記事では、イタリア料理が熟成させた食材で何をどれだけ足しているかと、家でどれを選び、塩をどう減らすかを扱います。

香味野菜を炒めて甘みと香りの土台を作ることはソッフリット、チーズと脂と茹で汁をつなぐ操作はマンテカーレで扱います。

オリーブオイルを火にかける段と生でかける段の使い分けはイタリア料理のオリーブオイルにあります。パスタの茹で方は、この記事の範囲の外です。

熟成食材がパスタ1皿のどの段で入るかと、ほかの4つの技法とのつながりはイタリア料理の技法にまとめています。

熟成した食材には、うま味と塩が一緒に入っている

10gずつ入れたときに、塩とグルタミン酸がどれだけ増えるかを並べます。

食材(10g)食塩相当量(g)グルタミン酸(mg)熟成
パルミジャーノ・レッジャーノ0.38118〜16824か月
生ハム0.563412か月
アンチョビ1.3163塩漬けして油漬け
モッツァレラ0.020熟成させない

出典: 食塩相当量は日本食品標準成分表2020年版(八訂)。パルメザンは銘柄を限らない値、生ハムは長期熟成、アンチョビは缶詰。グルタミン酸はうま味インフォメーションセンターのうま味データベースで、生ハムはスペイン産。

パルミジャーノは、塩が少なくうま味が多い食材です。アンチョビは塩が多く、生ハムはそのあいだにあります。同じチーズでも、熟成させないモッツァレラにはうま味がほとんどありません。

熟成の長さと、たんぱく質の分かれ方は仕様書に書いてある

うま味のもとのグルタミン酸は、たんぱく質に組み込まれているうちは味になりません。熟成のあいだに、乳や肉の酵素と微生物がたんぱく質を分けて、遊離したグルタミン酸が増えます(うま味の科学)。

イタリアの原産地呼称(DOP。全工程を産地で行う)と地理的表示(IGP。少なくとも1工程を産地で行う)の仕様書は、この熟成の長さを書いています。

パルミジャーノは12か月以上、遊離アミノ酸が総たんぱく質の15%を超える

パルミジャーノ・レッジャーノの仕様書は、成形から12か月以上熟成させると書いています。材料は加熱していない生乳と子牛のレンネット(乳を固める酵素)で、添加物は使えません。

仕様書には、遊離アミノ酸がたんぱく質の総量の15%を超えることまで書いてあります。たんぱく質がどれだけ分かれたかが、名前を名乗る条件に入っています。

パルミジャーノの熟成グルタミン酸(mg/100g)
24か月1,180〜1,680
48か月2,220

出典: うま味インフォメーションセンター(24か月は2つの測定値の幅)。

熟成が長いほどうま味は増え、48か月は24か月の約1.3〜1.9倍です。同じうま味を足すなら、長く熟成したものほど少ない量で足ります。

パルマの生ハムは14か月以上、豚のもも肉と海の塩だけ

プロシュット・ディ・パルマの仕様書は、塩漬けを海の塩だけで行い、保存料などの添加物も燻製も使わないと書いています。熟成は14か月以上で、2023年に12か月から延びました。

工程仕様書の値
塩漬け0〜4℃で、1回目4〜7日、塩を替えて2回目10〜21日
塩漬けと休ませる期間合わせて90日以上
熟成塩漬けから14か月以上
仕上がりの塩6%以下

出典: パルマの生ハムの仕様書の改定案(2019年)と、その承認を伝える CSQA の発表(2023年)。

熟成の間にうま味がどれだけ増えるかは、スペインの生ハムで測られています。

スペインの生ハムの熟成グルタミン酸(mg/100g)
仕込み2日目5.8
6か月207
12か月337

出典: うま味インフォメーションセンター(Ninomiya 1998)。生ハムの原料の豚もも肉の性質は豚ももにあります。

アンチョビは塩水の中で40〜60日

リグーリア海のアンチョビの IGP は、手で頭と内臓を除いたアンチョビ(カタクチイワシの仲間)を、海の塩で層にして重しをかけ、40〜60日熟成させます。出てきた液は4〜5日で塩水に替え、塩水の濃さは18〜33%に保ちます。

仕様書が書く味は、はっきり塩辛いことです。アンチョビは、熟成食材の中で塩の役が一番強い食材です。

塩1gあたりのうま味で並べると、パルミジャーノだけが多い

10gの表を、塩1gを入れたときに一緒に入るうま味に直します。

食材塩1gあたりのグルタミン酸(mg)
パルミジャーノ(24か月)311〜442
生ハム(12か月)60
アンチョビ48
こいくちしょうゆ68

出典: 100gあたりのグルタミン酸を食塩相当量で割った値。生ハムはスペイン産12か月の値。醤油はうま味インフォメーションセンターの濃口980mgと成分表の14.5g。

パルミジャーノは、醤油の約5〜6倍のうま味を、同じ塩の量で含みます。生ハムとアンチョビは、醤油と同じくらいです。

だから、塩を増やさずにうま味を足したいときはパルミジャーノを使います。生ハムとアンチョビは、うま味より先に塩を足す食材として使います。

ボローニャのトルテッリーニは、詰め物に塩を入れない

1974年に、アッカデミア・イタリアーナ・デッラ・クチーナのボローニャ支部が、トルテッリーニ(肉を詰めた小さなパスタ)の配合をボローニャ商工会議所に登録しました。詰め物の材料に、塩はありません。

詰め物の材料(約1000個分)量(g)含む塩(g)含むグルタミン酸(mg)
豚ロース(バターで焼く)3000.330
生ハム30016.81,011
モルタデッラ3006.3不明
パルミジャーノ・レッジャーノ45017.15,310〜7,560
卵(3個)1500.620

出典: 配合はボローニャ市の「Tortellino bolognese」(2021年)。塩は成分表(モルタデッラはボロニアソーセージ)。グルタミン酸はうま味インフォメーションセンターで、パルミジャーノは24か月、生ハムはスペイン産12か月。

モルタデッラは、ボローニャの加熱して作る太いソーセージです。詰め物は約1.5kgで、塩は約41g、重さの約2.7%です。

塩の42%はパルミジャーノ、41%は生ハムから入ります。グルタミン酸は8割以上がパルミジャーノから入ります。

家で足すときは、うま味か塩かで食材と入れる段を選ぶ

うま味が足りないときは、パルミジャーノを火を落としてから

24か月熟成のパルミジャーノ20gで、グルタミン酸は236〜336mg入ります。完熟トマト100g(247〜324mg)とほぼ同じで、塩は0.76gです。

パルミジャーノは約65℃でたんぱく質どうしがくっついて固まるので、火を落としてから入れます(イタリア料理の火加減)。茹で汁のデンプンで脂と水とつなぐ操作はマンテカーレにあります。

塩の土台には、アンチョビを最初に油で溶かす

アンチョビ10gは塩1.31gで、塩小さじ4分の1弱にあたります。

刻んだアンチョビを弱火の油で崩れるまで温め、溶けたらほかの素材を入れます。最初に入れると、塩とうま味がソース全体に回ります。

2つ以上入れるなら、塩は最後に味を見てから

1人分のパスタにパルミジャーノ10gとアンチョビ5gを入れると、塩は約1.0g入ります。生ハムを10g足せば、さらに0.56g増えます。

熟成食材を2つ以上入れた皿は、塩を入れる前に味を見て、足りない分だけ足します。

日本はうま味と塩を別々に、イタリアは一緒に入れる

うま味を何で入れるかは、料理体系で違います。

料理体系うま味が入っているもの一緒に入る塩
日本料理昆布とかつお節のだしほぼ無い(100gあたり0.1g)
中国料理上湯(シャンタン)の金華ハム(きんかハム)(グルタミン酸360mg/100g)ハムの塩も湯に出る
イタリア料理パルミジャーノ・生ハム・アンチョビ食材ごとに決まった割合で一緒に入る

出典: 日本は日本料理のうま味と成分表、中国は中国料理の湯とうま味インフォメーションセンター。

日本料理は、塩をほとんど持たないだしでうま味を入れ、塩は醤油と味噌で別に入れます。すまし汁の試験では、うま味を足して醤油を引くと、塩を29%減らしても普通の味付けと同じ評価でした。

イタリア料理は、うま味と塩が1つの食材に入っているので、別々には動かせません。動かせるのは、どの食材を選ぶかです。うま味を残して塩を減らしたいなら、アンチョビや生ハムの一部をパルミジャーノに置き換えます。

うま味のほかの手段も含めて日本・中国・フランス料理と並べた違いはイタリア料理の特徴にあります。

うまくいかせる条件

こんなときどうするか分かれ目
塩を増やさずにうま味を足したいパルミジャーノを足す塩1gあたりのうま味が醤油の約5〜6倍
長く熟成したパルミジャーノを使う24か月より少ない量で足す48か月はうま味が約1.3〜1.9倍
ピッツァやサラダにモッツァレラを使う塩とうま味はトマトと塩から入れる熟成させないチーズはうま味がほぼ0
生ハムを炒めてソースに入れる入れた分の塩を、ほかの塩から引く10gで塩0.56g

よくある失敗と対策

味が濃い・塩辛い部分的
なぜ
アンチョビとパルミジャーノを入れたソースに、いつもの量の塩も入れました。アンチョビは10gに塩1.31gを含みます
どうする
塩の入っていないトマトか水で伸ばし、ソースの量を増やして塩を薄めます
次から
熟成食材を入れた皿は、塩を入れる前に味を見て、足りない分だけ足します
旨味が乗らない回復できる
なぜ
チーズをモッツァレラだけにしました。熟成させないチーズはグルタミン酸がほぼ0で、うま味が増えません
どうする
火を落としてから、パルミジャーノを1人分10g削って混ぜます
次から
うま味を足す役は、12か月以上熟成したパルミジャーノに任せます
ダマになる・粉っぽい部分的
なぜ
火にかけたままパルミジャーノを入れ、約65℃でチーズのたんぱく質どうしがくっついて固まりました
どうする
鍋を火から外し、茹で汁を少しずつ足して混ぜます。大きなかたまりは取り除きます
次から
火を落としてから削ったパルミジャーノを入れ、茹で汁を手元に残しておきます

熟成食材で味を足す3つ

イタリア料理は、熟成させた食材で、うま味と塩を一緒に足します。

  • 24か月熟成のパルミジャーノは塩が少なくうま味が多く、10gで塩0.38g・グルタミン酸118〜168mgです
  • 生ハムとアンチョビは、塩1gあたりのうま味が醤油と同じくらいで、塩を足す食材です
  • 熟成食材を2つ以上入れる皿は、塩を最後に味を見てから足します

参考文献

  1. Consorzio del Formaggio Parmigiano Reggiano「Disciplinare di produzione della DOP Parmigiano Reggiano」(生産地・材料・成形から12か月以上の熟成・遊離アミノ酸が総たんぱく質の15%超・形と重さ)
  2. Regione Emilia-Romagna BURER 2019年11月25日「Modifica disciplinare della DOP Prosciutto di Parma」附属書(海の塩だけで塩漬け・保存料と燻製を使わない・14か月以上・塩の上限・豚に乳清を与える)
  3. CSQA「Prosciutto di Parma DOP: la Commissione europea approva le modifiche al disciplinare di produzione」2023年3月10日(熟成12か月から14か月へ、重さ8.2kg以上、塩の上限6.2%から6%へ)
ほか5件を見る
  1. Disciplinare di produzione IGP「Acciughe sotto sale del Mar Ligure」2017年9月22日(海の塩で層にして重しをかけ、塩水の中で40〜60日)
  2. Comune di Bologna「Tortellino bolognese」2021(1974年にボローニャ商工会議所へ登録された詰め物の配合。約1000個分)
  3. うま味インフォメーションセンター「うま味データベース」(パルミジャーノ・生ハムの熟成段階・アンチョビ・醤油・トマト・金華ハムの遊離グルタミン酸)
  4. Umami Information Center「Cheese」(モッツァレラ0mg、パルミジャーノ24か月1,680mg・48か月2,220mg)
  5. 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」本表(パルメザン・生ハム・アンチョビ・ボロニアソーセージ・こいくちしょうゆ・だし類の食塩相当量)