イタリア料理のオリーブオイル|炒めにも揚げにも使い、香りは最後に生でかける

イタリア料理のオリーブオイル|炒めにも揚げにも使い、香りは最後に生でかける

この記事でわかること

イタリア料理のオリーブオイルの使い分け
炒めにも揚げにも使い、香りは最後に生で皿にかける
エキストラバージンを火にかけてよいか
よい。180℃で6時間熱しても種子油より傷みにくい
火にかける量
1人7〜25g。ラグーは約7g、トスカーナのスープは25g
最後にかける量
1皿4〜5g(小さじ1)。ピッツァの仕様書の量
中国料理・フランス料理との違い
中国は鍋で、フランスは火から下ろして、イタリアは皿で足す

イタリア料理のオリーブオイルは、1皿に2回入ります。最初は鍋で香味野菜や肉を炒める脂として、最後は火を止めてから、皿の上に生でかける香りとして入ります。

トスカーナのパッパ・アル・ポモドーロ(トマトとパンの粥)は、にんにくとトマトをオイルで煮てからパンを崩し、皿に盛ったあとで生のオイルをひと筋かけます。

2回とも、同じエキストラバージンを使ってかまいません。火にかけても油は傷みにくく、火で減るのは香りと苦みだからです。

この記事では、イタリア料理がオリーブオイルを火にかけるときと生でかけるときでどう使い分け、どの料理にどれだけ使うかを扱います。

香味野菜を炒める時間と色はソッフリット、鍋でオイルと茹で汁をつなぐ操作はマンテカーレ、パルミジャーノやアンチョビで味を足すことはイタリア料理のうま味にあります。湯に油を入れないことと湯の塩の量は、パスタの茹で方にあります。

オイルがパスタ1皿の最初と最後のどの段で入るかと、ほかの4つの技法とのつながりはイタリア料理の技法にまとめています。

同じ1本を、鍋では脂に、皿では香りに使う

オイルを入れる場面ごとに、オイルの役と量を並べます。

オイルを入れる場面オイルの役1人・1皿の量(g)例
鍋で香味野菜や肉を炒める熱を伝える脂7〜25ボローニャのラグー
焼く前に上からかける生地とトマトに足す脂4〜5ピッツァ
火を止めて皿にかける青い香りと苦み4〜5パッパ・アル・ポモドーロ

出典: 量は「どの料理にどれだけ使うか」の節の表と同じ。皿にかける量は、ピッツァの仕様書の量を目安にしたもの。

鍋で炒めるオイルは、熱を食材に伝え、香味野菜の香りを自分に移します。揚げ物もオイルで揚げますが、揚げ油は鍋に張る量なので、1人分では数えません。

エキストラバージンは、味見で欠点が無いことが条件の区分

EU 規則の区分は、酸度と味見で分かれる

オリーブオイルの名前と条件は、EU 規則に区分ごとに書いてあります。どれもオリーブの実から搾った油で、違いは酸度と味見と、精製したかどうかです。

区分(EU 規則の名前)遊離酸度の上限(g/100g)味見の条件店で買えるか
エキストラバージン0.8欠点が無く、果実の香りがある買える
バージン2.0欠点が少しあってよい買える
精製オリーブオイル0.3果実の香りを問わない単独では売れない
オリーブオイル(精製とバージンを混ぜたもの)1.0果実の香りを問わない買える

出典: EU 規則 No 1308/2013 附属書 VII 第 VIII 部。味見の条件は IOC(国際オリーブ協会)の規格 Rev.19。酸度が2.0を超えるものは食用にせず、精製に回します。

遊離酸度(ゆうりさんど)は、油の中で脂肪酸がばらばらに外れた量です。実が傷んだり、搾るまでに時間がかかったりすると増えます。

エキストラバージンを名乗るには、訓練した味見の係が欠点を1つも見つけず、果実の香りを感じることが条件です。香りと味で決まる区分なので、その香りを食べるなら火を通さないで使います。

日本の「ピュア」は、精製した油とバージンを混ぜたもの

日本の売り場で「ピュア」と表示されてきたのは、EU の区分の「オリーブオイル(精製とバージンを混ぜたもの)」です。精製した油は、味見で果実の香りを問われません。

香りを足す仕上げにはエキストラバージンを使い、揚げ物のように量が要るときは混ぜた油でもかまいません。

火にかけても、エキストラバージンは傷みにくい

180℃で6時間熱しても、傷み方は種子油より小さい

油は熱で酸化して分かれ、極性化合物(きょくせいかごうぶつ)という成分が増えます。揚げ油の傷み具合を測る物差しで、多くの国が揚げ油の上限を24〜27%に置いています(脂質の酸化)。

油(3Lを揚げ鍋で180℃・6時間)加熱後の極性化合物(%)
エキストラバージンオリーブオイル10.5
米ぬか油15.7
キャノーラ油17.3
ぶどう種子油20.2
ひまわり油21.8

出典: De Alzaa ほか(2018)。著者はオーストラリアのオリーブオイル会社の検査機関の所属。

エキストラバージンが傷みにくいのは、脂の7〜8割が酸化しにくいオレイン酸だからです。種子油には、酸化しやすいリノール酸が多く入っています。

油(家庭の揚げ物の条件)極性化合物が25%に届くまでの揚げ時間(h)
オリーブオイル(エキストラバージンと混ぜた油を含む3種)24〜27
植物油のブレンド15

出典: Casal ほか(2010、ポルトガル)。揚げる温度と油の量は、抄録からは確かめられなかった。

エキストラバージンも混ぜた油も、同じように長くもちました。だから、炒め物にも揚げ物にもエキストラバージンを使えます。

炒める温度は、発煙点より30℃以上低い

火にかける場面油の温度(℃)見分ける手がかり
ソッフリット(野菜の水分が残るうち)100前後鍋底に水分が見える
にんにくの香りを油に移す100〜130縁が色づき始めたら火から外す
揚げる(フリット)170〜180菜箸の先から細かい泡が安定して出る

出典: イタリア料理の火加減と揚げ物の技術と同じ値。

エキストラバージンの発煙点は、品質によって160〜210℃と幅があります(油の種類と選び方と同じ値)。炒める温度はその下限より30℃以上低く、揚げる170〜180℃は幅の中に入ります。

油(同じ研究の実測)遊離酸度(%)発煙点(℃)
エキストラバージン0.17207
バージン1.24175

出典: De Alzaa ほか(2018)。

酸度が高い油ほど、発煙点は低くなります。同じ研究は、発煙点の高さでは加熱後の傷み方を予測できなかったと結論しています。揚げるなら、酸度の低い油を使います。エキストラバージンは0.8%以下、混ぜた油は1.0%以下です。

火で減るのは、青い香りと苦み

油そのものは傷みにくい一方で、エキストラバージンを名乗る条件の香りと味は、火で減ります。

加熱の条件減ったもの加熱後に残った量(%)
オーブン180℃で1時間(オイル50g)刈った草のような青い香り5〜8
揚げ鍋180℃で10分を1回苦みのもとのポリフェノール50〜60
揚げ鍋180℃で10分を6回苦みのもとのポリフェノール10

出典: 香りは Klisović ほか(2024、クロアチアの3品種)、苦みは Gómez-Alonso ほか(2003)。

青い香りは、熱でほとんど飛びます。代わりに、熱した油のにおいが増えます。

だから、香りと苦みを食べたい分は、火を止めてから皿の上で足します。鍋で入れたオイルは、熱を食材に伝える脂として入れています。

どの料理にどれだけ使うか

炒めるオイルは、1人7〜25g

料理オイルを入れる場面6人分(g)1人分(g)
ラグー・アッラ・ボロネーゼ生の豚ばら肉を溶かし、香味野菜を炒める417
リボッリータ香味野菜を炒める41〜557〜9
トスカーナの野菜と豆のスープ香味野菜を色づくまで炒める15025

出典: ラグーは2023年の登録配合(大さじ3。イタリア料理がシンプルな理由)。リボッリータはフィレンツェ市の配合(大さじ3〜4)。スープはアルトゥージの58番。大さじは1杯15mL×0.91≒13.7gで換算。

リボッリータは、パンと野菜と豆を煮込んだトスカーナのスープです。

ボローニャのラグーは豚ばら肉の脂も一緒に溶け出し、オイルは1人7gで済みます。

アルトゥージのスープはオイルだけで野菜を炒めて煮るので、1人25gです。

皿にかけるオイルは、ピッツァの4〜5gを目安にする

皿の上にかける量を書いた一次情報は、見つかりませんでした。トスカーナのパッパ・アル・ポモドーロの配合も、量は「ひと筋」です。

量が書いてあるのは、ピッツァ・ナポレターナの仕様書です。直径35cm以内の1枚に、注ぎ口のある容器で中心から外へ渦巻きに4〜5gかけます(20%増しまで)。

この4〜5gは、485℃の窯で60〜90秒焼く前の量です。この記事では、これを1皿の目安にします。小さじ1杯が約4.6gです。

生のオイルで伸ばすソースは、量が多くなります。アルトゥージの134番、ゆでた魚にかけるジェノヴァ風のソースは、魚600gにオイル60gです。

仕上げの脂を、イタリアは火に当てず皿で足す

仕上げに脂を足すのは、ほかの料理体系にもあります。違うのは、火との距離です。

料理体系仕上げに足す脂仕上げの脂の量脂を入れる場所
中国料理の明油(ミンヨウ)ねぎ油・鶏油などの香味油炒め物に小さじ1/2〜1火にかけた鍋の中
フランス料理のモンテバターソース200mLに16〜28g火から下ろした鍋(45〜55℃)
イタリア料理生のエキストラバージン1皿4〜5g盛った皿の上

出典: 中国は明油の記事、フランスはモンテ(公開準備中のフランス料理のバターの記事)の値。

明油は、炒め物の最後に香味油を鍋に回す中国料理の仕上げです。モンテは、できたソースに最後にバターを溶かし込むフランス料理の仕上げです。

中国料理は、ねぎや鶏の香りを先に移した油を、熱い鍋で回します。フランス料理は、バターが溶けても分かれない温度で混ぜます。

イタリア料理は、オイルそのものに青い香りがあるので、香りを移す手間がいりません。その代わり、火に当てると香りが減ります。

うまくいかせる条件

こんなときどうするか分かれ目
揚げ物で油が1L以上要る精製とバージンを混ぜた油で揚げる揚げてもつ時間は24〜27時間で変わらない
エキストラバージンが1本しかない仕上げの分だけ火を止めてから足す青い香りはオーブン180℃・1時間(オイル50g)で5〜8%に減る
パスタの皿にオイルが浮く鍋のオイルを茹で汁とつなぐ茹で汁のデンプンがオイルと水をつなぐ

茹で汁とつなぐ量と手順は、マンテカーレにあります。

よくある失敗と対策

香りが弱い・飛んだ回復できる
なぜ
仕上げのオイルまで鍋で煮立てました。青い香りは揮発しやすく、オーブン180℃でオイル50gを1時間熱すると5〜8%に減ります
どうする
火を止めて皿に盛り、1皿に小さじ1杯の生のオイルをかけます
次から
仕上げの分は鍋に入れず、盛ってから皿の上でかけます
苦い・えぐい部分的
なぜ
熱した油ににんにくを入れ、130℃を超えて糖とたんぱく質が焦げ、焦げの苦みが出ました
どうする
にんにくを取り除き、油を替えて冷たい油からやり直します
次から
冷たい油ににんにくを入れて弱火にかけ、薄いきつね色で火から外します
煙が出すぎる部分的
なぜ
酸度の高いバージンで揚げました。遊離脂肪酸が多い油は、発煙点が175℃まで下がります
どうする
火を弱めて170℃に戻し、煙が止まらなければ油を替えます
次から
揚げ物は酸度0.8%以下のエキストラバージンか、精製とバージンを混ぜた油で

鍋では脂、皿では香り

イタリア料理は、同じエキストラバージンを、鍋では脂として、皿では香りとして使います。

  • エキストラバージンは180℃で6時間熱しても種子油より傷みにくく、炒めにも揚げにも使えます
  • 火で減るのは青い香りと苦みで、オーブン180℃でオイル50gを1時間熱すると、青い香りは5〜8%しか残りません
  • 炒めるオイルは1人7〜25g、皿には火を止めてから1皿4〜5g(小さじ1)をかけます

参考文献

  1. Regulation (EU) No 1308/2013 Annex VII Part VIII(オリーブオイルの区分。エキストラバージンは遊離酸度0.8g/100g以下、バージン2g以下、精製0.3g以下、精製とバージンを混ぜたもの1g以下。小売できる区分)
  2. International Olive Council「Trade standard applying to olive oils and olive pomace oils」COI/T.15/NC No 3/Rev.19(EU 理事会文書 ST 13162/22 ADD 2 に全文。味見の基準: エキストラバージンは欠点の中央値0・果実味の中央値0より大)
  3. De Alzaa F, Guillaume C, Ravetti L「Evaluation of Chemical and Physical Changes in Different Commercial Oils during Heating」Acta Scientific Nutritional Health 2(6):02-11, 2018(発煙点・180℃6時間の極性化合物)
ほか9件を見る
  1. Casal S ほか「Olive oil stability under deep-frying conditions」Food and Chemical Toxicology 48(10):2972-2979, 2010(家庭の揚げ物で極性化合物25%に届くまでの時間)
  2. Gómez-Alonso S ほか「Changes in phenolic composition and antioxidant activity of virgin olive oil during frying」Journal of Agricultural and Food Chemistry 51(3):667-672, 2003(180℃10分の揚げ1回・6回でのヒドロキシチロソールの仲間の残り)
  3. Klisović D ほか「Thermal-Induced Alterations in Phenolic and Volatile Profiles of Monovarietal Extra Virgin Olive Oils」Foods 13(21):3525, 2024(オーブン180℃・220℃で1時間。(E)-2-ヘキセナールとポリフェノール)
  4. Pedan V ほか「Characterization of Phenolic Compounds and Their Contribution to Sensory Properties of Olive Oil」Molecules 24(11):2041, 2019(苦みとポリフェノールの相関。エキストラバージン100点)
  5. Commission Regulation (EU) No 97/2010, Annex II「Pizza Napoletana」TSG 仕様書(エキストラバージン4〜5gを中心から渦巻きにかけ、485℃で60〜90秒)
  6. Accademia Italiana della Cucina「Ricetta aggiornata del tradizionale del ragù alla bolognese」(2023年4月20日 ボローニャ商工会議所に登録。6人分でオリーブオイル大さじ3)
  7. Pellegrino Artusi『La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene』(Project Gutenberg #59047。58番の野菜と豆のスープ、126番のマヨネーズ、134番のジェノヴァ風の魚のソース、209番の揚げる脂)
  8. Comune di Firenze(Feel Florence)「Le ricette della tradizione」2020(リボッリータ6人分で炒めるオイル大さじ3〜4、パッパ・アル・ポモドーロは皿ごとに生のオイルをひと筋)
  9. 高島市農業政策課「オリーブオイルテキスト Vol.7」令和4年8月(精製したオリーブオイルと「ピュア」の表示)