この記事でわかること
- 中華の献立はどう組むか
- 味をつけない飯に、取り分ける菜と湯を1つ。菜は1皿1つの味型にする
- 何品作ればいいか
- 4人なら菜3品と湯1つ。野菜は合計400g以上、魚・肉・卵は160〜280g
- 炒め物を何品も作ると冷める
- 炒めは1〜2品に絞り、ほかは先に作れる和え物・蒸し物・煮物にする
- 味が似た料理ばかりになる
- 皿ごとに味型と加熱法を替え、醤油色の煮物を2品並べない
- 中華のコースはなぜ冷菜が先なのか
- 宴席は最初に冷菜が出る。冷菜は先に作って並べておける。熱菜は1皿ずつ
麻婆豆腐、回鍋肉、青菜のオイスターソース炒めを作りました。どれも一皿ずつはおいしいのに、並べると全部が茶色く、全部が濃く、最後の炒め物を作っているうちに最初の皿が冷めていきます。
中華の献立は、味をつけない飯(ファン)に、卓の中央で取り分ける菜(ツァイ。おかず)と湯(タン。スープ)を合わせて組みます。菜の数を人数で増やし、味と火を皿ごとに替えると、並べたときに味が重ならず、炒めも冷まさずに卓へ出せます。
この記事では、中国料理が日々の食事と宴席の献立をどう組むかを扱います。1皿の中の味の合わせ方は五味調和、合わせ調味料の比率は合わせ調味料、炒めの温度と量は中華の火加減にあります。
中国料理の食事は、飯と菜と湯で組む
中国の日々の食事は、味をつけずに炊いた穀物の飯が中心にあり、菜はその飯を食べるための料理です。
飯は味をつけない穀物、菜はそれを食べるための料理
周代の制度を記した『周礼』(しゅらい)は、王の食事を「食(飯)には六穀、膳(おかず)には六牲(家畜の肉)」と分けて書いています。
中国の食文化の研究でも、飯と菜の区別が食事の土台とされ、整った食事は飯と菜を両方そろえることだと説明されます。
南では米の飯が、北では麺が飯の役を受け持つことが多くなります。どちらも味をつけずに出し、塩と香りは菜の側に置きます。
飯と菜の1人分の量
| 品 | 受け持つこと | 1人1食の量(g) |
|---|---|---|
| 飯 | 味の無い主食。菜の味を受け止める | 70〜100(炊く前の米) |
| 野菜の菜 | 飯を食べるための味と、かさ | 100以上 |
| 魚・肉・卵の菜 | 飯を食べるための味と、うま味 | 40〜70 |
出典: 《中国居民膳食指南(2022)》の1日量を3で割った値(中国料理の医食同源と同じ)。量は炊く前・調理前の重さです。
飯は1人1碗ずつよそい、菜は大皿に、湯は大碗に盛って卓の中央に置きます。湯には青菜や卵を入れ、野菜の量の一部を受け持たせます。
菜は卓の中央に置いて取り分ける。数は人数で増やす
中国料理の菜は大皿に盛って卓の中央に置き、各自が取り皿に取ります。
菜は大皿に盛り、人数分をまとめて取り分ける
1品を人数分まで大きくすると、炒めは家のコンロで1回150〜200g(1人半〜2人分)しか炒められないので(中華の火加減)、2回・3回に分けることになります。
だから人数が増えたら、1品を大きくするより品を増やして量を配ります。店でも、注文は1人1品が目安と案内されます。
取り分けには公筷(ゴンクワイ。取り分け用の箸)を使います。中国の食事指針も、同じ卓で食べるときは公筷を使うよう勧めています。
4人なら菜3品と湯1つ
菜の数は、人数から1を引いた数を目安にします。湯が青菜や卵で1品分の野菜と卵を受け持つからです。2人だけは、味の違う2品を並べるために菜を2品にします。
| 人数 | 菜(品) | 湯(品) | 野菜の合計(g) | 魚・肉・卵の合計(g) | 炊く前の米(g) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2 | 2 | 1 | 200以上 | 80〜140 | 140〜200 |
| 3 | 2 | 1 | 300以上 | 120〜210 | 210〜300 |
| 4 | 3 | 1 | 400以上 | 160〜280 | 280〜400 |
| 6 | 5 | 1 | 600以上 | 240〜420 | 420〜600 |
出典: 量は飯と菜の1人分の量に人数を掛けた値。菜の数は、店の1人1品の目安から湯の1品を引いた、この記事の目安です。
4人なら、野菜400g以上と魚・肉・卵160〜280gを3つの菜と湯に配ります。たとえば肉と野菜の炒め1品、豆腐か魚の蒸し物か煮物1品、野菜の和え物1品、卵と青菜の湯です。
菜ごとに味型と火を替える
大皿の菜は全員が全部の皿から取るので、皿どうしの味と火が重なると、どの皿を取っても同じ味になります。
1皿は1つの味型。隣の皿とは味型を替える
味型(あじがた)は、魚香(ユイシャン)・宮保(ゴンバオ)・糖醋(タンツー。甘酢)のような、主になる味の並びに付いた名前です(合わせ調味料)。
四川料理には「一菜一格、百菜百味」(一皿に一つの性格、百皿に百の味)という言い回しがあります(五味調和)。
1皿の中では主になる味を1つに絞り、卓の上では皿ごとに別の味型を並べます。醤油と豆板醤の濃い皿を1つ置いたら、ほかは塩だけで炒める清炒(チンチャオ)や、酢と生姜の和え物にします。
炒めは1〜2品に絞り、ほかは蒸す・煮る・和える
4人分の炒め物は、1品で2回、2品なら4回、鍋を洗って熱し直すことになります。炒めは置くと冷め、青菜は塩で水が出ます。
炒めは1〜2品にして、ほかの菜は先に作っておける蒸し物・煮物・和え物にします。
| 主になる菜 | 合わせる菜 | 避ける組み合わせ |
|---|---|---|
| 炒め(魚香肉絲〈ユイシャンロウスー〉・回鍋肉) | 蒸し魚か煮た豆腐、青菜の和え物、澄んだ湯 | 同じ味型の炒めをもう1品 |
| 甘酢の揚げ物(糖醋排骨〈タンツーパイグー〉) | 青菜の清炒、蒸し卵、澄んだ湯 | 酢の和え物、もう1品の揚げ物 |
| 醤油の煮込み(紅焼肉〈ホンシャオロウ〉・麻婆豆腐) | 青菜の清炒、きゅうりの和え物、澄んだ湯 | 醤油色の煮物をもう1品 |
| 蒸し魚(清蒸魚〈チンジョンユイ〉) | 宮保や魚香の炒め、和え物 | 淡い蒸し物をもう1品 |
出典: 味型は合わせ調味料、一菜一格は五味調和、炒めの量は中華の火加減をもとにこの記事で組み合わせた例です。
色と口当たりも皿ごとに替える
紅焼(ホンシャオ。醤油と砂糖の煮込み)や麻婆豆腐は茶色から赤に寄ります。隣には青菜の緑、豆腐や蒸し魚の白を置きます(色香味形)。
とろみをつけた菜(とろみ)が2品続くと、どの皿も口当たりが同じになります。とろみは1〜2品にして、ほかは汁気の少ない炒めや和え物にします。
家で作る段取り。湯と煮物を先に、炒めを最後に
段取りは、鍋から出してすぐ卓に出したい炒めを最後に置き、そこから逆算します。炒めの調味料と片栗粉は、碗汁(ワンジー)として先に碗で合わせておきます(合わせ調味料)。
炒めは鍋底に汁がたまり始める前に皿へ移します。1回目を皿に移したら、鍋を洗わずに2回目を炒め、2回目が終わったところで1つの大皿にまとめて卓に出します。
先に煮る湯は、鶏や豚の骨から取った湯か、鶏ガラスープの素を湯100mlに約1.7g溶いたものに、青菜と卵を入れます(中華の湯)。4人分なら湯600ml、素なら小さじ4(約10g)です。
塩は0.6〜0.8%と菜より淡くし、味見して菜より塩気がはっきり弱いところで止めます。
宴席は、冷菜から熱菜・湯・主食の順に出す
宴席では、家の食事のように全部を一度に並べず、1皿ずつ順に出します。順の骨組みは多くの地方で共通しますが、湯の位置や品数は地方と店で変わります。
| 出る順 | 中身 | 出し方 |
|---|---|---|
| 1 | 冷菜(ロンツァイ。和え物・卤味・燻製) | 客がそろう前に並べておく |
| 2 | 熱菜(ルーツァイ。炒め・揚げ物・蒸し物・煮込み) | 1皿ずつ |
| 3 | 大菜(ダーツァイ。丸ごとの魚や鶏など、席の中心の皿) | 熱菜の間か後 |
| 4 | 湯 | 熱菜のあと(地方によっては前や間) |
| 5 | 主食・点心(てんしん。ご飯・炒飯・麺・餃子・包子) | 終わり近く |
| 6 | 甜品(ティエンピン。甘い湯や菓子)・果物 | 最後 |
出典: 英語版 Wikipedia「Customs and etiquette in Chinese dining」と China Highlights(記事末尾の参考文献)。順と品数は地方・店・席の格で変わります。
冷菜は最初に、客がそろう前に並べる
冷菜は、和え物や卤味(ルーウェイ。香辛料の煮汁で煮て冷ました肉)のように冷たいまま出す料理です。前もって作って盛っておけるので、客がそろう前から卓に並べられ、最初の酒の肴になります。
熱菜は1皿ずつ出す
国賓を迎える国宴(こくえん)の「四菜一湯(スーツァイイータン)」は、冷菜(大皿1つのことも小皿7〜8皿のこともある)と甘味を数えずに熱菜4品と湯1つで、4品を1つずつ出しました。
炒めは家庭のコンロでも1回60〜90秒(もやし200g)で仕上がります。盛る直前に回した香りの油は、盛ってから時間がたつほど香りが逃げます(色香味形)。
1皿ずつ出せば、どの皿も鍋から出てすぐに卓に届きます。
主食は終わり近くに出る
宴席では菜を酒とともに食べ、ご飯・麺・餃子などの主食は終わり近くに出ます。腹を満たす主食を先に出すと、あとの菜が食べられなくなるからだと説明されることが多いですが、理由を述べた一次の資料は確認できませんでした。
湯の位置は地方と店で変わる
台湾の伝統の宴席、辦桌(バンドー)では、1品目の冷盤の次、2品目に紅焼羹(ホンシャオゲン。とろみのある汁)が出ます。湯を熱菜のあとに置く順とは逆です。
一汁三菜は1人分ずつ並べ、中国料理は卓の中央で取り分ける
日本と中国の家の食事は、どちらも味をつけない主食を中心にしますが、おかずの出し方と味の配り方が違います。
| 日本料理(一汁三菜) | 中国料理(飯・菜・湯) | |
|---|---|---|
| 主食 | 塩を入れないご飯 | 味をつけない飯(北は麺も) |
| 飯と汁の置き方 | ご飯は左手前、汁は右手前 | 『礼記』曲礼も、飯は左、羹(あつもの。汁)は右 |
| おかずの出し方 | 1人分ずつ同時に並べる | 大皿を卓の中央に置いて取り分ける |
| おかずの数 | 主菜1・副菜2で決まっている | 人数で増やす(4人なら菜3品) |
| 味の配り方 | 塩とうま味を主菜に寄せ、副菜は淡く | 1皿1つの味型にして、皿ごとに替える |
| 温かい料理の出し方 | 温かい品をご飯・汁・主菜の3つに絞る | 炒めを最後に作る。宴席は1皿ずつ |
| 改まった席の主食 | 茶懐石は最初、会席は最後 | 宴席は終わり近く |
出典: 日本は日本料理の献立、中国はこの記事の出典。
年越しの食卓では、魚を食べきらずに残す
年越しの家族の食事、年夜飯(ニエンイエファン)では、魚を当日食べきらずに残す習わしがあります。魚(ユー)と余(ユー。余り)の音が同じで、「年年有余(毎年ゆとりがある)」にかけたものです。
うまくいかせる条件
| こんなとき | どうするか | 理由 |
|---|---|---|
| 炒め物を2品作りたい | 2品目は肉を使わない青菜の清炒にし、湯と煮物を先に仕上げてから続けて炒める | 青菜だけの炒めは肉に火を通す工程が無く、1品目を待たせる時間が短い |
| 主になる菜が麻婆豆腐か回鍋肉 | ほかの菜は塩の清炒と酢の和え物にし、湯は澄んだもの | 豆板醤の塩とうま味が重なる |
| 2人分だけ作る | 菜2品と湯1つ。炒め1品と、先に作れる和え物か蒸し物 | 2人分の炒めは1回で済む |
| 来客がある | 冷菜を2〜3品先に作って並べ、熱菜は1品ずつ出す | 炒めを待つ間も卓に皿がある |
| 飯を汁麺にする | 湯を作らず、菜を1品減らす | 汁麺の汁が湯の代わりになる |
よくある失敗と対策
味が濃い・塩辛い部分的
- なぜ
- 回鍋肉・麻婆豆腐・青菜のオイスターソース炒めを並べ、3品とも塩とうま味の濃い調味料で、どの皿も塩が強くなりました
- どうする
- 湯を具の多い淡い湯にし、飯を多めによそいます
- 次から
- 塩とうま味の濃い味型は1品にとどめ、ほかの菜は塩だけの清炒か、酢を使う和え物にします
油っぽい・重い回復できる
- なぜ
- 炒め物2品と揚げ物で、酢の皿も汁気の多い皿も無かったため、口の中に油脂が残り続けました
- どうする
- 酢を使う和え物を1品足し、湯を澄んだものにします。酸味と水気が、口に残った油脂を流します
- 次から
- 油を多く使う菜は1品にし、ほかは蒸す・煮る・和えるにします
水っぽい・ゆるい部分的
- なぜ
- 青菜の炒めを先に作って置いたため、塩の浸透圧で葉の細胞から水が引き出され、皿に汁がたまりました
- どうする
- 皿の汁を捨て、強火の鍋で10秒ほどあおって盛り直します
- 次から
- 青菜の炒めは最後に作り、鍋から出たらすぐ卓に出します
冷めると固くなった回復できる
- なぜ
- 炒め物を2品続けて作るうちに先の1品が冷め、肉の脂が固まってとろみもゆるみました
- どうする
- 鍋で湯を大さじ1足して温め直し、とろみがゆるんだら片栗粉小さじ1/2を水小さじ1で溶いて加えます
- 次から
- 炒めは1〜2品に絞り、ほかの菜と湯を先に仕上げてから、炒めを最後に1品ずつ作ります
中国料理の献立で押さえる4つ
中国料理の献立は、味をつけない飯を、卓の中央で取り分ける菜と湯で食べ進めるための組み方です。
- 菜の数は人数から1を引いた数が目安です。4人なら菜3品と湯1つで、野菜400g以上、魚・肉・卵160〜280gです
- 1皿は1つの味型に絞り、皿ごとに味型・加熱法・色を替えます
- 炒めは1〜2品にして最後に作り、湯・煮物・和え物は先に仕上げます
- 宴席は冷菜から始め、熱菜を1皿ずつ出し、主食は終わり近くに出します。順と品数は地方と店で変わります
参考文献
- 『周礼』天官冢宰・膳夫(「凡王之饋,食用六穀,膳用六牲」)Wikisource 周禮/天官冢宰
- 『礼記』曲礼上(「凡進食之禮,左殽右胾,食居人之左,羹居人之右」)Wikisource 禮記/曲禮上
- K. C. Chang ed., Food in Chinese Culture: Anthropological and Historical Perspectives, Yale University Press, 1977(飯と菜〈fan-ts'ai〉の区別。Asia Society の紹介)
ほか8件を見る
- 上海交通大学公共衛生学院「2022版《中国居民膳食指南》権威科普解読」2022年5月(穀類200〜300g、野菜300g以上、魚禽卵赤身肉120〜200g)
- 人民日報「《中国居民膳食指南(2022)》发布 合理膳食 吃出健康」2022年5月20日(平衡膳食八準則。第八「公筷分餐,杜絶浪費」)
- 呉徳広「亲历者讲述国宴变迁」人民文摘 2012年9月(国宴の四菜一湯。冷盤と甘味は数えず、4菜は1つずつ出す)
- 黃婉玲「辦桌宴席最重視前三道菜」foodnext 2021年5月11日(台湾の辦桌は1品目が冷盤、2品目が紅焼羹)
- 許瑩瑩(央視網)「柿子、吃鸡、鱼跃餐桌,好彩头!说年俗 中国人的年夜饭」光明網 2025年1月28日(年夜飯の魚を当日食べきらない)
- Customs and etiquette in Chinese dining(Wikipedia。宴席の順と地方差、1人1品の目安)
- China Highlights「How a Chinese Meal Is Served」(冷菜・熱菜・湯・果物の順、注文は1人1品が目安、南は米・北は麺)
- 味の素株式会社「丸鶏がらスープ」商品詳細(小さじ1=約2.5g、4人前のスープは水600mlに小さじ4)