日本料理の基礎を覚える順番|包丁・卵・だし・五法と、学校の採点表

日本料理の基礎を覚える順番|包丁・卵・だし・五法と、学校の採点表

この記事でわかること

日本料理の基礎は何から覚える?
包丁→だし巻き卵→だし→五法の献立→3品の順
だし巻き卵の上手い下手の基準は?
厚みと形が揃い、断面に空洞がなく、焦げ目がない
だしの出来はどこで見る?
濁りの有無。学校の採点は澄んで5点・やや濁り4点
プロの物差しはどこにある?
国の技能試験。3品を標準1時間20分で仕上げる

煮物も焼き魚も作れます。けれど、和食が上手くなったのかどうかは自分では分からず、次に何を練習すればいいのかも見えません。日本料理には、調理師学校の競技会の採点表と国の技能試験という、公開された物差しがあります。

この記事では、日本料理の基礎を包丁の次に来る卵・だし・五法(ごほう)・献立まで含めて、どの順に身につけ、いまどこにいるかをどう測るかを扱います。

包丁だけの段は日本料理の包丁技術に、日本料理が他の料理とどう違うかは日本料理の特徴にあります。

日本料理の基礎は、学校と試験の課題の並びで5段に分かれる

調理師学校の実習と競技会、国の技能試験の課題を易しい順に並べると、日本料理の基礎は5段に分かれます。

包丁で剥いて切ることから始まり、魚をおろしてだし巻き卵を焼き、だしを澄ませて椀物(わんもの。椀に汁を張って具を入れた料理)に仕立てる段へ進みます。

その先で、五法(切る・焼く・煮る・蒸す・揚げる)のうち4つの加熱を1つの献立に揃え、最後に3品を時間内に仕上げます。

段できるようになること物差し次の段へ進む目安
1包丁で剥く・切る学校の競技会(地区大会)の野菜の課題かつらむきが厚さ1mmで50cm続く
2あじをおろし、だし巻き卵を焼く学校の競技会(地区大会)の採点だし巻き卵の3項目が5点の状態
3だしを澄ませて、椀物に仕立てる学校の競技会(全国大会)の採点だしが濁らず、蓋を取ると湯気が立つ椀を出せる
4焼く・煮る・蒸す・揚げるを1つの献立に揃える調理師学校の後期の実習(会席〈かいせき〉・松花堂弁当〈しょうかどうべんとう〉)揚げたての天ぷらと蒸したての茶碗蒸しを、同じ盆で出せる
53品を時間内に仕上げる国の技能試験の実技3品を標準1時間20分

出典: 1・2段目は全国調理師養成施設協会 第42回グルメピック地区大会(2026年8月)、3段目は同 全国大会、4段目は辻調理師専門学校 学校案内2025のステップアップ・チャート、5段目は調理技術技能センターの令和7年度実技試験問題。

順番は、学校と試験の課題の並びから取っている

辻調理師専門学校の日本料理の実習は、桂剥き(かつらむき)を中心に「剥く」「切る」から始まります。次に魚の三枚おろしと五法を学びます。

後期に会席(酒席で料理を1品ずつ順に出すコース)をチームで再現し、1年の締めくくりが松花堂弁当(十字に仕切った箱に料理を詰める弁当)です。

学校の競技会では、在学生が出る地区大会で、野菜を切り、あじをおろし、卵を焼きます。その上の全国大会で、魚の姿造り(すがたづくり。頭と尾を付けたまま盛る刺身)と椀物が課題になります。

1段目:包丁で、剥く・切るを揃える

最初の目安は、大根のかつらむきを厚さ1mmで50cm続けることです。厚さは、剥いた帯を10枚重ねて1cm以下なら、1枚あたり1mm以下が目安です。

学校の競技会では、この長さでかつらむきの長さの項目に5点がつきます。包丁は研いでから測ります。競技会の全国大会では、包丁の手入れの状態も採点されます。

せん切り・千六本(せんろっぽん)の寸法から、薄刃(うすば)・出刃(でば)・柳刃(やなぎば)を持ち替える段までは、日本料理の包丁技術に5段で分けてあります。この記事では、包丁の段をここで1つにまとめて先へ進みます。

2段目:あじをおろし、だし巻き卵を焼く

学校の競技会の地区大会では、日本料理部門の課題が5つあります。野菜の切り方3つ(かつらむき、繊維に直角に細く切る横けん、きゅうりに細かい切り込みを入れるじゃばら)、あじの三枚おろし、だし巻き卵で、合わせて45分です。

だし巻き卵は、厚み・巻き・焦げ目で採点される

同じ紺色の角皿にのせた、だし巻き卵の切り口を正面から撮った2枚。左は薄い卵の層が渦を巻いてほぼすき間なく重なっている。右は中心近くの層が浮いて、横長の空洞が開いている。どちらも表面は淡い黄色で焦げ目はない

だし巻き卵は、M玉4個とだし100mlで焼きます。卵焼き器は銅製で、巻き方は問われません。

だし巻き卵の採点項目5点の状態1点の状態
厚みと形全体の厚みが均一で、小判型に整っている厚みも形も全体に整っていない
内側の巻き目立つ空洞がなく、均一に巻かれている空洞が目立ち、均一に巻かれていない
焦げ目全体に焦げ目がない全体に焦げ目がある

出典: 全国調理師養成施設協会「第42回グルメピック実施要領」地区大会・日本料理部門の卵料理の審査項目(2026年8月)。各項目5〜1点。

あじは、中骨に身が残らないかで採点される

あじの三枚おろしは、中骨に身が残っていないかで採点されます。下ごしらえ・中骨と腹・身の残りという採点の3か所は、日本料理の包丁技術の三枚おろしの節にあります。

次の段へ進む目安は、あじの中骨に身が残らず、だし巻き卵の3項目がそろって5点の状態になることです。切り口を見れば、空洞の有無は自分で確かめられます。

3段目:だしを澄ませて、椀物に仕立てる

全国大会の日本料理部門は、小鯛の姿造りと、冷凍の海老を使った椀物の2品です。2品を60分以内に仕上げます。

だしは、濁りの有無で5段階に採点される

だしは、支給のかつお節40gと昆布だしから、その場で引きます。昆布だしは、水1カップに昆布3gの割合で支給されます。

だしの取り方の採点状態
5点手順に問題がなく、澄んだだしが取れている
4点手順に問題はないが、だしがやや濁っている
3点手順に問題はないが、だしが濁っている
2点手順にやや問題がある
1点だしの取り方がまったく身についていない

出典: 全国調理師養成施設協会「第42回グルメピック実施要領」全国大会・日本料理部門の作業審査(2026年8月)。

だしが濁る主な原因は、昆布を沸騰させること、かつお節をグラグラ煮出し続けること、漉すときに絞ることの3つです。昆布は60℃前後、かつお節は沸騰直前の85℃前後で1〜2分、という温度の理由はだしの科学にあります。

椀物は、汁の味と温かさでも採点される

椀物は、吸地(すいじ。椀に張る、味をつけただし)でも別に採点されます。風味・味付け・温かさで15点です。日本料理部門の85点のうち、だしの取り方と吸地で20点がつきます。

次の段へ進む目安は、だしが濁らず、蓋を取ると湯気が立つ椀を出せることです。

4段目:焼く・煮る・蒸す・揚げるを1つの献立に揃える

調理師学校の後期は、会席のコースをチームで再現し、締めくくりに松花堂弁当を作ります。松花堂弁当は、焼く・煮る・揚げるなどで作った料理を1つの器に詰めます。別々の火にかけた料理を、同じ時刻に仕上げる段取りが課題になります。

4つの加熱には、それぞれ外さない数字があります。

加熱代表の料理外さない目安詳しく
焼く魚の塩焼き遠火の強火(火から離して、強い火で焼く)日本料理の火加減
煮る炊き合わせ(たきあわせ。別々に煮たものを1つの器に盛る)八方だし(はっぽうだし。だし8:みりん1:醤油1)和食の「地」の体系
蒸す茶碗蒸し蒸し器の中を85〜90℃に保つ卵の科学
揚げる天ぷら油は180℃(衣を1滴落とすと沈まずに浮く)揚げの技術

出典: 目安はリンク先の各記事。切るは1段目で扱っています。

次の段へ進む目安は、揚げたての天ぷらと蒸したての茶碗蒸しを、同じ盆で出せることです。天ぷらを最後に揚げ、そこから茶碗蒸しを蒸し器に入れる時刻を逆算できるかで、段取りの力が見えます。会席の料理の順は日本料理の献立にあります。

5段目:3品を1時間20分で仕上げる

職業としての物差しは、国の技能試験(調理技術技能評価試験)の実技です。受験には実務8年以上(調理師養成施設の卒業者は6年以上)が要ります。

下処理は標準10分、3品の調理は標準1時間20分で、打切り(うちきり)は1時間30分です。包丁は小出刃・柳刃・薄刃を持参し、洋包丁は使えません。

日本料理の実技試験作るもの使う技
課題Ⅰ小鯛の姿造りと網大根(包丁目を入れてかつらむきにし、網のように広げた大根)おろす・湯霜(ゆしも)・かつらむき
課題Ⅱ蟹砧巻き(かにきぬたまき)と黄身酢きゅうりのかつらむき・塩水に漬ける・合わせ酢
課題Ⅲあなごの八幡巻き(やわたまき)と平打ちあなごを裂く・ごぼうを芯に巻く・串を打つ

出典: 調理技術技能センター「令和7年度 実技試験問題(日本料理)」「試験の概要」。

湯霜は、魚の皮に熱湯をかけてすぐ冷水に取る下ごしらえです。平打ちは、焼く前の八幡巻きに5本の金串を末広に打つ作業です。

1段目のかつらむきは網大根と砧巻きに、2段目のおろしは姿造りに使われます。

いまどこにいるかを、6つの課題で確かめる

課題を易しい順に並べました。順に試して、最初に届かなかった課題の段が、いまの段です。全部に届いていれば、5段目の3品に進めます。

試す課題届く目安届かなければ、いまの段
競技会と同じ高さ10cmの大根のかつらむき厚さ1mmで50cm以上1段目
あじの三枚おろし中骨に身が残らない2段目
M玉4個とだし100mlのだし巻き卵厚みと形が揃い、断面に空洞がなく、焦げ目もない2段目
一番だし(昆布とかつお節から最初に引くだし)漉したあと、器の底が透けて見える3段目
椀物蓋を取ると湯気が立つ3段目
焼物・煮物・蒸し物・揚げ物を1品ずつ揚げたての天ぷらと蒸したての茶碗蒸しを同じ盆で出せる4段目

一番だしの「器の底が透けて見える」は、採点表の「澄んだだし」を家で確かめるための目安です。白い器に注ぐと、濁りが見えやすくなります。

5段目の3品は、小鯛やあなごを揃えるところから家では難しく、国の試験そのものが物差しです。

競技会の和・洋・中で、だしを引かせるのは日本料理だけ

学校の競技会の全国大会の課題を3部門で並べると、土台になるだしの扱いが違います。

部門全国大会の課題土台になるだし
日本料理小鯛の姿造り、海老の椀物かつお節と昆布だしから、その場で引く。引き方が採点される
西洋料理鶏かぶと(胸を骨ごと切り出した鶏)の捌き、鶏胸肉のオレンジソースフォン・ド・ヴォー(仔牛のだし)は市販品が支給される
中国料理いかの松笠切り(格子の切り目を入れて開かせる)、豚もも肉の炒め物毛湯(マオタン。基本のスープ)は市販品の濃縮が支給される

出典: 全国調理師養成施設協会「第42回グルメピック実施要領」全国大会の課題と支給材料(2026年8月)。

この競技会の西洋と中国は、土台のだしを支給品に任せ、その先のソースや炒め物で腕を見ます。日本料理部門だけが、だしを引く手順そのものを採点に入れています。

フランスと中国の段の上がり方は、フランス料理のスキルマップと中華料理のスキルマップにあります。