草菇醤油(草菇老抽 / cǎo gū lǎo chōu)は、老抽をベースに草菇(藁茸 / わらたけ)のエキスを加えた旨味強化型の中国醤油です。通常の老抽が持つ着色力・照り出し機能に加え、キノコ由来の天然旨味成分が加わることで、煮込み料理に奥行きのある風味を与えます。
中国では海天(Haitian)の草菇老抽が圧倒的なシェアを持ち、家庭の常備品として広く使われています。
基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 中国語 | 草菇老抽(cǎo gū lǎo chōu) |
| ベース | 老抽(着色用醸造醤油 + カラメル) |
| 追加成分 | 草菇(藁茸)エキス |
| 主な用途 | 煮込み(紅焼)・炒め物の色付け・照り出し |
| 位置づけ | 旨味強化型老抽 |
| 代表製品 | 海天草菇老抽 |
草菇(藁茸)とは
草菇(Volvariella volvacea)は、稲わらや綿花の殻を培地として栽培される熱帯性キノコです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 和名 | 藁茸(ワラタケ)/ フクロタケ |
| 学名 | Volvariella volvacea |
| 主な産地 | 中国南部(広東省・広西壮族自治区)、東南アジア |
| 栽培温度 | 28〜35°C(熱帯〜亜熱帯) |
| 世界消費量 | 食用キノコとして世界第3位 |
| 旨味成分 | グルタミン酸を100gあたり約70〜110mg含有 |
中国南部では生鮮の草菇が日常的に食べられていますが、日本では缶詰や乾燥品として流通しています。タイ料理のトムヤムクンやベトナム料理のフォーにも使われるキノコです。
成分と特徴
通常の老抽との違い
草菇老抽は、通常の老抽の機能(着色・照り出し)に加え、キノコ由来の旨味がプラスされた上位互換的な製品です。
| 項目 | 通常の老抽 | 草菇老抽 |
|---|---|---|
| 原材料 | 大豆・小麦・食塩・カラメル | 大豆・小麦・食塩・カラメル + 草菇エキス |
| 着色力 | 強い | 同等(変わらない) |
| 旨味 | 中程度(発酵由来) | 強い(発酵 + キノコ由来グルタミン酸) |
| 風味 | カラメルの甘み | カラメルの甘み + 土っぽい深み(earthy) |
| 粘度 | 高い(とろみあり) | 同等 |
| 塩分 | 14〜16% | 14〜16%(同等) |
| 価格 | 標準 | 標準の1.2〜1.5倍程度 |
| 代替性 | — | 通常の老抽の代わりにそのまま使える |
風味プロファイル
草菇老抽の風味は3つの層で構成されています。
- カラメル層: 老抽共通の甘苦い風味。砂糖を焦がしたような深い香り
- 発酵層: 大豆と小麦の発酵による醤油本来の旨味と塩味
- キノコ層: 草菇由来の土っぽい(earthy)深み。森の地面を思わせる独特の風味
通常の老抽では1と2のみですが、3のキノコ層が加わることで、煮込み料理の風味に奥行きが生まれます。
製法
草菇老抽は、老抽の製造工程の仕上げ段階で草菇エキスを加えて作られます。
基本的な製造工程
- 醸造: 大豆・小麦・食塩で醸造醤油(生抽相当)を製造する
- 追加熟成: カラメルを加え、さらに天日で熟成させて老抽にする
- キノコエキスの配合: 草菇を煮出した抽出液を老抽に混合する
- 最終熟成: 混合後、さらに短期間の天日熟成を経て風味をなじませる
- ろ過・殺菌・瓶詰め
品質の見分け方
| 品質指標 | 良い製品 | 注意が必要な製品 |
|---|---|---|
| 原材料表示 | 「草菇汁」「草菇提取液」が上位に記載 | 「草菇香精(香料)」のみ |
| アミノ酸態窒素 | 0.55 g/100mL以上 | 0.40 g/100mL未満 |
| 風味 | 自然なキノコの深みがある | 人工的なキノコ風味 |
原材料表示で「草菇」の記載位置を確認するのが、品質を見分ける最も簡単な方法です。上位に記載されているほど、実際のキノコエキスが多く使われています。
使い方
煮込み料理(紅焼)
草菇老抽が最も力を発揮するのは、煮込み料理(紅焼 / hóng shāo)です。
紅焼肉での使い方
| 材料 | 分量(4人前) |
|---|---|
| 豚バラ肉 | 500g |
| 生抽 | 大さじ2 |
| 草菇老抽 | 大さじ1 |
| 紹興酒 | 大さじ2 |
| 氷砂糖 | 20g |
| 水 | 300mL |
生抽で味を付け、草菇老抽で色と深みを加えるのが基本です。生抽と草菇老抽の比率は2:1が目安です。
特に相性の良い煮込み料理
- 紅焼肉(豚の角煮)
- 紅焼茄子(茄子の煮込み)
- 紅焼排骨(スペアリブの煮込み)
- 紅焼豆腐
炒め物
炒め物では、仕上げに少量加えることで色と旨味を同時に付与します。
- 回鍋肉: 仕上げに草菇老抽を小さじ1〜2加え、照りと深みを出す
- 什錦炒蔬菜(野菜炒め): 多種のキノコを含む野菜炒めに加えると、キノコの風味が増幅される
- 炒飯: 仕上げに少量かけ回し、香ばしい色と旨味を加える
きのこ料理との相性
草菇老抽はキノコ料理と組み合わせると、旨味の相乗効果で特に良い結果が得られます。
| 料理 | 使い方 | 効果 |
|---|---|---|
| 干し椎茸の煮物 | 戻し汁 + 草菇老抽で煮る | キノコ × キノコの旨味増幅 |
| きのこ鍋 | スープに大さじ1加える | 深い色と複合的な旨味 |
| キノコ炒め | 仕上げに小さじ1 | キノコ風味の一体感 |
| 精進料理の煮込み | 肉を使わない煮込みのコク出し | 植物性の旨味を重層的に |
通常の老抽との使い分け
| 場面 | 草菇老抽 | 通常の老抽 |
|---|---|---|
| 紅焼肉 | より深みのある仕上がり | 標準的な色付け |
| きのこ料理 | 旨味が増幅される(推奨) | キノコ風味の増幅はない |
| 炒飯 | やや高級な仕上がり | 十分に美味しい |
| 甘辛煮 | コクのある仕上がり | 色付け主体 |
| 色だけ付けたい場合 | やや割高 | 十分(こちらが適切) |
結論として、草菇老抽は通常の老抽を置き換えて使えます。色付けの機能は同じで、旨味が加わる分だけ上位互換です。予算に余裕があれば、草菇老抽を常備醤油にする選択肢も合理的です。
おすすめブランド
| ブランド | 商品名 | 特徴 | 日本での入手しやすさ |
|---|---|---|---|
| 海天(Haitian) | 草菇老抽 | 中国で最も売れている草菇老抽。コスパが良く品質も安定 | 中程度(中華食材店) |
| 李錦記(Lee Kum Kee) | 草菇老抽 | 品質が高く風味のバランスが良い。やや高価 | 高い(Amazon・中華食材店) |
| 珠江橋(Pearl River Bridge) | 草菇老抽 | 広東の老舗ブランド。伝統的な風味 | 中程度(中華食材店) |
海天の草菇老抽は中国での年間販売量が最も多く、500mLボトルで200〜400円程度と手頃です。日本では中華食材店やオンラインショップで入手できます。
保存方法
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 未開封 | 常温で約18〜24ヶ月 |
| 開封後 | 常温で6ヶ月、冷蔵で12ヶ月が目安 |
| 注意点 | 老抽は粘度が高いため、注ぎ口に醤油が固まりやすい。定期的に拭き取ること |
老抽系の醤油は生抽より保存性が高い傾向があります。カラメルと高い粘度が酸化を遅らせるためです。
まとめ
- 草菇老抽は老抽の旨味強化版: 藁茸(草菇)エキスが加わることで、着色力はそのままに旨味が増したバージョンです
- 通常の老抽をそのまま置き換え可能: 使い方は老抽と同じで、旨味が加わる分だけ料理の仕上がりが良くなります
- 煮込み料理で最も力を発揮: 紅焼肉や紅焼茄子など、じっくり煮込む料理で深みのある風味を出します
- キノコ料理との相性が抜群: キノコ食材と組み合わせると旨味の相乗効果が生まれます
- 海天草菇老抽が定番: 中国で最も普及しており、品質・コスパともに安定しています
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