中国料理の考え方|味は五味調和、一皿は色香味形、献立は医食同源で組む

中国料理の考え方|味は五味調和、一皿は色香味形、献立は医食同源で組む

この記事でわかること

中国料理が大事にしてきたこと
五味調和・色香味形・医食同源の3つ
それぞれが効く場面
献立と材料をそろえるとき・切って組むとき・味を付けるとき
3つのつながり
蟹に生姜を添えるのは、臭みを除く手順でもあり、寒に温を添える組み方でもある
日本料理との違い
除いたあと重ねて一つにし、具は火に合わせて同じ形に切る

麻婆豆腐のレシピには調味料が5つも6つも並び、炒め物のレシピには「材料は同じ大きさに切る」とあり、鶏のスープのレシピにはクコの実となつめが入ります。どれも中国料理の約束ごとですが、出てくる場面はばらばらです。

並べ直すと、3つは台所の別々の場面に当たります。クコの実は材料をそろえるとき、同じ大きさは切るとき、調味料の数は味を付けるときの話です。

中国料理が大事にしてきたことは、五つの味を合わせて一つにする五味調和(ごみちょうわ)、一皿を色・香り・味・形で見る色香味形(しきこうみけい)、毎日の食事で体を養う医食同源(いしょくどうげん)の3つに分けられます。

ここでは、3つがそれぞれ台所のどの場面に効くかと、互いのつながりをまとめます。

中国料理が大事にしてきたのは、五味調和・色香味形・医食同源

3つは見るところが違います。医食同源は食べる人の体と季節、色香味形は一皿全体、五味調和は口の中の味を見ます。

大事にすること効く場面迷ったとき目安の一例
医食同源献立と材料をそろえるとき穀物を土台にし、季節で食材と火を替える穀物は1日200〜300g(炊く前)
色香味形切って組むとき・炒め始め・盛る直前配料の色、切る形、香りを入れる時点をそろえる厚さが2倍なら火が通る時間は約4倍
五味調和味を付けるとき塩を土台に、主になる味を1皿に1つ選ぶ塩は料理全体の1%前後

出典: 数値は各記事の値。拠り所は『黄帝内経素問』(こうていだいけいそもん)蔵気法時論、中式烹調師(ちゅうしきほうちょうし)の国家職業技能標準、『呂氏春秋』(りょししゅんじゅう)本味篇(参考文献)。

表は、台所で手を動かす順(そろえる→切る→味付け)に並べています。レシピの1工程で迷ったら、その工程がどの場面に当たるかを見て、表の「大事にすること」の列の記事を開きます。

3つは、同じ組み合わせと同じ一手で重なる

3つは別々の約束ではありません。同じ一手が、2つの考え方から同時に選ばれていることがあります。

蟹に生姜を添えるのは、五味調和と食養の両方から

蒸した蟹を生姜と酢で食べる組み合わせは、五味調和では臭みを除く手順です。蟹のように素材の味が強いものは、甘・酸・辛を重ねずに生姜と酢で止めます(五味調和)。

同じ組み合わせが、食養では寒(体を冷やすとされる)の蟹に、温(温めるとされる)の生姜を添える組み方になります(医食同源)。体の側と味の側から、同じ一皿が選ばれています。

盛る直前の香りの油は、味の入れる時でもあり、香りの2回目でもある

五味調和は、同じ量でも入れる時で味が変わると考えます。ごま油やねぎ油は加熱で香りが飛ぶので、盛る直前に小さじ1/2〜1を表面にのせます。

色香味形では、この油が香りの2回目です。1回目は炒め始めに葱・生姜・にんにくで油に香りを移し、2回目に飛んだ香りをのせ直します。油膜は表面の照りも作るので、色の物差しにも入ります。

主になる味は1皿に1つ。献立では皿ごとに替える

五味調和は、一皿に主になる味を1つに絞ります。四川料理の「一菜一格、百菜百味」(一皿に一つの性格、百皿に百の味)です。

広東料理の技能大会の採点表(色香味形)でも、口で見る味と質感が100点中60点、目で見る色と形は合わせて25点です。色と形は、味の代わりにはなりません。

皿ごとに別の味型(あじがた。合わせ調味の型)を並べて献立を組む方法は中華の献立にあります。

日本料理との違いは、除いたあと・切った形・季節の選び方

3つとも、中国料理だけが持つものではありません。日本料理と並べると、向かう先が違います。

大事にすること中国料理日本料理
五味調和除いたあと、塩の土台に甘・酸・苦・辛を重ねる除いたあと、地(先に合わせる調味液)で一度に入れる
色香味形主料と配料を同じ形にそろえ、火の通りを合わせる刺身のように、切り口そのものを見せる
医食同源食べる人の体と季節で食材を選ぶ同じ食材の味が時期でどう変わるかで選ぶ(旬)
器(色香味形)大皿を満たし、取り皿で加減する料理ごとに器を替え、中に余白を残す

出典: 各記事の比較の節。日本料理の側は日本料理の考え方にあります。

体系全体を他の料理と並べた違いは中華料理の特徴の比較にあります。

3つを実際の料理にする技法

3つを実際の料理にするには技法が要ります。3つと技法は、次のようにつながります。

大事にすること技法つながるところ
五味調和合わせ調味料味型ごとの調味料を碗で先に合わせ、最後に1回で入れる
五味調和湯(タン)湯のうま味があると、塩を増やさずに味がまとまる
色香味形香味油100〜150℃で油に香りを移す
色香味形明油(ミンヨウ)盛る直前の香りの2回目。表面の照りも作る
色香味形中華のとろみ採点表の色の10点のうち4点が、とろみの付いた汁の具合
色香味形中華料理の火加減同じ形に切った具を、強火で短く仕上げる
医食同源湯(タン)夏の冬瓜を、鶏や豚の湯で煮る

出典: 五味調和・色香味形・医食同源の本文。

技法の側から見た6つの役目と鍋に入る順は中国料理の技法にあります。

油を先に高温まで熱しておく下準備は熟油(シューヨウ)に、基礎をどの順に身につけるかは中華料理スキルマップにあります。

中国料理の考え方で押さえる3つ

  • 献立と材料をそろえるときは医食同源。穀物を土台にし、季節で食材と火の入れ方を替えます
  • 切って組むときと香りを立てるときは色香味形。配料の色で主料を目立たせ、同じ形に切り、香りは炒め始めと盛る直前の2回立てます
  • 味を付けるときは五味調和。臭みを除き、塩を土台に、主になる味を1皿に1つ選んで重ねます

蟹に添える生姜のように、同じ一手が味の側と体の側の両方から選ばれます。