フランス料理の考え方|素材は産地で選び、技は名前でそろえ、皿はソースで仕上げる

フランス料理の考え方|素材は産地で選び、技は名前でそろえ、皿はソースで仕上げる

この記事でわかること

フランス料理が大事にしてきたこと
ソースで皿を仕上げる・技を名前でそろえる・素材を産地の名で選ぶ、の3つ
それぞれが効く場面
素材を選ぶとき・レシピを読んで切るとき・皿を仕上げるとき
3つのつながり
ソースは足す側、産地の名は足される側。仕上げのバターはどちらも45〜55℃
日本・中国料理との違い
ソースは別の鍋で作って皿の上で合わせ、名前は皿の中身と厨房の分業にまで付ける

材料欄に「AOPのバター」とあり、手順には「玉ねぎをブルノワーズに」とあり、最後に「ベアルネーズを添える」とあります。どれもフランス料理の約束ごとですが、出てくる場面はばらばらです。

並べ直すと、3つは台所の別々の場面に当たります。AOP(原産地呼称保護)のバターは素材を選ぶとき、ブルノワーズはレシピを読んで切るとき、ベアルネーズは皿を仕上げるときの話です。

フランス料理が大事にしてきたことは、素材を産地の名で選ぶ(テロワール)、技を名前と手順でそろえる、皿をソースで仕上げる、の3つに分けられます。

ここでは、3つがそれぞれ台所のどの場面に効くかと、互いのつながりをまとめます。

フランス料理が大事にしてきたのは、産地・名前・ソースの3つ

3つは、手に取るものが違います。産地の名は素材、名前はレシピの1語、ソースは主素材とは別の鍋で作る液体です。

大事にすること効く場面迷ったとき目安の一例
産地の名で選ぶ素材を選ぶとき作り方が生んだ香りや脂が皿まで残る、生・仕上げ・素材が主役の加熱に使うAOPのバターは火から外したソースに45〜55℃で溶かし込む
名前と手順でそろえるレシピを読んで切るとき名前が指す材料の比と寸法を守り、知らない名前は土台に1つの違いを足して読むブルノワーズは2mm角、マセドワーヌは5mm角
ソースで仕上げる皿を仕上げるとき主素材に足りない汁気・脂・酸を、主素材に合わせたフォンのソースで足すボルドレーズは赤ワイン300mlを75mlまで煮詰める

出典: 数値は各記事の値。拠り所はエスコフィエ『Le Guide Culinaire』、国家資格 CAP cuisine の技術の一覧、INAO(国立原産地・品質研究所)の定義とユネスコ「フランスの美食術」(参考文献)。

表は、台所で手を動かす順(選ぶ→読んで切る→仕上げる)に並べています。レシピの1工程で迷ったら、その工程がどの場面に当たるかを見て、表の「大事にすること」の列の記事を開きます。

3つは、足す側と足される側で組み、ソースも名前で呼ぶ

3つは別々の約束ではありません。選んだ素材にソースを重ね、そのソースも名前で呼びます。

ソースは足す側、産地の名は足される側の素材を選ぶ

ソースは、焼いた・茹でた主素材に足りないものを皿の上で足す液体です(ソースの役割)。産地の名は、その足される側の素材を選ぶ手がかりです(テロワール)。

フランスの食事の作法でも、よい、なるべく地元の、味の合う産品を買うことが、食事を整える手順の1つに数えられています。素材を名で選び、その素材に合うソースや付け合わせを重ねる順です。

仕上げのバターは、AOPでもパンソースでも45〜55℃

イジニーのバターは、クリームを12時間以上発酵させて作ります。発酵で生まれた香りの成分ジアセチルは沸点が約88℃で、香りを残すなら火から外したソースに45〜55℃で溶かし込みます(テロワール)。

肉を焼いた鍋のソース(パンソース)を仕上げる冷たいバターも、同じ45〜55℃で溶かし込み、60℃を超えると分かれます(ソースの役割)。

産地の名の付いたバターは、ソースの最後の一手に回すと違いが残ります。焦がしバターやソテーの油は、普通のバターで足ります。

ソースの派生も、土台に1つの違いを足した名前で読む

ベアルネーズは、白ワインとエストラゴン酢を同量ずつ合わせて3分の1の量まで煮詰め、卵黄とバターでつなぐソースです。家庭で卵黄2個なら、白ワインと酢を各70ml、バター170gです(ソースの役割)。

ショロンは、そのベアルネーズに体積の4分の1の濃いトマトピュレを足したものです(用語が細かい理由)。ソースの名前も、同じ名前なら同じ中身になるようにそろえてあるので、土台を1つ覚えれば派生が読めます。

日本・中国料理との違いは、味を入れる場所と名前を付けた所

3つとも、フランス料理だけが持つものではありません。違うのは、どこで味を入れ、何に名前を付け、何で素材を選び分けるかです。

大事にすることフランス料理日本料理中国料理
ソースで仕上げる主素材とは別の鍋でソースを作り、皿の上で合わせる比率の決まった地(合わせ調味液)で、煮る段階で一度に入れる鍋の中で調味料を具に絡め、仕上げに油を回す
名前と手順でそろえる切り方・焼き方・ソース・付け合わせ・持ち場に名前を付ける合わせ調味液の比率に名前を付ける(八方だしは、だし8:醤油1:みりん1)切り方の寸法に名前を付ける(丁は8〜10mm角、絲は幅2mm)

出典: ソースの役割と用語が細かい理由の比較の節。

素材を選ぶ軸は、日本料理の旬が「いつ獲れたか」で、フランス料理の産地の名は「どこで、どう作ったか」です。

日本料理はかつおの脂が春獲り0.5g・秋獲り6.2g(100gあたり)と時期で料理を替え、フランス料理はコンテの熟成120日以上のように作り方の違う素材を名で選び分けます(テロワール)。

日本料理の側は日本料理の考え方に、体系全体を他の料理と並べた違いはフランス料理の特徴の比較にあります。

3つを実際の料理にする手段と、コースでの形

3つを実際の料理にするには手段が要ります。3つと手段は、次のようにつながります。

大事にすること手段つながるところ
名前と手順でそろえる焼き技法11語ポワレの1語で、やや穏やかな火で溶かしバターをかけながら中まで焼くことが伝わる
名前と手順でそろえるワインの使い方ア・ラ・ブルギニョンは赤ワインで煮る。白ワインで煮たらその名では呼べない
ソースで仕上げる仕込み家庭でフォンを1種類だけ仕込むなら鶏のフォン
ソースで仕上げる火加減卵黄とバターのソースは60〜65℃で止める。安全を優先するなら殺菌液卵黄を使う
産地の名で選ぶバターとクリームAOPのバターは火を止めたあとの仕上げに回し、焦がす工程は普通のバターで

出典: ソースの役割・用語が細かい理由・テロワールの本文。

焼き以外の土台(仕込み・ワイン・バターとクリーム)が、焼いた鍋の上でどの順に入るかはフランス料理の土台にまとめています。

名前がそろうと、厨房では料理名を読み上げるだけで持ち場が動きます。この段取りで、60人の厨房が400〜500人分の注文を1時間から1時間半で出せます(用語が細かい理由)。

基礎は、切り方とフォン・ソースを先に身につけてから、焼き・煮込みへ進みます。その段の並びはフランス料理スキルマップにあります。

産地の名で選んだチーズは生で出し、コンテなら15〜18℃に戻します(テロワール)。3つが食卓でどんな順の形になったかはフランス料理のコースの順番にあります。

フランス料理の考え方で押さえる3つ

  • 素材を選ぶときは産地の名。AOPが保証するのは作り方で、生・仕上げ・素材が主役の加熱に使います
  • レシピを読んで切るときは名前。1語が材料の比と寸法を指し、知らない名前は土台に1つの違いを足して読みます
  • 皿を仕上げるときはソース。主素材に足りない汁気・脂・酸を、主素材に合わせたフォンのソースで足します

産地の名で選んだバターは、ソースの最後に45〜55℃で溶かし込むと違いが残ります。