イタリア料理の考え方|素材は一覧で絞り、脂とパスタは土地で揃える

イタリア料理の考え方|素材は一覧で絞り、脂とパスタは土地で揃える

この記事でわかること

イタリア料理が大事にしてきたこと
素材を少なくすることと、土地の料理を守ること
それぞれが効く場面
脂・パスタ・チーズを選ぶときと、香りや具を足したくなったとき
2つのつながり
登録された一覧は、その土地の脂とチーズで書かれている
日本・フランス料理との違い
除くのでもソースを足すのでもなく、一覧の外を足さない

ボロネーゼのレシピに、にんにくもハーブも入っていないことがあります。ナポリのピッツァの解説にはオリーブオイルを1枚に4〜5gとあり、ミラノのリゾットはバターで仕上げます。どれもイタリア料理の約束ごとですが、出てくる場面はばらばらです。

並べ直すと、2つの場面に分かれます。オイルかバターかは脂を選ぶとき、にんにくを入れないのは香りを足したくなったときの話です。

イタリア料理が大事にしてきたことは、1皿の素材を少なくする、土地ごとの料理を守る、の2つに分けられます。

ここでは、2つがそれぞれ台所のどの場面に効くかと、互いのつながりをまとめます。日本・フランス料理との違いと、2つを支える手段の記事への入口も並べます。

イタリア料理が大事にしてきたのは、少ない素材と土地の料理

2つは、手に取るものが違います。素材を少なくするのは鍋に入れる材料の数、土地の料理を守るのは脂・パスタ・チーズの組み合わせです。

下の表の「一覧」は、料理の名前ごとに登録された配合や仕様書にある、入れる素材と入れない素材の表のことです。

大事にすること効く場面迷ったとき目安の一例
土地の料理を守る脂・パスタ・チーズを選ぶとき作る料理の土地を先に選び、1皿をその土地から揃えるナポリのピッツァはエキストラバージンを1枚に4〜5g
素材を少なくする香りや具を足したくなったとき料理の名前ごとの一覧に無いものを足さず、手順と時間で直す登録されたラグーは、にんにく・香草を入れない

出典: 数値は各記事の値。拠り所は、ボローニャで登録されたラグーの配合、EU のピッツァ・ナポレターナの仕様書、アルトゥージの料理書(1891年)、EU の登録簿 eAmbrosia(参考文献)。

表は、台所で手を動かす順(脂・パスタ・チーズを選ぶ→作りながら足す・直す)に並べています。レシピの1工程で迷ったら、その工程がどの場面に当たるかを見て、表の「大事にすること」の列の記事を開きます。

2つは、一覧が土地の素材で書かれ、名前で中身を守る

2つは別々の約束ではありません。素材の一覧はその土地の素材で書かれていて、どちらも料理の名前で中身を守ります。

登録された一覧は、その土地の脂とチーズで書かれている

ボローニャで登録されたラグーは、6人分の脂に生の豚ばら肉150gを使います。オリーブオイル大さじ3も入りますが、豚ばら肉を溶かす役です(イタリア料理の地方の違い)。

ナポリのピッツァの仕様書は、1枚の上にかける脂をエキストラバージン4〜5g、チーズを水牛のモッツァレラなら80〜100gとしています(イタリア料理がシンプルな理由)。

一覧どおりに作れば、1皿の脂の主役は、その料理の土地のものになります。

一覧の外を足しても、名前が土地を離れても、中身が変わる

登録されたラグーは、にんにく・ローズマリー・パセリを「認めない変化」として名指ししています(イタリア料理がシンプルな理由)。

アルトゥージの料理書(初版1891年)では、ナポリ風マカロニの2つめがバターとパルミジャーノのトマトソースです。名前だけが土地を離れ、中身が移った先の台所の素材に置き換わった例です(イタリア料理の地方の違い)。

だから足したくなったときも、どちらも一覧の外へは出ません。ラグーの味が薄ければ香りより先に手順と時間を見直し、手元にバターしか無ければバターの土地の料理に作るものを替えます。

数を絞った分、種類と状態を名前で選ぶ

ピッツァの仕様書は、素材の数を絞った分、種類まで書いています。モッツァレラは DOP(原産地呼称保護。全工程を産地で行う)の水牛のものか TSG(伝統的特産品保証)のもの、オイルはエキストラバージンです。

DOP の名が保証するのは、どこで、どう作ったかで、味の順位ではありません(イタリア料理の地方の違い)。名前どおりの味に近づけたいなら、素材を足すより先に、一覧の素材をその種類と状態に揃えます。

日本料理は除いて減らし、フランス料理はソースで足す

素材を少なく保つ料理は、イタリア料理だけではありません。違うのは、どうやって少なく保つかです。

料理体系少なく保つ方法足すもの
イタリア料理料理の名前ごとの一覧に無いものを足さない一覧の中の具(肉・野菜・きのこ)
日本料理下ごしらえで除き、調味を重ねない比率の決まった地と、食べる直前の薬味
フランス料理主素材はそのまま焼くか茹でる別の鍋で作ったソース

出典: イタリア料理がシンプルな理由の比較の節。地(じ)は、先に合わせておく調味液です。

同じ料理の違いも、日本料理は時期で、イタリア料理は土地で分けます。日本料理はかつおの脂が春獲り0.5g・秋獲り6.2g(100gあたり)と時期で料理を替えます(日本料理の旬)。

イタリア料理は、ミラノのリゾットはバター、ナポリのピッツァはオリーブオイルと、同じ料理名を土地の素材の組み合わせごと残します(イタリア料理の地方の違い)。

日本料理の側は日本料理の考え方に、体系全体を他の料理と並べた違いはイタリア料理の特徴にあります。

2つを支える手段と、食卓での形

2つを実際の料理にするには手段が要ります。2つと手段は、次のようにつながります。

大事にすること手段つながるところ
素材を少なくするソッフリット登録ラグーの香味野菜は6人分で約60gずつ、にんにくを足さない
素材を少なくする火加減ラグーは小さな泡が上がる火で約2時間(3時間まで)煮る
土地の料理を守る熟成食材パルマでは、チーズを作った乳清(ホエイ)で豚を育てて生ハムにする
土地の料理を守るオリーブオイル登録ラグーは豚ばらの脂も溶け、オイルは1人7gで済む
土地の料理を守るパスタの茹で方南の乾麺は湯1Lに塩10g、北の卵の生パスタは2〜3分で茹でる
土地の料理を守るマンテカーレ北のバターとチーズは、仕上げに混ぜて脂と水をつなぐ

出典: 各記事の本文。

手段のうち火の加減を除く5つが、パスタ1皿の中でどの順に入り、どうつながるかはイタリア料理の技法にまとめています。

食事の順は、前菜・第一の皿・第二の皿と付け合わせ・甘いものです。この順も地方と家ごとに違い、同じ家でも昼と夜で変わります(イタリア料理のコースの順番)。

基礎は、道具・食材・切り方のあとにブロードとパスタ、次に手打ちパスタとリゾット、その先にラグーと地方のパスタへ進みます。段の並びはイタリア料理スキルマップにあります。

イタリア料理の考え方で押さえる2つ

  • 脂・パスタ・チーズを選ぶときは土地。作る料理の土地を先に選び、1皿をその土地から揃えます
  • 香りや具を足したくなったときは一覧。料理の名前ごとの一覧に無いものを足さず、手順と時間で直します