肉の火入れ温度|種類ごとの中心温度と、パサつかせない止めどき

肉の火入れ温度|種類ごとの中心温度と、パサつかせない止めどき

この記事でわかること

肉の中心は何度まで上げるか
牛レア48〜52℃、豚58〜61℃、鶏むね58〜60℃
ステーキをミディアムレアにしたい
厚さ2cmなら中心48〜50℃で止め、休ませて54〜56℃
鶏むね肉をしっとりさせたい
低温調理で58℃。厚さ25mmなら湯に入れて2¼時間
温度計が無いときの見分け方
豚と鶏は中心が白く変わるまで。挽肉は色を信じない
煮込みの肉が硬いまま
80〜95℃で、すねなら3〜8時間。焼く温度では縮むだけ

ステーキは赤いままでいいのに、豚肉は中まで白くなるまで焼くように言われます。鶏むね肉はその通りに焼くとパサつきます。肉の「何度まで」は、肉の種類で答えが変わります。

この記事が扱うのは、肉の種類をまたいだ中心温度の答えです。部位ごとの焼き方は、牛・豚・鶏の記事にあります。

種類ごとの中心温度

中心温度は、休ませたあとに届いている温度です。低温調理の時間は、冷蔵庫から出した肉を湯に入れてからの合計です。

肉と仕上がりおいしい中心温度リスクの減らし方安全を優先するなら代表料理
牛 レア48〜52℃かたまりのまま、表面を焼く中心75℃で1分ステーキ
牛 ミディアムレア54〜56℃かたまりのまま、表面を焼く中心75℃で1分ステーキ
牛 ミディアム58〜60℃かたまりのまま、表面を焼く中心75℃で1分ステーキ
牛 低温調理55〜57℃(55℃の湯で厚さ25mmなら2¾時間)かたまりのまま、表面を焼く中心55℃で97分、または63℃で30分ローストビーフ
羊 ロース・もも54〜60℃かたまりのまま、表面を焼く中心63℃で30分ラムチョップ
鴨 むね54〜58℃新鮮なものを、皮目からしっかり焼く中心63℃で30分鴨のロースト
豚 フライパン・グリル63℃で火を止め、3分休ませる新鮮な国産のかたまり肉を使う中心70℃で3分、75℃なら1分ソテー、とんかつ
豚 低温調理58〜61℃(58℃の湯で厚さ25mmなら1¾時間)新鮮な国産のかたまり肉を使い、レバーと分ける中心63℃で30分ロースト
鶏 フライパン・グリル・揚げ70〜75℃新鮮なものを、ドリップを拭いて使う中心75℃で1分唐揚げ、ソテー
鶏むね 低温調理58〜60℃(下の厚さ別の時間)新鮮なものを、ドリップを拭いて使う中心63℃で30分鶏ハム、サラダチキン
鶏もも 低温調理63〜65℃(65℃の湯で厚さ25mmなら55分)新鮮なものを、ドリップを拭いて使う中心63℃で30分コンフィ
挽肉 フライパン75℃(中の色が変わるまで)挽きたてを当日中に使う中心75℃で1分ハンバーグ
挽肉 低温調理58〜60℃(58℃の湯で厚さ25mmなら1¾時間)挽きたてを当日中に使う中心75℃で1分ハンバーグ
すじの多い部位(すね・バラ・肩)80〜95℃で数時間、または55〜57℃で24〜48時間長時間なので湯温を保てる機器を使う中心63℃で30分シチュー、角煮

出典: 牛・羊・鴨の焼き加減はこのサイトの種類別の記事(牛・羊・鴨)。

低温調理の時間は Douglas Baldwin「A Practical Guide to Sous Vide Cooking」Table 4.1・5.1。豚のフライパンは米国農務省の推奨(63℃で3分休ませる)。

「安全を優先するなら」の列は、日本の厚生労働省と食品安全委員会が示す値です。子どもや高齢者、妊娠中の人に出すとき、温度計や低温調理器が無いときはこちらを使います。

豚は、E型肝炎ウイルスや寄生虫が肉の中にいることがあります。63℃より低い温度でこれらを減らす時間は、一次資料を確かめられませんでした。だから豚の低温調理は、新鮮な国産のかたまり肉で作ります。

鶏むね肉をしっとりさせるなら、58〜60℃

鶏むね肉をいちばんしっとり仕上げたいなら、低温調理で58〜60℃です。肉汁が出始める66℃よりずっと下で止まるので、63℃より水分が残ります。湯に入れてからの時間は、肉の厚さで変わります。

鶏肉の厚さ58℃の湯に入れてから60℃の湯に入れてから
20mm2時間1¼時間
25mm2¼時間1½時間
30mm2¾時間2時間
40mm3¼時間2½時間

出典: Douglas Baldwin「A Practical Guide to Sous Vide Cooking」Table 4.1。サルモネラを1,000万分の1に減らす時間です。

時間は、冷蔵庫から出した5℃の肉を湯に入れてからの合計です。湯温を一定に保てる低温調理器を前提にしています。

国が鶏肉に示している条件は、中心が63℃に届いてから30分です。58〜60℃はこの条件の外にあるので、子どもや高齢者、妊娠中の人に出すとき、湯温を一定に保てないときは、63℃の側を使います。

赤く出してよいのは、焼いた牛・羊・鴨のかたまりだけ

中心を赤く出せるのは、菌が表面にいる牛・羊・鴨のかたまり肉です。表面を焼けば、中は好きな赤さで止められます。低温調理のローストビーフも、日本の基準に中心55℃で97分という条件があります。

子どもや高齢者に出すなら、豚と同じ下限の側で焼きます。焼き加減の呼び名には国の規格が無いので、温度で覚えます。

上限はおいしさ、下限は安全で見る

表の温度には上限と下限があります。上限は肉がおいしくなくなる温度、下限は食中毒を防ぐ温度です。

肉の中で起きること止める温度と下限45℃50℃60℃70℃80℃90℃50℃前後からミオシンが固まる65℃付近 すじが縮む66〜73℃ アクチンが縮み、肉汁が出る80〜95℃で数時間すじ(コラーゲン)がゼラチンになる牛レア 48〜52℃ミディアムレア 54〜56℃ミディアム 58〜60℃63℃なら30分保つ70℃なら3分75℃なら1分(挽肉も)煮込み 80〜95℃
牛のレアからミディアムまでは、肉汁が出始める66℃より下に収まります。豚と鶏の下限の線(青)は、その66℃の前後にあります

66℃を超えると、肉汁が出ていく

肉の筋線維(きんせんい。肉の繊維)は、50℃前後でミオシンというタンパク質が固まり始め、生の柔らかさから火の通った弾力に変わります。ここまでは肉汁を抱えたままです。

66〜73℃でアクチンが縮むと、筋線維が水分を絞り出します。焼きすぎた肉がパサつくのはこの温度を越えたときです。牛のレアからミディアムウェルまでが66℃の手前に収まるのはそのためです。

すじの主成分のコラーゲンは65℃付近で縮んで肉を硬くし、80〜90℃で長く煮るとゼラチンに変わってほどけます。機序はタンパク質変性の科学とコラーゲンとゼラチン化にあります。

安全は、温度と時間の組み合わせで見る

菌は温度だけでなく、その温度にいた時間で死にます。中心75℃で1分と同じ効き目の組み合わせは、国が下のように示しています。

中心温度と、その温度で保つ時間63℃30分65℃15分66℃11分67℃8分68℃5分69℃4分70℃3分75℃1分時間は中心がその温度に届いてから数える
63℃で30分と75℃で1分は、同じ下限の両端です。低い温度で止めるほど、届いてから長く保つ必要があります

出典: 63℃30分は厚生労働省「豚の食肉の基準に関するQ&A」、65〜75℃の7つは同「食肉の加熱条件に関するQ&A」。

国が中心温度を規格基準にしているのは豚肉で、63℃で30分か、それと同等以上の加熱が要ります。鶏肉と牛肉にも、家庭で低温調理するときの条件として中心63℃に達してから30分が示されています。

2つの数字がなぜ同じ効き目になるのかは58℃が63℃30分より低くても成り立つ理由で扱っています。

火を止める時点は、厚さと加熱法で変わる

表の温度は、火を止める温度ではありません。火を止めたあとにも中心は上がり、低い温度で仕上げたいなら、その温度を保てる鍋が要ります。

厚い肉ほど、火を止めたあとに上がる

火から下ろしても、表面にたまった熱が中心へ流れ続けます。厚いほど流れ込む熱が多く、上がり幅が大きくなります。

肉の厚さ休ませる時間火を止めたあとの中心の上がり幅例
1cm以下2〜3分2〜3℃薄切り肉
1.5〜2cm5〜7分5〜8℃一般的なステーキ
2.5〜3cm10〜15分8〜10℃厚切りステーキ
3cm以上15〜20分10〜15℃ローストビーフ

出典: このサイトの余熱の記事の目安。強火で表面を高温にしたほど上がり幅は大きくなります。

厚さ2cmのステーキをミディアムレア(54〜56℃)にするなら、上がり幅の5〜8℃を引いて、中心48〜50℃で火を止めます。休ませずに切ると、上がるはずの数度が届かないまま肉汁が出ます。

低い温度で止めたいなら、その温度を保てる加熱法を選ぶ

鶏むねや豚を58〜61℃で仕上げるには、中心をその温度で厚さに応じた時間だけ保ち続ける必要があります(58℃で厚さ25mmなら、湯に入れて2時間前後)。フライパンでは、火から下ろした肉は冷めていくので保てません。

加熱法中心の温度を保てるか
フライパン・グリル火から下ろすと冷めていく
低めのオーブン庫内を目標の温度に近づければ保てる
低温調理(湯せん)湯の温度のまま保ち続けられる

保てるかどうかは加熱法の性質で、測った値ではありません。だから最初の表で、フライパンと低温調理の行を分けています。

フライパンで豚を焼くなら、中心63℃で火を止め、3分休ませます。安全を優先するなら、中心70℃に届いてから3分です。1cm以下の薄い肉は休ませる間にすぐ冷めるので、中心が白く変わるまで焼きます。

表面は中心とは別の温度で焼く

焼き色と香ばしさは、表面が140〜150℃を超えて起きるメイラード反応から出ます。中心温度とは別の話なので、強火で表面を焼いても中心の温度表は変わりません。

表面を焼き固めても、肉汁は閉じ込められません。焼き色をつけるのは香りのためで、肉汁を残すのは中心温度を66℃の手前で止めることです。焼き方はジューシーで香ばしい焼き方のコツにあります。

この温度表が当てはまらない肉

表は、筋肉のかたまりを焼くことを前提にしています。次の肉は、表の温度を当てはめると外します。

肉表が当てはまらない理由代わりに守る中心温度と時間
挽肉・成形肉(牛も含む)表面の菌が挽く・固めるときに内側へ入る75℃で1分、中の色が変わるまで
機械で筋切りや味の漬け込みをした肉処理のときに表面の菌が内側へ入る75℃で1分
レバーなどの内臓牛レバーも内側から食中毒菌が見つかっている75℃で1分
すね・バラ・肩焼く温度ではすじが縮むだけで硬い80〜95℃で、すねなら3〜8時間
生で出す牛(ユッケ・タタキ)加熱の条件ではなく、生食用の別の基準が要る生食用の規格・施設・表示の基準

出典: 厚生労働省「豚の食肉の基準に関するQ&A」Q11、東京都保健医療局「お肉は十分に加熱しましょう」、すねの時間は牛の記事。

同じ牛でも、挽肉のハンバーグはステーキの感覚でレアには焼けません。すじの多い部位は、竹串がすっと通るまで煮ます。子どもや高齢者など抵抗力の弱い人には、生の肉を出さないよう国が求めています。

温度計で測る位置と、温度計が無いときの手がかり

いちばん厚いところの中心に、横から刺す

まな板の上の焼いた牛ステーキに、手に持ったペン型の中心温度計の細い軸を、上面からではなく右の側面から差し込んでいるところ

測りたいのは、肉の中でいちばん遅く温まる点です。それは肉全体の真ん中ではなく、いちばん厚いところの中心です。骨や脂の塊に先が触れると、肉とは違う温度を拾います。

薄いステーキは上から刺すと先が反対側へ抜けやすいので、側面から水平に刺し、先を厚みの中心まで差し込みます。刺す深さや何か所測るかは中心温度の測り方にあります。

色と弾力は、どこまで当てになるか

温度計が無いときに見るものは、肉の種類で分かれます。

肉見る場所目安になる見え方・手応え中心温度の目安
豚・鶏(焼く・揚げる)切った断面の色中まで白っぽく変わった75℃で1分に届いた
牛指で押した弾力押すと沈んで戻りが遅いレア(48〜52℃)
牛指で押した弾力押すと弾んで押し返すミディアム(58〜60℃)

出典: 豚・鶏の色は厚生労働省「豚の食肉の基準に関するQ&A」Q4と農林水産省「鶏肉を調理するときのポイント」の目安。牛の弾力は料理人の経験則で、数値の保証はありません。

ミディアムレアの手応えは、レアとミディアムの間としか言えず、確かめられた目安は見つかりませんでした。

色が当てにならない場面が2つあります。挽肉は、安全な温度に届く前に茶色くなることがあります。低温調理の豚や鶏は、下限を満たしていてもピンクが残ります。低温調理は色で見ず、温度と時間で確かめます。理由は肉の色の記事にあります。

五感で温度を読む方法は温度計なしで調理する感覚的温度判断が扱います。

よくある失敗と対策

パサついた諦める
なぜ
中心が66℃を超えてアクチンが変性し、縮んだ筋線維が抱えていた水分を押し出しました
どうする
戻りません。薄く切ってソースや煮汁をかけて出します
次から
牛・羊は目標より5〜8℃手前で火を止め、休ませて余熱で届かせます
中が生だった回復できる
なぜ
厚い肉の中心は熱の伝導が遅く、表面が焼けた時点では変性温度に届いていませんでした
どうする
フライパンかオーブンに戻し、中心温度を測りながら目標まで加熱します
次から
いちばん厚いところの中心を測り、表面の色で止めません
肉が固くなった回復できる
なぜ
すじの多い部位を短く煮て、コラーゲンが縮んだままゼラチン化まで進みませんでした
どうする
80〜95℃に保って、さらに1〜2時間煮ます
次から
すね・バラ・肩は沸騰させず、すねなら3〜8時間煮る前提で段取りします

焼きすぎた・生焼けだった肉をどう戻すかは、火入れの失敗をリカバリーする技術にあります。